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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第1話 出会い

第1章 わたしのマリーちゃん

あらすじ

名門私立高校に通う名家の令嬢 佐々木愛美は密かな楽しみがあった。
それは、子供の頃大切にしていた人形に似た女子大生小柳百合の後を追うことだった。
愛美は百合を追いながら、子供の頃大切にしていた人形と遊んだ日々を思い出していく。
やがて、愛美は百合への気持ちが抑えられなくなっていく。

注意喚起

暴力シーンや過激な表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


登場人物

  • 佐々木愛美

地元で「お嬢様学校」と言われる聖イリス女子高等学校に通う名家の令嬢。
長い黒髪が特徴的な美少女。
部活動では写真部に所属している。
学校の帰り道で小さい頃大切にしていた人形に似ている小柳百合に一目惚れする。
発育不全で周りのクラスメイトより身長が低めなのが悩み。

  • 小柳百合

愛美の自宅の近くにキャンパスがある大学に通う女子大生
高身長で整った顔立ちをしていて、まるで人形のような美人。
愛美が子供の頃大切にしていた人形のマリーに似ている。

  • 川崎春香

愛美のクラスメイトで部活も一緒に写真部に所属している。
眼鏡が似合う少女。
愛美とは仲が良く、写真を撮りに愛美と出かけることもある。

わたし

あの頃はみんなから愛され、幸せだった。
「ねぇ、マリーちゃん。今日は何して遊ぶ?」
わたしにはかわいいお友達が居た。
名前はマリー。ショートヘアのかわいいお人形さんだった。
わたしが4歳の頃の誕生日にお父さんが買ってくれた。
マリーちゃんは妹のような存在だった。
でも、マリーちゃんはもう居ない。

1.愛美2023年4月18日

今日もいつも通り、学校が終わった。
同じクラスの春香さんと一緒に話をしながら帰った。
春香は眼鏡が似合っている可愛い女の子。
去年から同じクラスで部活も一緒なので、話すことも多い。
わたしは春香と学校の授業のこととか話していた。
「明日は予約していたデッドハードのCDを受け取りに行くから、写真部休むね。」
春香はデッドハードという男性アイドルグループのファンで、メンバーの佐川新が一番好きらしい。
テレビはニュースしか見ないので、春香から聞くまでそんな人たちは知らなかった。
そんなわたしでも佐川新はカッコいい方だと思う。
「そういえば、山口先生には休むこと言ったの?」
わたしは春香が顧問の先生に休むことを伝えたか聞いた。
「別に言ってないけど、怒られないし大丈夫!」
春香は部活を休むことは言ってなかった。
写真部はゆるい部活だから、勝手に休んでも怒られない。
「じゃあね。愛美ちゃん。」
「さようなら、春香さん。」
途中で別れ、ここから一人になった。
わたしはしばらく歩いてバス停に着いた。
バスが来るまで、ベンチに座って小説を読んでいた。
後ろには近くにある男女共学の学校のカップルが楽しそうに会話していた。
恋なんて中学から女子校に通うわたしには無縁の話だった。
小説に集中していたら、いつの間にかバスが来た。
わたしはそのバスに乗って、わたしの家の近くにある乱馬町というバス停まで向かった。
到着するまで、バスに揺れながら小説の続きを読んでいた。
読んでいたら、あっという間にバス停に着いた。
この周辺は一等地で市の中心部に近く、治安が良くて景観もキレイな街だ。
早川大学のキャンパスもあり、大学生も見かける。
少し歩いた先にあるわたしの家を目指して歩いていた。
大学のキャンパスの近くを歩いていたその時、きれいな女の人とすれ違った。
彼女は茶髪のショートヘアにスラっとした高身長で整ったきれいな顔をしていた。
その美しい姿はまるで私が子供の頃持っていた人形のマリーに似ていた。

「マリーちゃん。今日はおままごとしよう!」
わたしは子供の頃持っていた人形のマリーと過ごした楽しい思い出を思い出した。
子供の頃の楽しい記憶と美しい彼女への芸術的な関心に導かれるように、わたしの家の反対方向に進む人形みたいな彼女の後ろを歩いていた。
人形みたいに美しい彼女の後ろ姿を見ているだけでも心が満たされていく。
彼女を追っかけていると、あるアパートに着いた。
彼女はアパートに入っていった。
どうやら、このアパートに住んでいるみたいだ。

しかし、きれいな女の人を追っかけていたら、知らない間に家から離れてしまった。
帰宅がすこし遅れてしまった。
お母さんに心配されるから、急いで帰ろう。
わたしは来た道を早足で戻って、自分の家に向かった。
すこし遅くなったが、自分の家に着いた。
広い敷地に大きな家、ガレージには白い輝きを放つ車がある。
大きな門をくぐり、道を歩いて、大きなドアを開けた。
ドアを開けると、そこは広い玄関があった。
自慢ではないが、そこはわたしが住んでいる家。
わたしは地元の名士でお金持ちの家に生まれた。
家は豪華な造りでこの家族の富と名誉の象徴とも言える。
そんな家庭に生まれたわたしは子供の頃からお嬢様と言われ、周りから愛され、羨ましがられた。
わたしは特別な存在。
「愛美さん、お帰りなさい。」
「今日は遅かったね。」
わたしのお母さんが迎え入れてくれた。
帰りが遅かったことに気づいていた。
「友達に勉強を教えていたの。」
わたしはごまかした。
人を追っていたなんて言えなかった。
「偉いね、愛美さん。さすが私の子だわ。」
お母さんは私がクラスメイトに勉強を教えていたというウソを信じて、関心してしまっている。
わたしのお母さんは学生の頃は優秀で美人で評判だった。
普通の家庭で育った母は大学で後におじいちゃんから会社を継ぐことになるお父さんと出会い、結婚した。
わたしが生まれた佐々木家は歴史があって、お父さんは大正時代から続く会社を経営している。

自分の部屋に戻り、勉強に取り掛かった。
その後は夕食を済ませる。
入浴を済ませたら、夜10時半まで勉強をする。
寝る前に明日の部活に持っていく一眼レフカメラの準備とバッテリーの充電を行ってから眠りについた。
忙しくも優雅な私の一日は終わり、またいつも通りの一日が始まる。

2.愛美 2023年4月19日

昨日すれ違ったあの人、人形みたいに美しかったなぁ。
彼女は子供の頃大切にしていたマリーという人形に似ていて、声を掛けたら「愛美ちゃん、久しぶり。」と返してくれそうだった。

今日は写真部の活動がある日で、一眼レフカメラを持ってきた。
しかし、今日は部活を休むことにした。
カメラを持ってきているので、昨日すれ違ったあの人の写真を撮ろうと昼休みの時間に思いついた。
写真を撮って、家で彼女の写真を見ながらマリーのことを思い出したかった。

学校が終わって真っ先に下校した。
ちょうど、春香も学校を出ていた。
春香は部活を休んで帰り道でCDを受け取りに行くため、ウキウキしていた。
「春香さん、さようなら。」
わたしは春香に簡単な挨拶を済ませて、急いでバス停に向かった。
少しでも早いバスに乗って、余裕を持ってあの人に会いたかった。

バスで目的地に着いて、あの人とすれ違った場所で待ち伏せをしていた。
しばらく待つと、彼女が現れた。
わたしはそっと。カメラをズームして彼女の姿を撮影した。
彼女を追いながらいろんな場所で撮った。

帰宅してから、わたしが子供の頃にマリーと遊んだ日々を思い出しながらマリーに似た彼女の写真を眺めていた。
写真に写った彼女は笑っていた。
アルバムからわたしが子供の頃にマリーと撮った写真を取り出して、今日撮った彼女の写真と並べて見た。
やっぱりマリーに似ていた。
彼女はマリーの生まれ変わりなのだろうか。
マリーが人間になって、わたしに会いに来てくれたのかな。
わたしはまるで人形のように美しい彼女の姿を楽しんでいた。
もし、今もマリーが居たらわたしの部屋でニコニコ微笑んでいたかな。

3.春香

今日は西洋堂書店で予約していたデッドハードのCDを受け取りに行くために、部活を休むことにした。
私は佐川君のジャケ写にワクワクしながら下校した。
途中で愛美ちゃんを見かけたけど、長い黒髪を揺らしながら速足で帰っていった。
愛美ちゃんに急用ができたのかな?

私は西洋堂書店に着いて早速、受け取ってきた。
その後はまっすぐ帰宅して、受け取ったCDをプレイヤーで聴いた。
今回の佐川様のソロパート、カッコよすぎて最高だった。
聴いた後はパソコンに取り込んでスマホに入れた。
明日の帰りも聴こうかな。

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