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ナイトメア・アリー

★これは1946年の小説と、翌年制作された映画化作品についての雑なメモですが、小説は来春公開が予定されている新作映画の原作でもあるし、観る前読む前に余計な情報入れたくない方はスルーしてください。

ウィリアム・リンゼイ・グレシャム「ナイトメア・アリー 悪夢小路」、面白かった!原作1946年、エドマンド・グールディングによる映画化「悪魔の往く町」1947年。素晴らしい映画の、しかしノワール枠に収めるためや当時の検閲的にサクッとカット・改変された原作のあの設定やあの場面、あの人物やこの人物は、デルトロ版ではどうなるか。

スピ系有名人の名前とともに、ヨガがどうのこうのってけっこう頻繁に出てきて、ぼんやり60年代からのイメージだったヨガが、原作が発表された1946年当時にこの位は知られていたのかと。巡回見せ物興行で透視術やってた姉御キャラがホロスコープブックの通販でガッチリ稼いでるとかそっち方面の商売もいろいろ。

主人公が仕掛けるスピ系詐欺はある種の最新技術を駆使して実行されるが、映画版の「テクノロジーで騙し、テクノロジーに復讐される」を短時間に描いた展開も良いのだよね。原作の方がエロくてエグいある場面は、かなりソフトに改変されている。しかし、そのおかげで悪魔的な美しい映像にもなってる(ちょっとケネス・アンガー思い出した)。

映画版で強調されるテクノロジーは「録音機」。録音機、録画機にhauntされる、運命を変えられる。というと、ナイジェル・ニール脚本の映画「The Stone Tape」を連想してしまう病。あと、怖いからって未だに観てないあの日本映画にも繋がっていくと予想。

原作は各章のタイトルにタロットの大アルカナが一枚ずつ掲げられている。通常の名称や順序を変えられたところもある。キーとなる女性精神科医の名が「リリス」なのもアレ。このへん専門の方のタロットや占星術的に絡めた読解などあったら面白そうと思うが、占い方面の人はこの小説は嫌かもしれません。

(リリスといえば、1947年版映画での、マニッシュでクールで男に興味なさそうなリリスの造形が個人的に好きなんですが、デルトロ版は予告を観ると、より原作に寄せたリリスかも。こちらも良さげ)

タイロン・パワーが素晴らしすぎる1947年の映画版、YouTube で全編観られるようです。
しかし私はクライテリオンのBlu-ray結局ポチりましたぞ。

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パッケージ良し。ちゃんと付いてた登場人物に寄せた6枚のカード(1枚はパッケージと同じ、他5枚は載せないでおきます)感激。
そうそう、映画でもタロットはちゃんと出てきます。ウェイト版だったよ。

そういえばオーソン・ウェルズ「黒い罠」で占師マレーネ・ディートリッヒはトランプ使ってるんだっけ?と探したらこちらもタロットだねえ。
なんか映画に出てくる占師で米国オカルト受容の歴史を垣間見れたりしそうだね(適当)

(原作者グレシャムは、「吊るされた男」のカードをとても不吉なものとして扱っているが、私はオズヴァルド・ヴィルトの解釈が好きなんで、そんなに悪いイメージではないんだけどな…*個人の感想です)

Blu-rayは、Criterion Collectionのページを貼ります。

ついでに、オーソン・ウェルズ「黒い罠」の、占い師ディートリッヒとタロットカードの場面。


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