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J.S.バッハ/トッカータ 嬰ヘ短調 BWV910

ワイマール宮廷オルガニスト/楽師長の職を退き、ケーテン宮廷楽長に就任した後の1717年の作品とされる。32歳のバッハは作曲活動も精力的に行ない、多くの曲を書き上げた。

深遠で哲学的な精神世界にあるこの曲は5つの部分で構成される。
愛いをおびた幻想的な導入。
穏やかな悲しみをたたえながら言葉を紡ぐ緩徐部。
エネルギーをもった下降のテーマに現実を突きつけられる第1フーガ。
束の間の夢を見る、救いの推移部。
そして半音階の不吉な下降をテーマにもち、苦しみを背負うかのような第2フーガだ。

一曲を通して幾度となくおこる転調が、万華鏡のように様々な心象風景を思い起こさせる。最後は希望の光が差したかのように見えるが、結局はそれも幻なのだろう。

2019.11.8 第32回荻窪音楽祭/IMA茨城音楽文化振興会コンサート/学生演奏家による室内楽の夕べ Vol. 3 より
於:Gran Duo

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