見出し画像

ウイングス「ヴィーナス・アンド・マース」

Releace Date
May 1975


Song List

Venus And Mars
Rock Show
Love In Song
You Gave Me The Answer
Magneto And Titanium Man
Letting Go
Venus And Mars – Reprise
Spirits Of Ancient Egypt
Medicine Jar
Call Me Back Again
Listen To What The Man Said
Treat Her Gently – Lonely Old People
Crossroads Theme

メンバーが2人抜け、たった3人で作った「Band On The Run」が空前の大ヒットと、これまでの逆風を全て追い風に変えた。しかし、3人ではライブが出来ない。1974年、バンドはギタリストとドラマーを新たに迎える。元サンダークラップ・ニューマン、早熟のギタリスト=ジミー・マッカロックと、空手黒帯と教員免許を持つ異色のドラマー=ジェフ・ブリットン。バンドはリハーサルを兼ねてナッシュビルに飛び、スタジオに入る。その模様は後に「One Hand Clapping」と題されたドキュメンタリーになるが、お蔵入りとなる(現在は公開)。

ナッシュビルではカントリーな土地柄だったからか、"Sally G"というカントリースタイルの曲が録られ、同時にバンド編成に戻ったことの喜びに溢れたハードなポップチューン"Junior's Farm"も作られる。

しかし、ロンドンに戻り新たに3曲のレコーディングを続けている折、ジェフがバンドから離脱する。

ジェフ「ポールとリンダとは上手くやっていた。けど、ギタリスト2人は大酒飲みで、飲んではリンダの悪口を言ったりしてて、俺は気分が悪かった。あの2人は俺のことも嫌っていた。ある日ポールが来て、悪いんだけど…って。ポールは申し訳なさそうだった。」

ドラマーのオーディションが必要になり、バンドは気分転換を兼ねてニューオリンズへ向かう。そこでアメリカ人=ジョー・イングリッシュをスカウト。断続的なレコーディングは5ヶ月に渡り、1975年に完成する。

ナッシュビルでのセッションでは「バンド・オン・ザ・ラン」の延長線上にあるようなクリアさと風通しの良いサウンドが継続されていたが、ロンドンでのレコーディング(74年11月)以降、サウンドは「レッド・ローズ・スピードウェイ」期に回帰したような厚塗りのものになる。ニューオリンズでのレコーディングの影響か、アメリカツアーを見据えた南部テイストの導入だったのか、はたまたアイザック・アシモフにハマっていたが故のSF的なサウンドを目指したからか。

しかしサウンドの是非はともかく、追い風に乗ったポールの作曲はキレを増し、バリエーション豊富なメロディーが隙なく並ぶ。"Letting Go"の重厚さ、"Call Me Back Again"のソウルフルな熱唱、"You Gave Me The Answer"の軽妙さ、ニューオリンズサウンドも自分色に染め上げる"Listen To What That Man Said"。バンドであることを意識させるため、デニーに歌わせ、ジミーの曲も採用する。ラストに昼メロドラマのテーマを殊更ドラマチックに弾き倒して終わるというギャグを披露する余裕も見せる。

いよいよバンドになったという自信。クレジットは「ウイングス」に戻す。更に相応しいジャケットのために、ヒプノシスを起用。アメリカでは予約で200万枚、当然のごとくイギリスとアメリカのチャートを制覇。ビートルズ解散から5年、他のメンバーの活動が尻すぼみになっていく中、上昇気流に乗った翼はいよいよアメリカツアーを視野に入れつつ、ヨーロッパツアーをスタートする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?