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ペットフード基本の『き』 低アレルギーフードの基本


はじめに

花粉のシーズンになりました。
花粉症に悩んでいる人もたくさんいることでしょう。

ヒトとは症状が違うこともありますが、ねこさん・わんちゃんでも花粉症が起こることがあります(それほど多いわけではありません)。

花粉症がアレルギーによって起こるのはご存知ですよね?
また、ねこさん・わんちゃん向けに、多くの「低アレルギーフード」が販売されています。

では、花粉症のねこさん・わんちゃんには「低アレルギーフード」をあげたほうがよいのでしょうか?

「低アレルギーフード」をあげると、ねこさん・わんちゃんのアレルギーは治るのでしょうか?

意外に、低アレルギーフードについて誤解している人は少なくありません。

そこで今回は、低アレルギーフードについて解説します。


※ 過去の記事一覧もご覧ください


◾️花粉症に低アレルギーフードは効きません

もしも、ねこさん・わんちゃんが花粉症と診断されたとします。
花粉症はアレルギーによって起こりますから、「低アレルギーフードをあげればよくなるんじゃないの」と思われるかもしれません。

ところが、花粉症のねこさん・わんちゃんの食事を低アレルギーフードに変えても花粉症はよくなりません。

なぜでしょうか?

その答えは、「アレルギー」がどのようなものかを知っていないとなかなか分からないと思います。
そこで、まずはアレルギーの基本をできるだけシンプルに解説します。

低アレルギーフードは花粉症には効きません


◾️アレルギーとは

アレルギーとは、「特定の物質や成分に対して過剰な免疫反応がおこること」です。

「過剰な免疫反応」とよく言いますが、いったい何がどう過剰なのかを説明すると、いささかややこしい話になりますので、ここでは説明を省きます。
気になる人は、下記の記事(月額マガジン)をお読みください。

そして、アレルギーを起こす特定の物質や成分のことを「アレルゲン」と言います。

花粉症の場合、アレルゲンはもちろん花粉です。
花粉症の人と花粉症じゃない人がいるのは、「花粉がアレルゲンとなる人」と「花粉がアレルゲンとならない人」がいるからです。

さらに花粉症の人の中でも、スギの花粉で症状が出る人もいれば、ヒノキの花粉で症状が出る人もいます。あるいはスギでもヒノキでも症状が出る人もいますし、イネやブタクサなど、他の植物の花粉で症状が出る人もいます。

つまり、同じ「花粉症」でも、人によって何の花粉で症状が出るかが違います。
それは「体が何をアレルゲンだと認識しているか」が、それぞれの人で違うからです。

ですから病院で診察してもらうと、単に「花粉症」ではなく、「スギ花粉症」や「ヒノキ花粉症」など、アレルゲンをもとに診断されます。

ねこさん・わんちゃんのアレルギーでも、何がアレルゲンとなっているかは、個々のねこさん・わんちゃんによって、それぞれ違っています。


◾️アレルギーは治るの?

結論を先に言うと、「治るアレルギーもあるけれど、アレルギーそのものを治すことは難しい」です。

アレルギーに対するお薬を使えば、症状を抑えることはできますが、アレルギーそのものが治ったわけではありません。

花粉症の人がお薬を使って花粉の季節を乗り切っても、翌年の花粉シーズンになると、やっぱり花粉症の症状がでてしまいますよね。

アレルギーは、ある物質や成分を体がアレルゲンだと勘違いして、そのアレルゲンに対する”アレルギーのスイッチ”をオンにしてしまうことで起こります。

アレルギーそのものを治すには、それが勘違いであることを体にわからせて、”アレルギーのスイッチ”をオフにする必要があります。

そのための治療法もあるのですが、必ずしもうまくいくとは限りません。

ですから、治るアレルギーもあるけれど、アレルギーそのものを治すことは難しいのです。


◾️低アレルギーフードでアレルギーが治るわけではありません

低アレルギーフードを一言でいうと「アレルゲンを含まないフード」です。

言いかえると、低アレルギーフードは「アレルギーの原因にならないフード」です。

これをふまえて、低アレルギーフードについて、次の2つのことを知っておいてください。

  • 低アレルギーフードは「アレルギーを治すフード」ではない

  • 「アレルゲンがフードの成分」でなければ、低アレルギーフードは役に立たない


低アレルギーフードはアレルギーそのものを治すフードではありませんし、アレルギーの症状を抑えるお薬が入っているフードでもありません。

あくまでも、アレルゲンを含まないフードです。
そのため、「アレルゲン フリー」という表現しているフードもあります。

低アレルギーフードは、ねこさん・わんちゃんがフードの成分に対してアレルギーを起こしているとき、つまり「食物アレルギー」のときに、アレルゲンを食べてしまわないようにするためのフードなのです。

言ってみれば、花粉症の人がマスクやゴーグルなどをつけて、花粉に触れないようにするようなものですね。

アレルギーの原因が花粉でないのなら、マスクやゴーグルなどをつけても役に立たないのと同じように、フードの成分がアレルゲンでないのなら、低アレルギーフードは役に立ちません。


◾️「痒がっている = アレルギー」ではありません

ねこさん・わんちゃんが痒がっていたり、皮膚が赤くなっていたりすると、「アレルギーかも」と早合点してしまう人がいます。

ねこさん・わんちゃんが痒がっていたり、皮膚が赤くなっていたりしても、アレルギーとは限りません。

むしろ、ねこさん・わんちゃんの「皮膚病」の原因がアレルギーであることは少ないほうです。

さらに、ねこさん・わんちゃんの皮膚病の原因がアレルギーであったとしても、そのアレルギーの原因がフードの成分であるとは限りません。

ねこさん・わんちゃんが痒がっているのを見ると、「ひとまず低アレルギーフードに変えてみよう」と思うかもしれませんが、残念ながらほとんどの場合、役に立ちません。

ねこさん・わんちゃんが痒がっているのであれば、まずは動物病院で診てもらってください


◾️”グレインフリーだから低アレルギー”なわけではありません

市販されているフードの中には、「グレインフリーだから低アレルギー」とうたっているフードもありますが、これは間違っています

グレインフリーのフードというのは、原材料として、麦、米、トウモロコシなどの穀物を使っていないフードのことです。

穀物に対してアレルギーを起こしているねこさん・わんちゃんにとっては、グレインフリーのフードはたしかに低アレルギーフードと言うことができますが、そうでなければ、必ずしも低アレルギーフードとは言えません。

実際には、ねこさん・わんちゃんが穀物に対してアレルギーを起こすことはあまりありません。


◾️低アレルギーフードがおすすめなのはどんなとき?

当たり前ですが、低アレルギーフードがおすすめなのは、ねこさん・わんちゃんが「食物アレルギー」のときです。

逆に言えば、ねこさん・わんちゃんが食物アレルギーでないのなら、低アレルギーフードをあげることに、特に意味はありません。

ただ、ねこさん・わんちゃんが食物アレルギーだと診断するのは簡単ではありません

食物アレルギーは、一般的に次のようにして診断されます。

  1. 症状などから食物アレルギーを疑う

  2. フードを低アレルギーフードに変えたら症状が改善されることを確認する
    ・改善する場合でも1〜2カ月かかる
    ・この期間は、低アレルギーフードを水以外はあげない
     (おやつや牛乳なども禁止)

  3. 低アレルギーフードに変えて症状が改善したら、もとのフードをあげてみて症状が再発することを確認する

食物アレルギーの診断には時間がかかりますし、おやつを我慢したり、うっかり人の食べ物などを食べてしまわないように気をつけたりしないといけません。
獣医さんとよく相談して、根気強く見守ってあげてください。

厳密に診断する場合は、食物アレルギーと診断されたあとに、今度は低アレルギーフードにアレルゲンの可能性が高い成分を一つずつトッピングして、どの成分をトッピングしたときに症状が再発するかをみて、アレルゲンを特定します。

とは言え、アレルゲンを特定するのに時間も手間もかかりますし、何より、ねこさん・わんちゃんに、わざわざアレルギーを再発させるのですから、ここまですることは滅多にありません。

ただ、アレルゲンを特定することができれば、おやつなど、ねこさん・わんちゃんが食べられるものが多くなります。


◾️低アレルギーフードでアレルギーを予防できるわけではありません

ねこさん・わんちゃんに、普段から低アレルギーフードをあげていたとしても、それでアレルギーを予防できるわけではありません

低アレルギーフードは、ねこさん・わんちゃんの食物アレルギーを診断するときや、食物アレルギーだと診断されたときに使うものだと覚えておいてください。


今回のまとめ

  • アレルギーとは、特定の物質や成分に対して過剰な免疫反応がおこること

  • アレルギーを起こす特定の物質や成分がアレルゲン

  • 何がアレルゲンになるかは、個々のねこさん・わんちゃんによって違う

  • 低アレルギーフードはアレルゲンを含まないフード

  • 低アレルギーフードは「アレルギーを治すフード」ではない

  • 「アレルゲンがフードの成分」でなければ、低アレルギーフードは役に立たない

  • ねこさん・わんちゃんが痒がっているからといって、アレルギーとはかぎらない

  • ”グレインフリーだから低アレルギー”なわけではない

  • 低アレルギーフードでアレルギーを予防できるわけではない


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