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2024年1月受験から見た、2月受験に出そうな問題(歴史編)

はじめに

「地理」編に続いて、「歴史」編をお送りします。もう時間はありませんが、2月に受験を迎える6年生の皆様のお役に立てればと思います。またこれから受験を控えている、現5年生、4年生にも役立つように書いています。お家の方だけでなく、受験生の方も読んでみてください。
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1 △年前問題

△年前の出来事については、各社重大ニュースに載っているので、まずそれをチェックすることが大切です。
2023年の△年前、2024年の△年前の2通りありますが、次の表に見るとおり、2023年の方が問題にしやすい出来事が多いです。そのためここでは2023年を取りあげます。
△年前問題は、100年前、50年前が出題されることが多いのですが、150年前は大きく社会が変化していた明治時代の初めなので、出る可能性が高いと思います。また20、30、50年前の出来事は、日能研重大ニュースにもサピにも載っていますが、なぜか40年前の1983年は載っていません。ですがこれも表のとおり、出題されそうな出来事があるので、押さえておきたいところです。

筆者作成

(1)150年前(1873年)

「徴兵令」と「地租改正」が重要です。内容と民衆の反応を確認しておきたいです。同じ年ですが、年表の通り徴兵令の方が先です。
次の大阪万博(万国博覧会)は2025年に予定されているため、万博についても出るかもしれません。明治初期の万博参加については、愛光が出題しています。日本が最初に参加したのは1867年の第2回パリ万博ですが、このときは幕末なので、江戸幕府、薩摩藩、肥前藩が出展していました。この回幕府は、代表として徳川昭武(徳川慶喜の弟)を派遣しました。そしてこのとき書記・会計係として同行したのが、新一万円札になる渋沢栄一です。渋沢はパリで最先端の西洋文明に触れ、経済についても見聞を広めました。大河ドラマ「青天を衝け」を見ていた人は、よく覚えているのではないかと思います。徳川昭武を演じた板垣李光人は、「どうする家康」でも、井伊直政を演じていましたね。また栄一とともに昭武に使えた杉浦譲を演じていたのは、「らんまん」で竹雄を演じた志尊淳でした。杉浦譲はのちに、前島密の元で郵便制度の確立に尽力します。

(2)100年前(1923年)

なんといっても「関東大震災」です。これについては各社重大ニュースを読み返しておきましょう。首都直下地震は、いつ起こってもおかしくないと考えられています。
2024年1月1日に起こった「令和6年能登半島地震」は、日程的に受験に出ることはないでしょう。ですがこの地震で、避難や救援に多くの問題があったことがわかってきています。この地震は出なくても、予想される首都直下地震にどう備えるか、何をどれくらい準備するか、どう連絡を取るか、避難所での問題は何か、といった問題が出ると思われます。また、ハザードマップ(地震、津波以外も含めて)も出題される可能性が高いです。自分の家のハザードマップを確かめておきたいところです。

NHKのハザードマップポータルです。画像をクリックするとサイトに飛びます。全国の、全ての種類のハザードマップに簡単にアクセスできます。


また、関連して、1995年の「阪神淡路大震災」、2011年の「東日本大震災」も確認しておきましょう。

(3)50年前(1973年)

「第一次石油危機」が出そうです。このときの総理大臣は田中角栄で、全国を高速交通網で結ぼうという「列島改造論」が進んでいました。東北、上越、成田新幹線の建設は71年にスタートしていました。本四連絡橋も起工式を迎える段階まで計画が進んでいました。しかし石油危機の結果、成田新幹線は(反対運動もあって)中止となり、本四連絡橋も1999年まで完成が遅れることになります。ガザ紛争と関係して、イスラエルの建国や四次にわたる中東戦争も出るかもしれません。

(4)40年前(1983年)

「ディズニーランド開園」「ファミコンの発売」は、いずれも直接出題されることはないと思いますが、日本のエンターテイメント産業や、コンピューターゲーム産業に大きな影響を与えた事柄です。これをヒントに、関連する事柄を答えさせる問題が出るかもしれません。麗澤1のリード文に、ファミコンが登場しています。

麗澤1大問2リード文

また73年当時首相だった田中角栄が、10年後にはロッキード事件で有罪判決を受けているのも象徴的です。現在も「政治とカネ」が問題になっていますが、この頃、そしてそれ以前からずっと問題だったのです。

(5)30年前(1993年)

この年の7月の総選挙に際し、自民党が分裂し、8月に非自民8党による細川護熙連立政権ができました。1955年以来、自民党がだいたい議席の3分の2、社会党が3分の1をとるという「55年体制」が続いてきましたが、この年に終わることになります。「55年」を選ばせる問題が出そうです。
また8月、イスラエルとパレスチナは「オスロ合意」を結びました。イスラエルはパレスチナの暫定自治政府を認め、パレスチナはイスラエルを国家として認めました。そしてヨルダン川西岸地区とガザ地区は、パレスチナ暫定自治政府が統治することになりました。1948年にイスラエルが建国して以来、初めてイスラエルとパレスチナが交渉を始めたのです。間に立ったのはノルウェー政府と、当時のビル・クリントン米大統領でした。現在はこの枠組みは守られておらず、それが2023年10月のハマスの奇襲攻撃の背景になっています。これは2025年受験で出るでしょう。

出典:Wikipedia 左から、当時のイスラエル首相イツハク・ラビン、アメリカ大統領ビル・クリントン、パレスチナ解放機構ヤーセル・アラファト議長です。


もうひとつ、この年は「梅雨明けのない年」で、記録的な冷夏となり、米の収穫が需要を200万トン以上も下回りました。収穫量は例年を100とすると全国で74、青森で28、岩手で30、宮城で37となりました。政府は米を「緊急輸入」することを決め、タイ、アメリカ、中国から米を輸入しました。一連の騒動を「平成米騒動」と呼ぶことも多いです。

(6)20年前(2003年)

イラク戦争が出るかもしれません。この戦争は、アメリカがイラクに対し、「核兵器などの大量破壊兵器を持っているのではないか」と疑念を突きつけ、結局アメリカを中心とした「有志連合」の国がイラクに侵攻したという戦争です。ロシアの行動が批判されていますが、アメリカも同じようなことをやったことは忘れてはなりません。また日本はこの戦争に対し、戦闘が一段落した後、復興のために自衛隊を派遣しています。

(7)地震関係

年表では●で示しましたが、1923年、1983年、1993年、2003年と、津波を伴った大きな地震が起きています。年表にはありませんが、1933年には大津波で3000人以上の犠牲者が出た昭和三陸地震、1943年には鳥取市が壊滅した鳥取地震、1973年には北海道に津波をもたらした根室半島沖地震が起こっています。1983年の日本海中部地震、1993年の北海道南西沖地震では、日本海側で100人単位で死者が出ています。日本海中部地震については、矢口高雄が「激濤(げきとう)」というマンガを描いています。津波の様子を生々しく、恐ろしくすぐれた画力で描いているため、電子で安く読める機会があれば読んでみるのもよいと思います。

また2025年、2026年受験を考えている皆さんも、日本海側に津波をもたらした二つの地震を知っておいた方がよいと思います。
「4年」も地震が多く、主なものでは1944年の死者1200人を超えた東南海地震、1964年の新潟地震があります。これも知っておいて損はないでしょう。

2 大河ドラマ問題

①大河ドラマと受験

大河ドラマが面白かった年や、話題を呼んだ年は、大河ドラマに関係する問題がよく出る傾向があります。印象的なのが2016年の「真田丸」(作・三谷幸喜)でした。これが面白かったためか、2017年受験では長野県や群馬県、大坂の陣に関する問題が多く出題されたのです。

近年の大河ドラマはおおむね好評で、注目度も高いです。そのため、大河ドラマに関連する問題も、ある程度の分量で出るようになっています。

②大河ドラマの出題パターン

大河ドラマに関連する問題は、おおむね3つのパターンで出題されます。
パターン1 受験年の前年に放送された大河ドラマ問題
2016年「真田丸」放送→2017年1、2月に出題、というものです。今年でしたら「どうする家康」ですね。2021年頃まではこのパターンが多かったです。
パターン2 受験年の大河ドラマ問題
2022年「鎌倉殿の13人」→2022年1、2月に出題、というものです。大河ドラマは、2年ほど前にタイトルと題材が発表されます。出題側も準備しやすいため、受験年度の大河ドラマに関係する事柄が出題されることが増えてきています。2022年は鎌倉ネタが本当に多かったです。
パターン3 過去の大河ドラマ問題
2024年「光る君へ」→2021年「青天を衝け」、2022年「鎌倉殿の13人」を出題、というものです。さすがに「青天を衝け」は1月受験ではあまり多くありませんでした。ただ「鎌倉殿の13人」を見ていれば楽に解ける問題は、いくつかの学校で出題されています。例えば芝浦工大柏1では、北条政子とその弟の生涯が出題されています。2024年受験生にとって、「鎌倉殿の13人」は、4年生の時に見ていた作品です。ですから大河ドラマを見るなら、4年生から、できれば3年生からが望ましいことが分かります。

③出題されそうな事柄

2023「どうする家康」
作品の主な舞台になったのは、岡崎(三河)、浜松(遠江)、駿府(駿河)でした。ですからこの三カ国、静岡県と愛知県に関わる事柄が出そうです。東海道新幹線、東名高速道路、東海工業地域、大井川、天竜川など、地理との複合問題も出そうです。リニア中央新幹線の工事が止まっている問題も出るかもしれません。
あと江戸城の問題も注意です。さすがに「今の皇居は皇居になる前に何に使われていたか」(立教新座1)のような極ムズな問題は出ないと思いますが、太田道灌が最初に築いた、家康の頃に大規模な土木工事が行われ、日比谷入江や下町の埋め立ても行なわれた、といったことは知っておくべきかと思います。

立教新座大問2問8

2024「光る君へ」
平安時代の文化、特に源氏物語と枕草子、かな文字、和歌集が出そうです。和歌集は万葉集(奈良時代)、新古今和歌集(鎌倉時代)も出る可能性があります。編者も確認しておきましょう。「13人」と関係して、金槐和歌集(鎌倉時代)が出るかもしれません。「源氏物語絵巻(大和絵)」や、「寝殿造」も要チェックです。これは大河ドラマ本編を見ていれば答えられますが、受験直前期は見ている暇もないでしょうですから、テキストや資料などで確認しておきましょう。

2022「鎌倉殿の13人」
1月受験で少しですが出ました。芝浦工大柏のように「見ていれば楽勝」というものもありましたが、そこまでドラマと関係するものは多くなかったと思います。鎌倉の地形の利点や、地形以外で鎌倉に幕府を置いた理由、承久の乱などをチェックしておくとよいと思います。

3 日本の戦争

1月受験では、広島サミットが非常に多く出題されました。そして核兵器と、日本の戦争、そして平和主義を考える問題も多く出ました。この流れは2月も続くと考えられます。
最も象徴的だったのが、東邦大東邦1大問3、「はだしのゲン」を題材にした問題です。これまで広島市の平和教育教材は、ずっと「はだしのゲン」を使ってきました。ですが2023年版から削除されました。削除の理由は、「当時の文化は今では分かりにくいから」ということですが、特定の団体が関わっていたという話もあります。これについては「クローズアップ現代」で取りあげられましたし、ネットにも記事があるので、探してみてください。東邦大東邦は、あえて「はだしのゲン」を使っています。これは学校としての強い意志表示です。

東邦大東邦大問3リード文

政治の問題と複合になると思いますが、日本が戦争に向かう流れ、原爆投下と戦争での敗北、そして朝鮮戦争とサンフランシスコ条約のあたりまでは、再確認しておくとよいでしょう。歴史マンガを使うのが楽だと思います。

4 おわりに

やっぱりこれだけの分量になってしまいました。分量が多すぎて、直前期に読み切るのは大変かと思いますが、受験生のお役に立てば幸いです。特に「関東大震災とその後の震災」と、「日本の戦争」を見返しておくことをオススメします。
役に立ったと思いましたら、投げ銭をお願いします。これだけの分量を調べ、書くには、多くの時間と資料代がかかっています。今後も質の高い情報提供を続けていくため、ご支援いただければ助かります。

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