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貧乏人と金持ち、どちらがパラサイトなのか

家族で見るのにピッタリの「パラサイト 半地下の家族」でした。

極力ネタバレは避けますが、バレていたらごめんなさい。

さんざんあらすじに「ひょんなことから金持ちの家の家庭教師になった長男をとっかかりに家族全員が金持ち一家に寄生する」と書いてありますのでここは書いたとしてもネタバレにならないでしょう。

そのあらすじがまた不正確なのでネタバレどころかミスリードを誘っています。家族全員が寄生している状態とはどのような状態なのか。寄生どころか各人が得意分野をあの手この手で駆使して労働の対価として給与をもらっています。これを寄生、パラサイトと言ったら働く人みんなが寄生虫ということになってしまいます。

失業していることも社会の寄生虫ということになるのでしょうか?この家族はなんと4人全員が失業した状態で物語が始まります。社会へのあきらめきれないあきらめなど人ごととは思えないのがこの家族です。この家族が決定的に貧困に陥ったのは台湾カステラという商売の失敗です。この台湾カステラは日本でも食べられるようですが、韓国ではこのフランチャイズ契約で嘘があり破綻した人が出たことが作品の中で出てきます。知っておくと物語への理解が深くなります。

資料を置いておきます。韓国ヘラルドの記事です。

http://m.koreaherald.com/view.php?ud=20170314000606&ACE_SEARCH=1

失業一家と知り合う金持ちの人達は発言の端々から一度も貧乏暮らしをしたことがないことがわかります。その日の日当が入らないと乾上がる人達の存在すら想像の範囲外の人たちです。

芸術性の高い美しい住宅を買い、気の利いた家具を設えて純粋な長女、完成の鋭い長男と家を買った時についてきた控えめな態度のお手伝いさんがいて若い運転手が送り迎えも買い物も手伝ってくれます。

家長の仕事はIT企業の新進気鋭の社長。オシャレなオフィス、優秀なスタッフに囲まれて雑誌の表紙も飾るし、ちょっと抜けたところある妻との関係は良好です。

貧乏な家族と金持ちの家族を比較するのが残酷なほどです。

貧乏な家族の方にも家の誉があります。母のスポーツ競技で撮った銀メダルです。競技はネタバレ回避のため書きません。

大雨が降って貧乏家族は被災者に金持ち家族は雨で街が洗われてきれいだと呟きます。この経済格差が歩いて行けるほどのところの双方の家があるにもかかわらずお互いのことなぞ知らないかのような暮らしが拡がっています。

金持ちがなぜ金持ちなのか。才覚があってそれを活かしているからか。では、貧乏家族はどうなのか。大学受験に失敗しただけで自分の可能性が広がらないのは社会の偏りであって本人が悪いと言いきれるものなのだろうか。金持ちがその富と才覚を社会にきちんと還元していないことは間違いではないのか。弱い立場の人を責めるのは簡単で強い人間を批判することは難しいのが世の常で、自分とは異なる立場の困難な状況にある人を無視して富を築き上げる人間は寄生虫ではないのか。他者を無視する権力性を貧乏人は持たない。その権力性の非対称とどうしても乗り越えられない固定化された格差の責任の所在はパラサイトにある。

そのような答えが自ずと出てくるポン・ジュノ監督のメッセージ性の強いコメディスリラーでした。


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