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【企業インタビュー】ビジネスの成長とサステナビリティを追求したモデル 株式会社Sanuの事例

脱炭素化社会の推進に向けて、企業はさまざまな取り組みを始めています。

しかし「何をどうすればいいのか」「他の企業はどんなことをしているのか」と考えあぐねている人は多い様子。

パーセフォニジャパンは、先進的に脱炭素化社会に向けた取り組みを進めている企業様にスポットを当て、みなさまが参考にできる実践法をお聞きしています。第4回となる今回は、パーセフォニのお客様である株式会社Sanu様へのインタビューです。

迷ったり悩んでいる方々の参考になりますように。

【カーボンニュートラル】とは、発生した炭素(CO2が対象)排出量と除去量を差し引きゼロにする状態です。詳しくは過去の記事【秒速理解】脱炭素社会とは?なぜ目指すのか?達成の第一歩とは?で解説しています。

■インタビューした企業様
株式会社Sanu 
■お話を伺った方々
株式会社Sanu  財務本部長 境 はづき様

訪れるだけで自然を感じることができる セカンドホーム・サブスクリプション

ーー貴社の事業内容について教えてください。

私たちは「SANU 2nd Home」という、セカンドホーム・サブスクリプション事業を運営しています。”気軽に都市と自然を行き来する方法”として、創業者自身が使いたい別荘(CABIN)を目指し、2021年11月にサービスを開始しました。2023年7月現在、月額55,000円の定額で、首都圏から2〜3時間圏内の11エリアにある、62室を好きな時に利用いただくことができます。

ーー創業者お二人の、自然を愛する気持ちがビジネスの始まりだったそうですね。

はい。共同創業者の本間と福島は、それぞれ福島・北海道の出身です。自身のルーツである自然に対して、何かビジネスとして貢献できることはないのだろうかと模索しているなか生まれたのが「SANU 2nd Home」です。都市圏で生活をしていると、気軽に行ける自然豊かな場所がないことが二人の共通の課題でした。環境問題を自分事として認識するには、まずは多くの人たちが自然を身近に感じて好きになることが重要だと考えています。そこで、非日常なホテル滞在ではなく、高額な費用が必要になる別荘所有でもない新しい選択肢として「自然の中にある暮らし」を営めるようになると良いのでは?と考えて事業を始めました。

株式会社Sanu 共同創業者の本間貴裕氏と福島弦氏

サスティナブルな取り組みは自然なこと

ーー「Live with nature./自然と共に生きる」をコンセプトに掲げたSANU CABINはどのような宿泊スペースなのでしょうか?

滞在することで周囲の自然を感じることができるのが特徴です。また、そのことに留まらず「SANU 2nd Home」の建物自体が、自然と調和することを目指し、建てて終わりではなく50年後に解体することまで見据えたサスティナブルな建築方式を採用しています。

ーーサスティナブルな建築方式!興味深いですね。

私たちが「SANU 2nd Home」を多く展開していく中、今ある自然の姿をできるだけ残せるような建築の開発をしたいとたどり着きましたね。設計・施工パートナーのADX社とも長い時間をかけて検討してきた建築方法です。

八ヶ岳1stの居室。自然と一体感を味わえる空間。

ーー具体的にはどんなどんな方法なのですか?
素材面でみると、コンクリートを使わない・主要の躯体が木造素材で構成されています。SANU CABINは木造建築物で国産杉材を採用し、60㎡ほどの建物で杉材を約150本使用しています。木材は持続可能な森づくりに取り組む東北・岩手県の釜石地方森林組合から樹齢50〜80年程度の間伐材を直接調達し、建物に利用した本数分の若い苗を釜石の森に植樹をしています。

またキャビンの基礎部分は地中に杭を埋める「基礎杭工法」という工法を採用しています。この工法はコンクリートのベタ基礎が不要なことが特徴です。
こうした原料調達、建設、運用、解体までの一連の環境負荷を最小化する取り組み、「サーキュラー建築」という循環型の設計にしています。
ーーところで、コンクリートの使用量が減ると、どんなメリットがあるんですか?

コンクリートの製造過程で排出する多量のCO2を削減することができるのです。通常の建築物で使用するコンクリートなどの材料使用量を80%削減したことから、1室あたり11tのCO2を吸収・固定化しCO2排出量を大きく削減できています(※)。
(※)デンマーク・コペンハーゲン環境建築コンサルティング会社 henrik-Innovation 調査結果より

国産木材100%のサーキュラー建築や植林活動によりカーボンネガティブを実現。

自社の取り組みも、サーキュラーエコノミーを目指す

ーープロダクト以外にも、今年度は新たなサーキュラーエコノミーにまつわる取り組みを始めているとのこと。

今年度はまずSANUのサステナビリティ分野におけるVISIONの制定に始まり、達成すべきKPIを定めて、各種取組みを開始しました。

その中の1つが、「SANU 2nd Home」で滞在頂く際排出されたCO2量の可視化です。

サーキュラー建築の概念は建築を建てるまでが大きな枠組みですがキャビンを運用する過程で排出されるエネルギーやCO2の削減も実施していきたいと考えています。23年1月から取り組みを本格的に開始しました。

ーーキャビンで排出するエネルギーをより可視化し、削減することを考えているのですね。

そうですね。最終的には可視化した排出量をどのように削減するかを考えていきたいと思っています。

合わせて、23年6月からSANU CABINで使用する電力も再生可能エネルギーへの切り替えを実施し、拠点運用におけるCO2排出を7割削減しています。

株式会社Sanu  財務本部長 境 はづき氏

ビジネスとサステナビリティは同等に大切なこと

ーーサーキュラーエコノミーにまつわる取り組みを始めるときには、どんな課題を感じていましたか?

サステナビリティ分野における専任者がいなかったことが課題でした。会社として取り組みたい方向性や施策は、個人のアイデアベースでは存在していたものの、明確な方針や取組の方向性・ゴールがないために具現化しにくくありました。そこに専任者が着任したことで、流れが大きく変わったと感じています。

ーーなるほど。一方で取り組みが実際に推進されてからは、どんな課題を感じていますか?

直接排出CO2の可視化を進めるには過去データ整理などが必要でした。社内で情報が点在していたので情報の整理に時間がかかりましたね。

ーー今後取り組みたいこと、貴社として叶えていきたいカーボンニュートラルにまつわるビジョンはありますか?

今後は「サーキュラー建築」以外にも、企業活動全体でカーボンニュートラルな取り組みを進めていきたいと思います。

例えば宿泊者のCO2排出量削減です。「SANU 2nd Home」に宿泊する、つまり顧客が移動を伴うサービスを提供している限り、CO2を排出します。全拠点の最寄駅にSANU会員が利用できるカーシェアを用意し、公共機関+ラストワンマイルは車など、現状は出来る範囲でモビリティの選択肢を増やしていますが、本格的なデザイン設計を、まさに今検討しているところです。

日本中の美しい自然に繰り返し通い、身近に自然を感じたり自然の中で遊ばせてもらうことに、”環境に悪いことをしちゃったな”という罪悪感ではなく、一緒に自然を豊かにする仲間として思いっきり自然を楽しんでいただきたいと思っています。その先で自然を思い、少しずつ意識・行動が変わるような未来を産みだしたいと思っています。

SANUメンバー専用のカーシェアを用意している。

ーー事業のグロースフェーズで、自らカーボンニュートラルにまつわる取り組みを積極的に取り組む。その姿勢に感銘を受けます。

サスティナブルは人類共通の課題というか目標、ゴールだと思うのです。これまで、企業各社は事業が成長し、基盤が組成されたことで、生まれた余白を使い「CSR」について検討をするという流れが一般的だったように思います。

しかし、私たちはSANUが広がれば広がるほど森や自然が豊かになっていくような「リジェネラティブ」を実現していく仕組み・組織体制を目指しています。その観点からもカーボンニュートラルな取り組みをすることは、予約を使って取り組むような活動ではなく、事業と同等レベルで大切にしていることなのです。つまり自然な概念でした。
ーー協業者やユーザーともこうした考えを互いに共有できているように思います。

弊社の”Live with Nature./自然と共に生きる”というブランドコンセプトや、サーキュラー建築というモデルにはとても共感する、応援したいという声を多数頂いています。それは恐らく、「自然を欲する」感覚が人間にとって根源的な欲求に近いからなのではないでしょうか。

ーーSanu社のように自然に取り組みをできることが理想です。一方で、カーボンニュートラルの取り組みについて、わからない、どうすればいいかと躊躇している企業もいらっしゃいます。

経営陣からも明確に発信されていることが非常に大きく影響していたように思います。やはり、何かを推進していく際には大きな指針を示し、同じビジョンを共有することが大切。先導を切る人たちがサステナビリティの追求をビジネスと同じくらい重要だと捉えて導いていけば自然と道はひらけていくのではないでしょうか。

Sanuの皆様、ありがとうございました!


最後までお読みいただきありがとうございます。

企業の成長フェーズにおいて、「サステナビリティファースト」を実現するのは、社内外へ浸透においても楽なことでは無かったようです。しかしながら、それ自体が事業の指針であり原動力になっていることを体現しながら周りを引っ張っていく姿勢に感銘を受けました。

今回の事例を通じて、皆様の活動のヒントが見つかることを祈っています。

それではまた次回、お会いしましょう!






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