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問題集・参考書レビューvol.03 「数学I・A 基礎問題精講」

 今回紹介する問題集・参考書は
「数学I・A 基礎問題精講」(上園 信武)
である。

【掲載問題数】145テーマ(例題と演習問題のセット)+α

 掲載されている問題の数、というよりもテーマの数が145である。1つのテーマにつき、「例題 → 精講 → 解答 → ポイント (→ 参考) → 演習問題」のサイクルで掲載されており、1テーマにつき20〜30分程度で無理なく学習が進められる。使い方として

1:各テーマの例題を、下の解説部分を隠して解いてみる。
2:例題が解けなかった場合、精講を読み、何をどう考えているかを把握してからもう一度例題の問題を解き進めてみる。
3:例題が解けた場合、または精講を元に解き進めてみた後に、解答とポイントを確認し、何をどのように考えて計算しているかを把握する。
4:解答の進め方に疑問が生じれば誰かに質問するなどして解決する。
5:ポイントまで一通り納得できたら、演習問題で実際に考え方を利用できるか試してみる。

この進め方で各テーマの学習を進めると良いだろう。また、目次からテーマ名が確認できるため、模試や他の問題集をやっている中で、わからない定理や公式が現れたとき、目次と照らし合わせることで復習すべきテーマがすぐに見つけられるのもメリットの1つである。

【分野の網羅具合】IAの全範囲を網羅

 数学IAの全範囲をしっかりと網羅しており、基礎的な面での抜けはほぼない。数学IAの基礎的学力で抜けがないかを確認するにはもってこいの問題集になっている。

【問題の難易度】教科書の章末問題レベル

 問題のレベルとしては、例題も演習問題もどちらも教科書の章末問題レベルである。教科書代わりにこの問題集を使うことはできないが、教科書を用いた各分野の学習が一段落ついた人は、知識が身についているかの確認も兼ねてこの問題集を使うのは、おおいに有効である。入試を見据えていることからも「効率よく」定理や公式の使い方を学習できるのは評価すべき点と言えるだろう。

【解答・解説の詳しさ】例題はしっかり・演習問題はあっさり

 例題の下に掲載されている解答は「精講」も相まって丁寧めな解答になっている。特に「精講」にテーマごとの考え方が掲載されているため、考え方と実際の計算を「精講」と「解答」の組み合わせで確認することができ、自習にも使いやすい解答になっていると思う。
 一方、演習問題の解答はかなりあっさりしている。これは「例題の説明・解答が理解できていればわかるでしょ?」という意味であると考えるのが良い。つまり、演習問題の解答でよくわからない点があれば、まずは例題の解答をしっかりと理解することに戻れ、という作者のメッセージだと思えば良いということである。実際、例題がしっかりと理解できていれば演習問題はただの類題にすぎない。そのため、演習問題の解説まで詳しくしてしまうのは「二度手間」になってしまうのである。

【特筆すべき点】基礎的内容の完全網羅

 この問題集は「教科書から入試問題を解くための橋渡しを行う演習書」と筆者自身が書いているように、教科書を終えた人が次に取り組むべき問題集として最適なレベルになっている。共通テストや中堅私大の小問集合ぐらいであればこの問題集で十分対応できるだろう。
 しかしその分、この一冊が完璧になっていないと他の問題集に手を出しても仕方がない問題集であるとも言える。様々な問題を解く中で、基盤とすべき知識・考え方がこの一冊に詰まっていると考えて、必要ならば何度でも該当項目を確認するくらいはしないと勿体無い。

【オススメする対象】

 この問題集は、以下のような人に対してオススメできる

・これから本格的に受験勉強に取り組みたい受験生
・共通テスト対策に数学IAの基礎を学習したい人
・日頃の学習の中で、教科書の問題+αに取り組みたい高1・高2
・チャート式では問題が多すぎて最後までやりきれなかった人

【注意すべき点】

 難易度の説明中でも触れた通り、「教科書代わりに使うことはできない」ことには注意が必要である。というのも、この問題集には定理や公式の証明・導出がほとんど載っておらず、使い方の説明が大半だからである。問題を解くだけであれば定理や公式は「使えれば良い」かもしれないが、「定理や公式として使える」ということ自体は、証明・導出されて初めて価値を持つことである。言うなれば「構造をわからずに道具を使っている」状態になりかねないため、その点には注意が必要である。
 また、あくまで「基礎問題」精講なので、この一冊で数学IAがもう大丈夫、というほどではない。この問題集を足場として、次のレベルにステップアップする必要があることは忘れてはいけない。

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