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受け入れてもらえないこと-「ボヘミアン・ラプソディ」-

もう紹介する必要もないほどの大ヒットを飛ばしている映画「ボヘミアン・ラプソディ」を遅ればせながら先日観に行った。

私は音楽が好きなのだけれど、洋楽には疎くて、クイーンも名前は聞いたことあるけど…あぁ、we will we will rock youのバンドね!程度の知識だった。

友人がこの映画にとてもはまっていて、本当にこの映画自体も、クイーンのことも、フレディ(クイーンのボーカルで、この映画の主人公)のことも、作中でクイーンの4人を演じた俳優さんのことまでも好きになっていたので、少し天邪鬼を発揮しつつ一緒に観に行った。

そうしたらもう、号泣してしまうわ、クイーンの曲の良さにやっとこさ気づくわでとても濃い2時間強だった。

クイーンの曲はどれもとても良くて、まぁこんなこと私が今わざわざ言わなくても、色々な人が書き尽くしているだろうし、一回曲を聴けばすべて伝わる話なんだけれど、本当に良かった。

まずどの曲もメロディがキャッチ―で覚えやすい。
口ずさみやすい。
けれどどの曲にもそれぞれの顔があって、同じテイストではない。

そして歌詞がすごい。

Mama, just killed a man
Put a gun against his head
Pulled my trigger, now he's dead
Mama, life had just begun
But now I've gone and thrown it all away
Mama, ooo
Didn't mean to make you cry
If I'm not back again this time tomorrow
Carry on, carry on, as if nothing really matters

「ボヘミアンラプソディ」

if nothing really mattersなんて、とてもすごい。
何もおこらなかったかのように、いつも通りに過ごしていてね

深読みして自分なりの肉付けをしようとしても、何だか掴めない歌詞で、とにかく歌詞の表層をなぞるように、歌を味わうことになる。

この歌詞がとても好きで、何度も聞きながら、歌詞を頭に思い浮かべた。

あんなに成功して、栄光の階段をひたすらに駆け上がっているかのように思えるフレディ・マーキュリーがこんな歌詞を書けるのは、やっぱり生い立ちや自らの性嗜好が関係しているのかな、と思いながら映画を観ていた。

フレディには、プロポーズまでしたメアリーという恋人がいて、幸せに暮らしていたのだけれど、そのうちに自分がゲイであることに気づいてメアリーに伝える。あなたは私に何を求めているの、と問うメアリーに、一緒に人生を歩んで欲しいとフレディは伝える。

ゲイであるゆえに、女性のメアリーを生涯のパートナーに据えることはできないとお互いわかっているし、このようなことを言っていることの不均衡さというか、アンバランスさはフレディもメアリーもわかっていた。

そうしてメアリーは、フレディが良くない方向に進んでいたら助けに行くような良き友人ではあったけれど、新しい恋人を作り、フレディの元から徐々に離れていく。

メアリーに恋人ができた時、そして妊娠した時、フレディは心の底から傷ついた、という顔をしてしまう。

理論的に考えれば、フレディには男性のパートナーがいたし、フレディが傷つく必要はないのだけれど、それでもフレディが傷ついてしまうことに共感してボロボロと泣いてしまった。

大切な人に受け入れてもらえなかったような、自分はずっと孤独なのだというような、そんなフレディの思いを感じた。

メアリーはフレディのことをずっと想っていて、そんな中でフレディからゲイ(作中では、バイだというフレディからのカミングアウトを、メアリーが「あなたはゲイよ」と否定した)だというカミングアウトを受け、フレディの恋人という座から離れざるを得なくなったのだ。メアリーこそ傷ついてしかるべきなのだ、理論上は。

けれど作中で一番傷ついていたのはフレディのように見えた。

フレディはゲイであるゆえに子供も持てず、家族もできない、と漏らす。
孤独であると。

この人間らしい、どうしようもない寂しさは、本当に痛いくらい辛かった。フレディを演じるラミはとても大きい瞳をしていて、その目一杯に悲しみや絶望をたたえていた。それはとても美しく見えて、フレディの瞳から目が離せなかった。

このフレディのどうしようもない孤独感とクイーンの歌詞に漂う一抹の仄暗さがリンクしているように感じた。ありきたりな感想だけれど。

フレディは自身のことをパフォーマーであるといい、ステージにいることにとても幸せを感じていただろうとは思うけれど、それでもフレディの望んだ家族を作って孤独から抜け出すということは叶わなかったのかな、どうなのかな、フレディは幸せだったのかな、なんて、観終わった後に考えてしまった。

けれど、幸せかどうかなんて当人にしかわからないことだし、人の人生についていっぱい考えても仕方ないのだ。私はクイーンの曲を聴いて、クイーンのライブ映像を見るくらいしかできないので、そればかりしている。


友人は何度も見に行っていると言っていたけれど(すでに5回は見ている模様)、私は映画館でこの孤独に浸るのは一度で十分だと思ってしまった。とても辛かった。こんなに悲しい、こんなに人間的な感情に浸った映画も久しぶりだ。

けれど本当にいい映画だった。
あれからクイーンのアルバムを借りて、クイーンの曲をずっと聴いている。







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