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問題集・参考書レビューvol.04 「数学I・A 標準問題精講」

 今回紹介する問題集・参考書は
「数学I・A 標準問題精講」(麻生 雅久)
である。

 なお、一部「基礎問題精講」のレビューと重複する点もあり、『基礎問題精講と同じく』というフレーズで説明を簡略化している点がある。是非基礎問題精巧のレビューも参考にしながら読んでいただきたい。

【掲載問題数】 101テーマ

 掲載されている問題のテーマが101テーマであり、テーマごとに例題+演習問題がセットになっている。そのため、実質的な問題数は200題を超える。
 基礎問題精講と同じく、以下の使い方が良いだろう。

1:各テーマの例題を、下の解説部分を隠して解いてみる。
2:例題が解けなかった場合、精講を読み、何をどう考えているかを把握してからもう一度例題の問題を解き進めてみる。
3:例題が解けた後、または精講を元に解き進めた後に、解答とポイントを確認し、何をどのように考えて計算しているかを把握する。
4:解答の進め方に疑問が生じれば誰かに質問するなどして解決する。
5:ポイントまで一通り納得できたら、演習問題で実際に考え方を利用できるか試してみる。

 テーマ数が基礎問題精講より減っているが、その分より典型的で重要な考え方を一問一問解説している。題材の難易度も上がっているため、進め方の1〜4を丁寧に進めるのが理想である。また、精講の中で定理や公式の証明・説明が掲載されていることもあるので、精講の部分も自分が本当に理解しているかを確認しなくてはいけない。1テーマにつき、演習問題も込みで1時間弱はかかる覚悟を持つべき問題集である。

【分野の網羅具合】 データの分析以外の数学I・A全範囲

 データの分析は一問も掲載されていない。「本書の利用法」にもそのことが明白に記載されているため、共通テスト対策にこの問題集を使うのはオススメしにくい。対して、難関国立大やMARCH以上の私立大を受けようとする受験生にとっては数学I・Aで必要となる標準的な問題がほぼ網羅されているので、安心してこの一冊を完璧にすることを目標としてほしい。

【問題の難易度】 入試の標準・MARCHの合格最低水準

 問題はすべて過去問からの抜粋(改題も含める)であり、いずれも入試問題の標準的なレベルになる。このレベルの問題がミスなく完璧に解けるようになれば、(数学I・Aだけだが)MARCHレベルは合格に必要な水準に届くレベルといえる。
 難関国公立・難関私立大志望者にとっては、このレベルの問題は落としてはいけない重要な問題になり、これらを自由自在に使いこなせることが必要条件といえるレベルである。目安として、「7月までにこの一冊(IIB・IIIも含む)を完璧に仕上げること」が一つの目標であり、夏以降の学習の基盤になる問題集である。

【解答・解説の詳しさ】 例題しっかり演習あっさり・解法のプロセスあり

 基礎問題精講と同じくで、例題の説明はしっかりしているが、演習の解説はあっさりしている。
 一方で、基礎問題精講より問題の難易度が高いことから、「解法のプロセス」が掲載されているのが違いとなる。解答の中で、何を目的にどのような計算や操作が行われているのかを、プロセスと照らし合わせながらしっかりと確認しよう。
 また、「精講」の中で、利用している公式や定理・考え方の説明がより深くなされており、公式・定理の証明導出もものによっては載っている。上述した通りだが、解答だけではなくこの精講の部分も自分のものになっているか確認する必要がある。

【特筆すべき点】 精講による考え方の詳細な説明

 この問題集から学ぶべきことは、ほぼすべて「精講」に載っていると言っても過言ではない。「精講」の内容が自分のものになっていれば、入試問題の標準的な問題は何の苦もなく解けるようになる。それくらい精講の内容が詳しいものになっている。「なぜそう考えたのか」を誰かに説明するつもりで問題の解答を作ってみると、自然と精講の内容が自分のものになっているかの確認になる。ただ解いておしまいにするのではなく、自分の言葉で他者に説明できるようにすることを本当の目標とすべきであり、その説明の詳細は精講に全て載っている。

【オススメする対象】

 この問題集は、以下のような人に対してオススメできる

・二次私大受験で数学が必要なほぼ全ての受験生
・日頃の学習から、入試問題のレベルに取り組みたい高1・高2
・チャート式では問題が多すぎて最後までやりきれなかった人
・基礎問題精講では少し物足りない人

【注意すべき点】

 この問題集の間違った使い方として、一冊をさらっと流し読みしただけで「わかる」けど「できない」状態になってしまい、そのまま別の問題集に手を出してしまうということが挙げられるが、これでは全く意味がない。読んでわかるのはほぼ当たり前で、わかったと思っていることが正しくできるようになって初めて使い物になる学力といえるのである。(ちなみに、この問題集を読んでわからないのであれば、教科書や基礎問題精講のような、より基礎的なところからやり直さなくてはならない。)繰り返し何回も説明しているが、一問一問をだれかに説明できるくらいしっかりと理解した状態で解けていることがこの問題集を使う上でのゴール地点と言えるので、そこを目標にじっくりと取り組んでほしい。
 また、難関大を受けようというのであれば、この問題集のレベルは「標準」であることを忘れてはいけない。必ず次のレベルにステップアップしよう。ステップアップした先での基本となる考え方や知識はこの問題集で学習してきたことが基本となるので、考え方や知識面でわからないことがあれば何回でもこの問題集に戻ってくることを覚悟してさらに上のレベルの問題に挑戦しよう。

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