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保護犬・保護猫の難しさ。命を買わないでという言葉の重み

私は現在、生体販売をしています。命に値段をつけて引き渡しを行っています。

ですが、命の値段とは思っていません。

母親や子犬・子猫が、豊かに暮らしていくためのお金です。


「命を買わずに、保護施設から迎えましょう」とよく言われています。

事情がある子を引き取れるご家族様であれば、是非保護された子をお迎えしてほしいと思っています。


ですが、みなさんが全員、事情がある子をお迎えできるご家庭なのでしょうか。

爪切りができない、トイレをトレーニングをどうすればいいか分からない段階で、保護犬・保護猫を迎えようとしていないでしょうか。

これまでたくさんの子たちを引き渡しをしてきたからこそ、「みんなで命を買わず、保護を選択しましょう」「そうすれば、殺処分の数が減ります。」などとは口が裂けても言えません。

一緒に暮らしていくには、大変過ぎる子もいるからです。

ある保護施設は、里親さんに送りだすとき約3割がトライアルが失敗に終わるそうです。生体販売でも返犬・返猫されることはありますが、その数は1%もないでしょう。

たった1~3週間のトライアル期間で3割も返ってくるとは、生体販売ではありえない割合です。

なぜこんなに多いのでしょう。

今回の記事でいう保護犬・猫とは、一般の方が手放した生体や野良の子のことを指しています。
繁殖引退犬やブリーダーが手放した余剰犬・猫は、保護された経緯が曖昧であり、保護の名を借りたビジネスのひとつとなっているためです。

大人の動物は難しい

あなたは、養子へ行くとすれば、いつがいいですか?

3歳?小学生?中学生?30代?

ほとんどの方が、3歳と答えると思います。幼い頃の方が、環境の変化で体調は崩しやすいですが、新しい環境には慣れやすいですよね。

ワンちゃん・猫ちゃんも一緒です。

やっぱり、月齢が上がってくると、引き渡しをする時に心配するのはワンちゃん・猫ちゃんたちの心の部分です。

新しい家族との生活リズムを合わせるのは、私たちと一緒で早ければはやいほどいいです。

例えば、保護犬は散歩すらできないようなワンちゃんが多いです。歩道を歩いたことがないワンちゃんもいます。車を見たことがないから怯えてしまう、他のワンちゃんと一緒に遊んだことがなくて、遊び方が分からなくて攻撃的になってしまう、甘え方が分からない、トイレができない、そのような事情を抱えています。

子犬であれば1日、長くても1週間で慣れるようなスピードを、何か月もかけて心を開いてもらう必要があります。その変化に対応できるまで、私たちも一緒に気長にトレーニングしなければなりません。もしかしたら対応できないままかもしれません。

犬にも発達障害がある

知名度はありませんが、ワンちゃんにも自閉症などと同じ、発達障害があります。そういった、トイレが覚えずらい、挙動不審になりやすい、人との距離感が分からないワンちゃんもいます。

ワンちゃんの発達障害は、診断方法が確立されていません。そして、身体に障がいがあるわけではないので、ペットショップでも保護団体でもその事実が周知されないまま引き渡しが行われています。

そして、「こんなはずじゃなかった・・・」と、飼育を断念するケースがあります。


私の友人に、大型犬5頭飼育してきた人がいます。しかし、その5頭目の子の飼育を中断しました。それはなぜか。

発達障害だったのです。

何頭も飼育をしてきた大型犬に慣れているご家族でさえ、お手上げだったのです。


綺麗事だけでは一緒に暮らせません。

「命を買わないで。」「保護の子を迎えよう。」は、とても聞こえが良い言葉ですが、それだけで殺処分は減るのでしょうか。

引き渡す上で大切なことは

殺処分を減らすためにできることは、保護活動だけではありません。

そのひとつが、終生飼養しやすいようなワンちゃん・猫ちゃんを育てあげて、引き渡すことだと思っています。そして、発達障害や飼育放棄に繋がりやすい症状が見られた場合、その事実と、暮らし辛さを伝え引き渡すことも大切なのではないでしょうか。

ご家族を失うワンちゃん・猫ちゃんを減らすために、私たちは真っ当な環境で育てているブリーダーのみ取り扱い、

そして飼育が難しそうなご家族候補の方には販売せず、

何かあれば相談にのる姿勢でお引き渡しをしております。

これが、保護活動以外にもできる、ワンちゃん・猫ちゃんのための活動です。


今回の記事は、保護犬を迎えないで、というような内容ではありません。

ご家族にあった迎え方を選び、終生飼養をすることが一番大切なのではないでしょうか。

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