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日常から未来を描く

日常モノが好きである。
『宇宙よりも遠い場所』が大好きである。

『宇宙よりも遠い場所』は、南極を目指す女子高生を描いた青春アニメであり、恐らく日常モノとは分類されない作品であるように思う。

彼女たちには、宇宙よりも遠い場所=南極という明確なゴール地点が存在する。

特に主人公・玉木マリは、日常への閉塞感から、文字通り飛び出すような形で南極へと出発しており、日常の対局に置かれている人物だとも言えるだろう。
第7話で彼女が語る「このままじゃない何処かへ」という目標は、作品で一貫して描かれている。
この作品では、登場する人物の殆どが「何処か」に向かおうとしているのだ。
何処って何処か?南極である。
そうした点から私は、『宇宙よりも遠い場所』がビジョンを描くことに重点を置いた作品だと考えている。

このままじゃない何処かへ、日本から南極へと、紆余曲折ありながらも歩を進める彼女たちは、私にとって酷く眩しい。
その理由は、自身の高校生時代を振り返っても、南極渡航の経験はなく、そもそも彼女たちのように、何かを一心不乱に目指したことがあったかどうか、どうにも怪しいからだろう。
例えば何かに挑戦したいと感じたとき、関連する部活動に参加するという手段をとることが多く、まず実現可能な範囲で挑戦するタイプが私だと言える。その環境に甘えた姿勢にも創造性に欠けた自身の発想力にも、時々やけに嫌気が差すのだ。
恐らくそうした劣等感があるからこそ、0→1を描く彼女たちに、目が眩むのだと思う。

しかし情熱溢れた少女たちのイレギュラーな旅物語に留まらないのが、本作の特徴である。

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