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靄と棘

ビー玉のような夜
夢が重なり
白木蓮が花開く

水鳥の一斉に飛び立つように咲き乱れても
そういう花はすぐに忘れてしまう

こっくりとした白は鈴の音をはこぶ
風鈴屋の騒音 戸を揺らす鐘
あの子に聞けるだろうか
お前に分かるだろうか

椿に演じ
梅に気取り
桜にうつつを抜かして春を聞けるか

胎動をこばみ
色めく埃をこばみ
まるで人肌の馴れ馴れしい春風に吐き気をもよおし
春からぽつんと取り残されることに
耐えてこその春だ

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