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「アントニおじさんとの出会い:クレタ島の旅から心に刻まれた思い出」


はじめに

クレタ島滞在、6日目。
この日はとても素敵な出会いがありました。 
でも、同時に深い悲しみにも直面し、人生について考えさせられる出来事になりました。

ティンバキオンにあるローカルチックな果物屋さん

「ANTONI'S GARDEN アントニーの庭」

ティンバキオンという街にあるカラマキビーチに向かう途中、私たちはとても魅力的なローカルチックな果物屋さんを見つけました。

その名も「ANTONI'S GARDEN アントニの庭」

そのお店はセルフサービスで、欲しいものを自分で取って袋に入れて購入するスタイルでした。

値札や明確な料金表がなく、少し不安を感じながらも、ビーチで食べるためにオレンジやトマト、搾りたてのオレンジジュースを買いました。

イケメン!アントニ!まるで映画俳優みたい?

心温まる会話と思い出

搾りたての手作りオレンジジュースを作成中のアントニおじさん

アントニおじさんが私達のオレンジジュースを作っている最中、地元の住人らしきカップルが現れ、アントニおじさんと親しげに話し始めました。

私たちは出来立てのオレンジジュースを渡されて、会計を済ませようと思っていましたが、

地元住人カップルが得体の知れない真っ赤なジュース片手に、アントニおじさんと一緒にテーブルに座って皆んなで飲もうと促されました。

特に急ぐ必要もなかったので、私たちはそのまま座り、一緒にジュースで乾杯してから会話が始まりました。

アントニおじさんを囲んでのおしゃべり

彼らは私たちがフランスのノルマンディー地方から来たことを知り、「私たちも旅行でその地を訪れたことがあるのよ。あの第二次世界大戦で有名なビーチがあって、雨ばかり降って寒い場所ですよね」と話してくれました。

そこから会話はどんどん盛り上がり、家族や旅行の思い出などについて次々と話題が広がりました。

幸いにも、地元のカップルの奥さんが英語を理解し話すことができたため、彼女がアントニおじさんと私たちとの会話を通訳してくれました。

驚くべきことに、アントニおじさんは13歳から石油タンカーの乗組員として世界各国を旅していたのだとか。

日本にも訪れたことがあるそうです。

彼がボリビアに行った際には、そこで奥さんと運命的な出会いを。

彼女に惚れ込んだ、アントニおじさんは、両親の反対を押し切り、半ば強引に彼女と結婚したそうです。

当時、彼女はわずか16歳だったとのこと。

彼女の若さ、年齢に気を取られてしまい、すっかりアントニおじさんの当時の年齢を聞くのを忘れてしまいましたが、20代半ば位だと思います。

彼女とアントニおじさんの写真は店内に飾られていましたが、彼女自身の姿は、ありませんでした。 

彼女は家でのんびりしているのか、おつかいに行っているのか、私たちはあまり深く考えずに会話を楽しんでいました。

アントニおじさんは、私たちが手作りのオレンジジュースを飲み終わるのを確認すると、カップルが飲んでいるのと同じ、真っ赤なジュースを私たちに出してくれました。

その真っ赤なジュースは、島の特産品でCANELADA(カネラダ)という、ギリシャの伝統的なシナモンドリンクだという事を説明してくれました。

新鮮なシナモンの香りと甘い味わいが特徴で、飲んだ後のさっぱりとした爽快感に心地よい温かさと幸福感が広がりました。 

私たちは気づけば1時間以上も彼らと話していました。 

そろそろ目的地のビーチに行かなければならないと、お会計をお願いしようとレジの方に目を向けた瞬間、アントニおじさんが、若かりし頃の写真を見つめながら言いました。

「彼女はとっても元気だったんだけど、入院して4日目で…」 

私たちは驚き、「どういうことですか?」と尋ねました。

アントニおじさんは、奥さんが2年前にコロナで亡くなったことを教えてくれました。

彼女はビニールで覆われた姿で見送られ、遠くからしか顔を見ることも触れることもできなかったんだと。

そのビニールに包まれた遺体が本当に彼の妻だったのか、彼はちゃんと別れを言うこともできなかったことに心を痛めていました。

私たちは言葉を失い、ただアントニおじさんをハグすることしかできませんでした。

その後、私たちは目的地のビーチに向かおうと車に乗り込もうとしたらアントニおじさんが手にたくさんの果物を抱えて追いかけてきて

「おまけだよ。持って行ってください。」と言ってトマトやレモン、オレンジ、クマクワット(金柑)を私たちに手渡しました。

クレタ島名産のクマクワット(金柑)

私たちは感謝の気持ちでいっぱいで、これらの果物を大切に持ち帰ることにしました。

アントニおじさん、私達が見えなくなるまでずっと手を振ってくれていました。

カラマキビーチ

ビーチに到着し、砂浜に座りながらアントニおじさんの奥さんとの思い出を想像して考えました。

彼女は生前、この美しい島で幸せに暮らし、人々を笑顔にするためにアントニおじさんと一緒に果物屋さんを営んでいたのだと思うと、彼女の存在がさらに重く心にのしかかりました。

おわりに

クレタ島の旅、アントニおじさんとの出会いが私の心に深い影響を与えました。  

人々の背後には、それぞれの物語や喜び、悲しみがあることを思い知らされ、他人との繋がりや共感の大切さを再確認し、感情や価値観の奥深さにも気づきました。

人々の物語を聴き、感じることで、私たちはより豊かな人間になり、この世界をより美しくする力を持っていると確信した、そんな出会いの旅でした。



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