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モロッコのキーパー、半端ないPKセーブの秘訣?

昨夜2022年12月6日深夜、スペイン対モロッコの延長から見始めた。

スペインのチームの感じは日本と当たったときと同じようなスマートな感じ。サイドチェンジもパス回しも美しい。一人ひとりの役割分担、守るスペースも整理されている。
対するモロッコは何と形容したらいいのだろう。「初心者の時のボールを追う楽しみを忘れない無茶苦茶上手な草サッカー」と言いたくなった。失礼なのは承知だが、フォーメーションがスペインに比べるとすぐにぐちゃぐちゃになっているような感じがする。ボールに人がすぐに集まるのだ。それで素人のサッカーのように見える。しかし実は一生懸命数人できちんとした決まりに基づいてプレスをかけているのかもしれない。専門家ではない自分には不明だ。しかし終盤、攻撃の際に左サイドからボールに二人の自チームの選手が突撃して衝突して一緒にこけているところには思わず笑ってしまった。これはコントか。スラムダンクの桜木花道の、最終の山王戦でどこででも出てくる素人ディフェンスを思い出した。

そのまま見続けていると、スペイン側の選手の表情はどんどん固くなっていくが、ボールのある所に突撃するお隣さんへのお節介サッカーモロッコ軍団は見た感じ楽しそうだ。スペインは確実にペナルティーエリア付近までボールを運べるが、お隣さんへのお節介守備集団が、キーパーが取れるボールをヘッドで掻き出したり、コースが間違えばオウンゴールになりそうなヘッドでクリアーしたり。そのたびに観客と一緒に盛り上がる。スペインは悪いときの日本代表のゴール前みたいに、「なぜここでシュートを打たない!」というところで変な責任感で変にきれいなパスを出そうとしてますますどつぼにはまっていく。

モロッコの守備側を映す時間が長いので、自然にキーパーの表情に目が行く。ハンサムである。しかし、なんと微笑んでいる。無理に作っている笑顔ではない。え?この絶体絶命の最後の30分で?しかし見るからに彼は楽しそうである。ワールドカップの試合の時間を、まるで友だちとサッカーをしているかのような笑顔である。日本代表がこの笑顔で試合に出ていたら怒られるレベルである。

そこから彼に注目していると、彼は誰かれなくしゃべっている。味方の選手とだけではなく、スペイン選手ともだ。陽動作戦というか、何か作戦があって意地悪くしゃべっているというより、陽気な独り言を言っている雰囲気だ。そして、試合は延長を終え、日本代表戦で見たばかりのPK戦に突入する。

このモロッコのキーパーはどれだけ人たらしなのか?これからPKを行うゴールエンドに移動するときに、彼はなんとスペイン側のキーパーの肩に手を回して、しゃべりながら移動している。スペインのキーパーもいい人なのか、会話が成立している。普通なら、これから大事なPKだ、集中させてほしい!と嫌がらないのだろうか?これは世界標準なのか、このモロッコのキーパーが空気を読まなさすぎるのか。それとも二人ともどこかで昔から友達なのか。あとで調べてみよう。

スペインの第一キッカーがセットを始める。モロッコキーパー、リズミカルに四股を踏むようなステップ。右、左、右、左、右そしてスペイン蹴る、はい注文通り~左に精一杯飛ぶ、ボールには触れない!しかしボールは左のポストに当たって跳ね返されていった。イエーイ~という笑顔、やはり少年サッカーである。

その後2人、3人とスペインのキッカーは続くが、このゆらゆら四股ふみ作戦は止まらない。すべて注文通りに止められていく。たしかスペインの監督はPK千回練習していると言ってなかったっけ?それでもその練習量を簡単に凌駕するモロッコキーパーの変な四股ふみアンドセーブにスペインは3連続の失敗と相成った。

モロッコのキッカーたちも緊張していないわけではない、しかし雰囲気はスペインとまったく違う。成功するたびにボルテージはどんどん上がっていく。4人目ののモロッコのキッカー、蹴る瞬間にタイミングをふわっと外して、弱いボールがポーンとネットにあたる。

ゲームセットだ。モロッコが勝った。

試合後、このキーパーのことをググってみる。ボノ、あるいはブヌと呼ばれているらしい。なんと彼はカナダ代表にもモロッコ代表にもなる資格があって、モロッコから出ることを選択したそうだ。

彼はグループステージ第二戦のベルギー戦で体調不良で急遽欠場していた。国歌斉唱の途中で欠場を決めたとの記事があった。第三戦はスタメンで出場している。しかも相手はカナダである。自分のチームになったかもしれなかった相手に2対1のスコアで勝利している。残念ながらこの試合はまだ見ていない。

このノックアウトステージにもスタメンで出場している。具合がよくなって良かった、サッカーができて良かった、という喜びからあの笑顔は来るのか?どんな気持ちであの試合に臨んだんだろう?

とりあえずPK成功のカギの一つは、緊張しないように笑顔を作れる雰囲気だと思った。外野は、笑ったら真剣じゃない、とか言わないこと。程よい緊張と程よいリラックスを作れたら成功に近づくんじゃないかな。

だけどまじめな日本人には、やっぱりきりりと眉を引き締めたサムライのような真剣勝負がどうしても性に合うんだろうか。

好きな映画の「スピード」で、序盤でキアヌ・リーヴスと同僚の会話を思い出した。
「どうして俺たち、今命がけでこんな仕事をしてるんだ?」
ロープに必死でぶら下がりながら、「そりゃ、退職するときに金時計貰うためだろう」。

森保監督、次のPKの前には選手がリラックスできるジョークを一つか二つ、あのノートに書いておいてください。


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