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問題集・参考書レビューvol.06 理系数学の良問プラチカ

 今回紹介する問題集・参考書は
「入試精選問題集5 理系数学の良問プラチカ 数学I・A・II・B」
である。

【掲載問題数】 153題

 掲載問題数は合計153題で、そのうちIAが45題(うち何題かはIIBにもかぶる)という内訳である。また、153題のうち30題がやや応用的な問題である。

 この問題集の使い方については、表紙にも記載がある「1日3題・2ヶ月完成」という使い方が良いだろう。どれも典型的な問題であるから、1問1問しっかりと理解を深められる使い方が理想的で、一例として次のような使い方を提示しておこう。

1:何も見ないで考えて解いてみる
2:5〜10分考えて手も足も出ない場合、解答の前にある「解法のポイント」をヒントとして利用して再チャレンジする
3:解答と自分の答案を見比べて、解答中にわからない点がないかや、自分がどこでわからなくなっているかをチェックする
4:解答を見ないでもう一度答案を書き出してみる
5:一通り書き出せるようになったら次の問題へ行く

 これを1問につき40分程度、1日2時間を見て毎日進められれば問題集の学習進度としては申し分ないだろう。問題や分野に応じて多少多く時間がかかる分野もあるだろうが、それこそ自分の弱点や不足している点だと割り切ってしっかりと学習したい。

【分野の網羅具合】 IAは分野重点・IIBは全範囲一通り

 一通りIAIIBすべて網羅されてはいるものの、IAは分野ごとに重点が置かれた問題構成になっている一方で、IIBは各分野の定理や公式ごとに大問が配置されているような網羅具合である。入試の出題傾向と比較したとき、数学IAで出題される分野は限られるし、典型的な題材が多く見られることも確かなのでその意味では効率のいい網羅具合と言えるだろう。
 また、数と式(方程式・不等式)の分野ではIとIIの区別がほぼないこともあり、一通りの分野をやり終えたタイミングでこの問題集に手をつけるのが好ましい。

【問題の難易度】 入試の標準から得意不得意で差がつくレベルまで

 問題の難易度は「入試の標準」となるレベルのものが多数掲載されている。一方でやや応用的な問題になると、数学が得意な人や得点源にしたい人がライバルに差をつけるのに重要な問題のレベルになる。教科書をやり終えたタイミングでこの問題集を使い始めるとなると、どれもレベルが高くなかなか苦戦するかもしれない。だが、典型的かつ頻出な問題が多数掲載されていることもあり、やや応用的な問題以外の約120題については、どれも自然と解法が思いつくぐらいには消化してほしい程度の難易度である。

【解答・解説の詳しさ】 そこまで詳しくない・わかっている人向け

 解答は本番での答案作成を意識してか、傍注やポイントの説明などがほとんどない。解答作成上のポイントとなる内容は、解答後の解説で説明されている問題もあるが、これもとても詳しいとまではならない。総じてある程度はわかっている人向けであったり、他の問題集と併用して考え方が学習できる人に向けた問題集となっている。
 これは言い方を変えると「無駄が少ない」ことでもあり、ひたすらに効率を追い求めて作られた問題集であると言えるのかもしれない。また、詳しく説明されていない部分を自分で補いながら学習することも大切なので、そのような訓練にはもってこいと言えよう。その場合、必ず正誤を確認できるような「人」や「もの」を準備しておくことをお忘れなく。

【特筆すべき点】 典型問題の総集編

 本問題集を一言で表せば「典型問題の総集編」である。IAIIBでよくみる問題の網羅となっており、この問題集の全解法が身につけば数学が足を引っ張ることはまずないと言える程度に押さえるべき点が押さえられている。そのため、程よく学習が進んだ段階で、解法パターンの確認や、標準的なレベルの問題を通じたアウトプットの訓練をするにはこの問題集がもってこいである。

【オススメする対象】

 この問題集は、以下のような人にオススメできる

・各分野の学習が一通り終わったが、本格的に過去問に取り組むまでに何か学習をしたい人
・高3や高卒の秋口に、夏までの学習からワンランク上の学習にシフトしたい人
・一通りの解法パターンを網羅的に確認しておきたい人

【注意すべき点】

 本書の使い方のところで、使い方の一例として「解法パターンの種類をとりあえず覚える」とある。気をつけたいのは、これは学習段階の第1段階であり、第2段階以降で手を動かして使っていく中で自然と使えるようになることを一つの目標としていることである。数学にせよどの科目にせよ、覚えることは学習のスタートラインである。覚えること自体は避けて通れないし、典型問題程度は確かに解法のパターンマッチで十分に対応可能である。そのため、「パターンを覚える」という使い方にもうなずけるのだが、しかしそれは「使いこなせるようになるためにまず覚える」のである。使いこなせるようになるためには「類題をどんどん解く」という学習の第3段階も提示されているため、パターンを覚えておしまい、とはならないようには気をつけよう。

 ここからは完全な私見を述べる。

 「覚える」というのはあくまでも手段であり、その目的は「理解すること」である。パターンとは抽象化された概念と言い換えればよく、概念を理解するにはいくつもの例を通じる必要がある。そして、いくつもの例を通じるうちに、自然と共通項としての概念が納得できるようになる。それはパターンを理解したという状況とほぼイコールと言えるだろう。パターンをまず覚えてしまえというのは、たくさんの例をこれから考えるための出発地点としてまずは覚えてしまおうということなのである、と私は考える。

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