黒

darkness in red

暗闇が夜って来る。

かならずしも夜でなく、かなずしも囲まれた空間でもない。頭の中からスーンと広がってくる。大きく続く雲のようにもうもうと、黒炎のようにちらちらと大きくすべてを黒くする。黒の中で鮮血の音を聞く。それは人肌以上の熱量で黒の中で光を想像始めるが、まだ光ることはない。

黒の中で高揚が許される。これから起こるであろう脱兎のスピードが、体の中で。

「あ、あ、あ」タイミングを計りだした。見えてくる。見える、見える、見える。

黒の切れ間。振動するは中心。頭から飛び出してしまえ。頭をくれてやる。五肢が無くても走り出す、何が俺を運ぶ。音が圧迫し始め、鼓動を止めに来る。

ババババババババーーーーハッ

トンネルを抜けるとそこは仕舞いの夕暮れであった。

体が感じる緊張に汗ばんでいた。生温い車内ででこを拭う。待ち合わせまでは、まだ40分がある。黒木は目を覚ますため、再び目をつむった。


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