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咳にはご用心

その日僕は、ビッグサイトで行われる展示会に参加するため東京にいました。同僚と二人で取引先の会社のブースをちょっとだけ借りて、お手伝いをしながら自社商品のアピールもするというものです。
午前中から夕方まで立ちっぱなしで、かなり疲れました。
自社商品のアピールもするとはいえ、そのような場所で商談がまとまるなんてことは今までも無く、この時も取引先のお手伝いがメインという感じでした。

ホテルに戻ってから同僚と食事に行き、早々に解散しました。
翌日も展示会があるので、早めに寝て疲れを取るつもりでした。
枕が変わると寝れない性質の僕でしたが、日中の疲れもあってか0時頃には眠りについたと思います。

どれぐらい寝たでしょうか。
突然咳き込んで目が覚めました。(せっかく寝たのに目、覚めちゃったよ)と思う間もなく、ひどい咳が連続して出まました。ジュースやお茶を豪快に誤嚥してしまって、肺の方に大量に入ってしまった、そういう感じです。

しかし誤嚥と異なるのは、咳が全く止まらず、息ができない事です。
普通咳をする時は、ゴホン!と息を吐いた後、同じ量の息を吸います。
若しくは息を吸い込んでから咳をします。ところがこの咳は、息を吐き続けるだけで、殆ど吸う事ができません。

10秒もしないうちに(アレ?変だぞ。息ができない苦しい、このまま死ぬかも)と思いました。ベッドのすぐ隣にあるテーブルにお茶が置いてあったので、とりあえずそれを飲めば落ち着くのではないかと思いましたが、身体を起こす事すらできません。
丸くなって咳をし続けるだけです。(ああ、人ってこうやって死ぬのか。明日待ち合わせの時間に来ないのを見て、同僚が電話をするけど出ない、困った同僚はフロントに言って鍵をあけてもらうだろう、そこで発見されるのか・・・あっ、ドアチェーンも掛けてるから消防を呼ばなきゃ入れないか・・・テーブルに携帯があるから救急車を呼べれば・・・でも話ができる状況じゃないし・・・・)と頭の中ではグルグル色んな思いが駆け巡りますが、苦しくて何もできません。
たぶん時間にすると一分ぐらいだったとは思うのですが、呼吸困難で本当に死ぬかと思いました。気が付くと突然咳が止まり、何事なかったかのように二度と咳が出る事はありませんでした。

時計を見ると4時過ぎでした。
さっきは喉に毛のようなものを吸い込んで、引っかかってしまったのだろうと思っていたのですが、お茶を飲んでみるとどうも違う気がします。喉はなんともなく、もっと奥深い所で何か引っかかっていたような気がしました。

もうならないといいなと寝なおしました。結局朝まで咳は出ず、翌日同僚に昨晩は咳がひどくてと話しましたが、死ぬかと思ったにも拘わらず、全然伝わらずになんだか悔しい思いをしました。

それから3ヵ月ぐらい経った頃、自宅のベッドで同じような目に遭いました。寝ていたら突然咳が出始めて、前回同様止まらず息ができずに苦しい。
今度こそ死ぬかもと呼吸困難になりながら咳をしていたら、また1,2分で止まりました。
今度は5時でした。
2回とも続けて朝方に息ができなくなるなんて、誰かが早朝にワラ人形に釘でも打っているのかと思いました。

翌日、朝に咳がでる病気なんて無いだろうしなと思いつつ、会社で何気なく「明け方 咳 止まらない」と検索してみたら、ズラリと喘息の検索結果が表示されました。

えー!!喘息って子供がなる病気じゃないの?
半信半疑でいくつかの検索結果を読んでみると、間違いなく喘息のようでした。しかも子供の病気でもなく、普通に大人も罹ると書いてありました。
原因はアレルギーとの事で、元々ひどい花粉症持ちの僕はいつ喘息になってもおかしくなかったのです。

とりあえず病院に行かなきゃと会社を早退して病院に行きました。先生に症状を告げると「気管支喘息ですね」と言われ、粉のステロイドが入った吸引する器具を処方されました。
いわゆる喘息発作というやつだったわけですが、幸いその後発作が起こる事は無く、4年ぐらい薬を吸っていましたが、薬はやめました。
というのも、この喘息というやつはアレルギー疾患のため、治るという事が無いのです。症状が出ない状態が続いて、寛解というあいまいな表現になるだけなのです。
アレルゲンが身体に入れば、また発作が起きるかもしれないし、もう起きないかもしれないとう状態です。

昔は喘息の同級生や友人もいましたし、子供さんが喘息持ちだという同僚もいますが、大人ならいざ知らず、子供であの発作は可哀そうだなと思います。
実は僕も罹るまで知らなかったのですが、今でも日本だけで毎年2,000人近くの方が亡くなっています。怖いのが、重症の方が亡くなるという事では無く、軽症や中程度の症状の方でも亡くなる事があるという事です。

何故今日この記事を書いたかというと、今朝読んだネットの記事で、大人は40歳を過ぎてから罹る人が圧倒的に多く、咳が8週間以上続くと3割の人が喘息になると書いてあったのを読んだからです。
どうやら長引く咳が引き金になるようで、今思うと僕が最初に発作を起こした時も、風邪をひいてその後も咳が長引いていました。

なんだか咳が長引くなぁと思ったら、病院に行きましょう。

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