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ホラー小説「ドールハウス コレクション」第3話 唯一の友達

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注意喚起

暴力シーンやグロテスクな表現が含まれています。
この小説はフィクションです。実在の人物及び事件とは関係ありません。


9.愛美 2023年4月24日

昼休み、わたしは春香と校庭でゆっくりしていた。
春香は好みの男の子の話をしていた。
「私は佐川くんみたいなイケメンと付き合いたいな。」
「あ~私のことが好きな佐川くんみたいなイケメンでも現れないかな~」
春香はデッドハードの佐川新みたいな人がタイプだった。
「そういえば、愛美ちゃんはどんな人がタイプなの?」
春香はわたしに好みの男性のタイプを聞いてきた。
「わたしは恋愛には興味ないな。」
正直、答えに困った。
厳しい教育方針の家庭で育ったわたしは恋なんて考えたことが無かったから、好みのタイプなんて思いつかない。
「恋愛に興味ないなんてもったいないよ。」
「愛美ちゃんは可愛いから男の子にモテそうなのに。」
春香はこう返した。
身長が低いわたしって、可愛いのだろうか。
「春香さんも可愛いよ。眼鏡も似合っていて知的な印象があって素敵だよ。」
わたしも春香の魅力を伝えた。
実際、春香は大人しくて可愛い印象があった。
おそらく、春香はこの学校で一番の美少女だと思っている。
春香が可愛くて、写真の被写体を何度か頼んだことがある。
「えっ!?私って、可愛いのかな?」
春香は照れていた。
でも、そういうところが可愛い。
「私、照れちゃうよ!」
春香はわたしに抱きついてきた。
こういう明るくて笑顔が素敵なところも春香の魅力だ。
春香とはクラスと部活が一緒で意気投合して仲良くなった。
お互い、高校に進学して初めてできた友達だった。
「あっ。春香さん、そろそろ教室に戻りましょう。授業に遅れるよ。」
腕時計を見て、教室に戻らないといけないことに気づいた。
わたしと春香は一緒に教室に向かった。
教室に戻る途中、廊下で見覚えがある人とすれ違った。
彼女は前田美雪だった。
前田美雪の横には赤井詩音が居た。
彼女らは楽しそうに話しながら笑っていた。
あの時みたいに。

前田美雪は中学部の頃、同じクラスだった。
前田美雪は中学時代のわたしに仲良く接してくれた。
わたしのことを可愛いと言ってくれたり、描いた絵を褒めてくれたり、話し相手になってくれたりした。
赤井詩音はわたしを仲間と一緒にいじめていた。
わたしは発育不全で周りの子より身長が小さかった。
その頃、わたしは小柄な体型から周りから「小学生みたいだね」とか言われていた。
そのこともあって、わたしはいじめの標的になった。
わたしに対して「座敷わらし」などと悪口を言ったり、描いた絵を見て「子供みたい」とバカにしたりした。
赤井詩音とその仲間にいじめられていても、前田美雪はいじめっ子に反論してくれたりして、わたしの味方だった。
わたしはそう思っていた。
夏休みが近づいてきたある日の放課後、わたしは知りたくなかったことを知ってしまった。
美雪はウソをついていた。
仲良しだと思っていた美雪が私をいじめていた詩音と仲良く話していたところを見てしまった。
「本当に愛美って、ガキみたいで気持ち悪いよね。」
美雪からこんな言葉が出た。
あんなに仲良く振舞っていたのに。
「愛美って、この年になって小学生みたいに身長は低いし、子供みたいな絵を描いていて不気味だよね。」
「まるで、幽霊みたい。」
美雪はわたしの前で見せる姿とはまるで別人だった。
わたしと一緒に居るときより、ずっと楽しそうだった。
「あはは!幽霊、愛美にお似合いだね。」
詩音は楽しそうにわたしのことを侮辱して笑っていた。
「チビで不気味な愛美は孤独で可愛そうだから、付き合ってあげてるだけ。」
「正直、愛美の友達を演じるの疲れる。」
見たくないショッキングな光景だった。
美雪は詩音の仲間だった。
わたしはこの場からすぐ離れて、急いで家に帰った。
家に帰ったら、マリーに話しかけた。
「ねぇ、マリー。美雪のやつ私を裏切ったの。」
わたしはマリーの可愛くて美しく、忠実なところが好きだった。
わたしが悩んでいるときも苦しいときも、マリーはいつも笑顔でわたしを癒してくれた。
あぁ、またマリーに会いたい。
あの頃のように、一緒に遊びたい。

嫌なことを思い出してしまった。
あんなこと忘れて、楽しいことを考えよう。
春香は優しくて、わたしのことをいつも可愛いと言ってくれる。
マリーだって、生まれ変わってわたしに会いに来てくれた。
周りには優しい友達が居る。
わたしは幸せなんだ。

「さっき、すれちがったのって愛美じゃない?あのチビで根暗で子供みたいな子。」
「あの頃から変わってないね。」
「愛美の横に居る眼鏡を掛けた子もなんか地味そうだね。」
美雪と詩音はまた、わたしをバカにしていた。
しかも、春香のことも傷つけようとした。
高等部でわたしと別の科に進んだから、もう関わらずに済んだと思っていたのに。
忘れようとしたのに、あの二人はわたしの心の傷を抉ってくる。

午後の授業が始まり、わたしはいつも通り授業を受けていた。
しかし、昼休みにすれ違った美雪と詩音のことを思い出してしまう。
気分が落ち込んで、5時間目はぼんやり授業を受けていた。
気が遠くなるほど長い授業が終わると、すぐに春香さんに話しかけた。
美雪と詩音が言っていたことを聞いてしまって、傷ついてないか心配だった。
「ねぇ、春香さん。」と声を掛けた。
「愛美ちゃん?どうしたの?」春香はいつも通り笑顔だった。
どうやら、美雪と詩音の発言は気にしてないようだ。
「うふふ、話しかけただけ。」
春香さんは優しくて、これからも大事にしたい友達。
春香さんは裏切らないと信じている。
今まで、一番わたしに仲良くしてくれる。
ずっと一緒にいたい。
もう、二度と友達を失いたくない。

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