「エナとリリィ」第1話

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リリィ「エナエナエナッ!!」

エナ「…」

リリィ「エーナ!!!」

エナ「聞こえてる…何?」

リリィ「だって、反応薄いんだもーん」

エナ「いや…あんたが元気すぎ…
で?何??」

リリィ「あ、そうそうっ!ママがさー、なんかあの、角の家に住んでる男の子が
あんたと同じくらいだから友達になってあげたら?だってさ」

エナ「…ふーん。なればいいじゃない。」

リリィ「いやいやいやっ!エナは私のマブダチ♡なら、今から私の友達になるその子もエナのマブダチ♡…えへ」

エナ「…。また頭おかしいこといいだしたわね、この子。」

リリィ「ちょ…誰が頭おかしいんじゃーっ!!!大まじめだわ!!」

エナ「…。ため息」

-男の子が住むという家の前-

(ピンポーン)インターホンを鳴らす

リリィ「すみませーん!!すみませーんっ!!誰がいますかーっ!?」

エナ「いや、いきなりそんな大声出したら
ビビって誰も出てこな…」

(ガチャリ)扉が開く音

ルード「なんだ?」

エナ「あ…。」

(短い沈黙)

リリィ「…。思った以上に普通の人ねっ!!」

ルード「あ?」

リリィ「引きこもりだと思ってたからもっともさっとしたオタクかと思ってたぁ!」

エナ「ちょっ…何でそういうこと口に出しちゃうかなぁっ!?」

ルード「こいつ…」

エナ「(ちょっと笑いこらえながら)さすがに謝りなさい」

リリィ「ごめんなさーい(笑顔で)」

ルード「で?何の用だ?」

リリィ「ママがあなたと友達になったらって…」

ルード「断る。」

(ドアを閉めようとする)

リリィ「ちょっ…!!ふざけんじゃないわよおぉぉっ!!」
(渾身の力でドアを開けようとする)

ルード「ふざけてんのはどっちだっ!!帰れえぇぇっ!!」
(渾身の力でドアを閉めようとする)

エナ「待っ…待って…何してんの、あなたたち(笑いをこらえながら)

とりあえず、落ち着いて」

(バタン)ドアが閉まる

エナ「あ…」

リリィ「閉めたぁっ!!!」

エナ「これは…ダメだね。もう諦めよう。」

リリィ「何なのよ。あいつ!!」

(立ち去ろうとするふたり)

(静かに開くドア)

ルード「あ…お、おいっ!!」

エナ・リリィ「え?」

ルード「その…マジで…その要件は、それなのか?」

リリィ「それって?」

ルード「と、友達にって…」

リリィ「そうよ」

ルード「…。」

そっ…(扉を静かに閉める)

リリィ「いや!閉めるんかーいっ!!」

エナ「まぁまぁ…」

リリィ「もういいっ!!二度と来ませんからっ!!行こう、エナ!」

ふたりが去っていく
ドアの小窓からそれを眺めるルード

ルード「…どうせ、誰も俺を理解してはくれないんだ。」

-数日後-

(インターホンが2回なる)

ルード「?」

リリィ「もしもーし!!いるんでしょーっ!?」

エナ「だから…声でかいって。」

(扉を開ける)

ルード「え…なんで…」

リリィ「ママがパン焼いたからおすそ分けよ、ちょっとだけど。」

ルード「…いや…二度と来ないって。」

エナ「この子、頭にすぐ血が上るところあるけど…意外と人情味あるっていうか、優しいっていうか。」

リリィ「なっ…ちがっ!たまたまよ。」

ルード「…。」

エナ「まぁ、そこは素直にありがとうでいいんじゃない?」

ルード「…ありがと。」

リリィ「いえ。」

短い沈黙

エナ「親は?」

ルード「は?」

エナ「いや、会ったことないからさ。」

ルード「…夜しか帰ってこない。」

エナ「そう…なの。」

リリィ「え…じゃあ、ご飯とか…。」

ルード「なんか適当に。」

エナとリリィ「…」

ルード「俺は必要とされてない。」

リリィ「え…?」

ルード「学校にも行かず、引きこもって…恥さらしなんだと。」

リリィ「そんな…」

ルード「どこにも居場所なんてない。俺なりに頑張って取り繕って…なのに。」

リリィ「…」

ルード「もうどうでもいいんだよ、全部。」

エナ「あー…しんどい。」

ルード「…なんだと?」

エナ「あんたよ、あんた。ひとりで殻に閉じこもってウダウダと。」

リリィ「ちょっと!!エナっ!!言い過ぎだって!!」

エナ「でも、実際そうでしょ?」

リリィ「…。」

ルード「お前らは…俺を貶しにきたのか?」

リリィ「そんなつもりじゃ…」

エナ「本当にそう思う?それならそれでいいけど。」

(短い間)

エナ「ただ…今あんたは家に来たのが私達だってわかって扉を開けた。それって、ただ単に嬉しかったんじゃないの?」

ルード「…。」

エナ「このままじゃダメだってわかってるから。抜け出したかった。」

ルード「…っ!!」

リリィ「あの…さ、何があったのか…私達はわからない。でも、話は聞いてあげられるよ。」

エナ「向き合ってみなよ。私達とさ。」

ルード「…。俺は…言葉が上手くない。」

リリィ「うん、ゆっくりでいいよ。」

エナ「うん、そうそう。」

それからはルードの家に入って
みんなでリリィのママの焼いたパンを
食べた。

ルードの話を聞きながら。

ルード「ずっと家にも学校にも居場所がなくて、苦しかった…。」

リリィ「そっか…辛かったねぇ。でも、これからは違うねっ!」

ルード「え…」

リリィ「こうやって、たまにでいいから一緒におやつを食べよう。ね、エナ!」

エナ「また面倒事を…。まぁ、付き合ってやるか~。」

リリィ「えへへ、エナありがとう。」

ルード「…(涙をこらえる)」

エナ「そういえば、あんた名前は?」

ルード「…ルードヴィッヒ。」

エナ「長いから、ルードね~。」

ルード「…。(ちょっと不服そう)」

リリィ「これからもよろしくねっ!エナ!ルード!!」

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