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No.76 2023年8月23日 慶應義塾高校107年ぶりに全国制覇 第105回全国高校野球選手権出場校及び歴代優勝校の系列私立小学校考察

 第105回全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)決勝で神奈川県代表の慶應義塾高校が宮城県代表の仙台育英高校を破り107年ぶりに優勝しました。
 私は神奈川県生まれですから慶應義塾高校を応援していましたが、系列の慶應義塾幼稚舎(小学校)は聖心女子学院の近くにあり、現役の教師の時私立学校の研修会などで学校を訪れ何回も授業を拝見させていただいたことがありました。慶應義塾高校監督の森林貴彦氏は幼稚舎の教師をされています。森林氏とは面識はありませんが、幼稚舎の何人かの先生とは研究会で一緒に学んだり、私が編集代表をしました書籍の編集委員をしていただいたりしています。(私立小学校社会科研究会著『これだけは身につけよう!社会科の基礎・活用』東洋館出版、2020年。などで)
 対戦相手の仙台育英高校とも縁がないわけではありません。本エッセーのNo.76「1996年 甲子園球場での第76回全国高野球選手権大会取材では仙台育英高校を追いかける」ということを経験しました。その時から、生まれ故郷の神奈川県代表、取材をした仙台育英高校を応援するようにしていました。2020年に定年退職しメインの研究「私立小学校研究」をするようになってからは、出場私立高校の系列小学校も応援するようになりました。ですから、今回の応援校は、慶應義塾高校、仙台育英高校、鹿児島県の神村学園高等部、奈良県の智辯学園高校、京都府の立命館宇治高校の5校でした。神村学園と立命館宇治は初戦で対戦しました。
 慶応義塾高校はどのようにして頂点にたどり着いたのでしょうか。スポーツ新聞で振り返ってみましょう。

慶応義塾高校の優勝を報道するスポーツ新聞4社(サンスポ・スポニチ・スポーツ報知・ニッカン)の一面 2023.8.24

 神奈川大会では、準決勝で東海大相模高校を、決勝では神奈川大会3連覇を目指した横浜高校を6対5の逆転で破って甲子園への出場権を得ました。決勝での9回、慶應義塾高校の攻撃で2塁への走者が塁審の判定によりセーフとなり、その後逆転のホームランにより3点が慶応に入るという劇的な勝利でした。

「サンケイスポーツ」7月27日より

 甲子園では、初戦の2回戦で福井県の北陸高校を9対4で、3回戦で広島県の広陵高校を延長タイブレークの6対3で勝ちました。15年ぶりのベスト8です。

「サンケイスポーツ」2023年8月17日より

準々決勝では沖縄尚学高校を7対2で破り、103年ぶりのベスト4です。

「スポーツ報知」2023年8月20日より

 準決勝では茨城県の土浦日大高校に2対0で勝ち、決勝に進み107年ぶりの優勝を目指すことになりました。
 

「日刊スポーツ」2023年8月22日より

 決勝では107年ぶりの優勝を目指す慶應義塾高校が2連覇を目指す仙台育英高校に8対2で勝利し頂点に達しました。

「サンケイスポーツ」2023年8月24日より

 慶応義塾高校の優勝が高校野球に及ぼした影響は「常識を覆す」こととされています。「サラサラヘアー」「自分で考える」「強制指導なし」「いい顔してプレー」など森林貴彦監督の理念が実行されています。
 準々決勝進出を果たした8校の内3校が「丸刈りでない」高校です。慶應義塾高校、土浦日大高校、花巻東高校の3校です。出場校の中には他にも「丸がり」ではない高校もありました。立命館宇治高校、静岡県の浜松開誠高校、香川県の英明高校などでした。高校野球=丸がりという常識は崩れていくことでしょう。
 「自分で考える」「いい顔してプレー」もいいですよね。以前、No.6「2022年1月3日 箱根駅伝優勝、青山学院大学 原晋監督から学ぶ『逆転の発想』『アウトプット』『先見の明』」でご紹介した原晋氏と発想が一致します。大学でのスポーツの花形「箱根駅伝」と高校でのスポーツの花形「高校野球」(両方とも日本テレビやNHKが完全放映している)の指導者の新しいリーダーに注目したいです。
 
 慶応義塾高校へ野球を志向する生徒がどのように入学してくるか疑問に思っていましたが、「産経新聞オンライン」に次のような記事が掲載されていました。

「約1世紀ぶりに甲子園で優勝を果たした慶応野球部は、激戦区の神奈川県で19回の夏の甲子園出場を誇る強豪だが、学業でも屈指の難関校として知られる。内部進学のほか一般、帰国生、推薦の3つの入学方法があり、中学時代にスポーツなどで成果を上げた生徒を対象とした推薦枠も、内申点が45点満点中38点以上が必要となる。作文と面接による選考も行われる。野球部の赤松衡樹(ひろき)部長(47)によると、1学年で10人弱が推薦枠で入学。今回の甲子園出場メンバーの背番号1~9番までのうち8人がこの推薦枠だが、一般入試を経て入部する部員も1学年10人ほどいる。赤松部長は「一般入試でもレギュラーになる選手はいる。どのルートで入ってきても、同じ扱いをしている」と話す。「甲子園を目指して野球をしたいが、勉強がおろそかになるのは選択肢としてない、という保護者や生徒も多い」という。野球部員はそのまま慶大に進学し六大学野球で活躍する選手も多い。元高野連会長の牧野直隆氏やヤクルトの木沢尚文投手も同校野球部OBだ。」

「産経新聞オンライン」2023.8.23 17時22分

第105回全国高校野球選手権出場校の系列私立小学校考察
(系列小学校から出場校の高校へ進学できない場合もあります。慶應義塾横浜初等部からは慶應義塾湘南藤沢中等部→慶應義塾湘南藤沢高等部に進学します。)
慶應義塾高等学校系列小学校
慶應義塾幼稚舎(東京都渋谷区)1874年設立
http://www.yochisha.keio.ac.jp/
慶應義塾横浜初等部(神奈川県横浜市)2013年設立
http://www.yokohama-e.keio.ac.jp/
 
神村学園高等部系列小学校
神村学園初等部(鹿児島県いちき串木野市)2000年設立
https://angel.kamimura.ac.jp/el/
 
智辯学園高等学校系列小学校
智辯学園奈良カレッジ小学部(奈良県香芝市)2004年設立 新宗教 辯天宗
https://www.chiben.ac.jp/naracollege-el/
 
立命館宇治高等学校系列小学校
立命館小学校(京都市)2006年設立
https://www.ritsumei.ac.jp/primary/
 
 
全国高校野球選手権優勝校と系列私立小学校
優勝回数ランキングの資料は「バーチャル高校野球」参考
https://vk.sportsbull.jp/koshien/ranking/summer/hs_victory.html
 
PL学園高等学校(4回優勝)系列小学校
PL学園小学校(大阪市富田林市)1964年設立 新宗教 PL教団 
https://www.pl-gakuen.ac.jp/primary/
 
智辯和歌山高等学校(3回優勝)系列小学校  
智辯学園和歌山小学校(和歌山市)2002年設立 新宗教 辯天宗
https://www.chiben.ac.jp/wakayama-el/briefing/
 
慶應義塾高等学校(2回優勝)系列小学校
慶應義塾幼稚舎(東京都渋谷区)1874年設立
http://www.yochisha.keio.ac.jp/
慶應義塾横浜初等部(神奈川県横浜市)2013年設立
http://www.yokohama-e.keio.ac.jp/
天理高等学校(2回優勝)系列小学校
天理小学校(奈良県天理市)1925年設立 新宗教 天理教
https://www.tenri-e.ed.jp/
 
作新学院高等学校(2回優勝)系列小学校
作新学院小学部(栃木県宇都宮市)1954年設立 
https://www.sakushin.ac.jp/elementaryschool/
 
早稲田大学系属早稲田実業学校高等部(1回優勝)系列小学校
早稲田大学系属早稲田実業学校初等部(東京都国分寺市)2002年設立
https://www.wasedajg.ed.jp/cat-elementary/
 
関西学院高等部(1回優勝)系列小学校
関西学院初等部(兵庫県宝塚市)2008年設立 キリスト教 プロテスタント
https://es.kwansei.ac.jp/index.html
 
高知高等学校(1回優勝)系列小学校
高知小学校(高知市)1957年設立 
https://kochi-e-gakuen.ac.jp/
 
桐蔭学園高等学校(1回優勝)系列小学校
桐蔭学園小学校(神奈川県横浜市)1953年設立
https://toin.ac.jp/ele/
 
 慶応義塾高校は107年ぶりの優勝で史上最も空白期間が長い記録でした。2番目に空白期間が長い学校は作新学院高等学校です。2016年に54年ぶりの優勝を果たしています。作新学院にも系列の小学校があります。
 歴代優勝校は62校です。優勝校に系列の小学校があるのは9校です。割合は約15%です。この割合結構多いのではないでしょうか。
 ちなみに大学の箱根駅伝の歴代優勝校は17校で、系列の私立小学校がある大学は6校です。割合は35%になります。この割合も結構多いのではないでしょうか。
 今後も高校や大学のスポーツと系列私立小学校の関係を考察していく予定です。
 
 


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