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ヤナーチェク/《1905年10月1日 街頭にて》(ピアノ・ソナタ)

ヤナーチェク(1854-1928)はチェコの作曲家。
自国の民族音楽や言葉の抑揚を研究し、語るような旋律語法を築いた。

彼はこの作品に次のような言葉を遺した。

──ブルノの芸術会館の階段の白い大理石。庶民の労働者フランティシェク・パヴリークは倒れ、 血に染まった。上級教育を求めるために現れ、むごい殺人者によって刺し殺された。

ヤナーチェクの故郷チェコは、当時ドイツとの対立が高まっており、教育や一部の会話がドイツ語に制限されていた。
そのためチェコ語大学の設立を目指してデモが行なわれたのだが、1905年、 デモ隊はドイツ軍と衝突し、とうとう庶民の若者が命を落としてしまったのである。

この事件を知ったヤナーチェクは直ぐに筆を取り、わずか半年足らずで本作品《1905年10月1日 街頭にて》を書き上げた。
追悼曲であるこの曲は、やりきれない思いに苛まれるかのようにエネルギーの突沸と淀みを繰り返す。

完成当初は「予感」「死(元は悲歌)」「葬送行進曲」の三楽章構成であったが、第3楽章は初演の直前にヤナーチェク自身によって破棄されてしまった。

2022.10.30 第47回 東京藝術大学音楽学部 同声会茨城支部演奏会 より
於:日立シビックセンター音楽ホール

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