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2021年時事予想問題 第1位 コロナによる問題② Uber EATS

はじめに

各社の重大ニュースに載っておらず、出そうな事柄といえば…ズバリ、Uber EATSです! 町中で見る回数が圧倒的に増えたUber EATS。使った方も多いのではないでしょうか? どのような仕組みで、どのような問題点を抱え、どのように受験に出るのでしょうか?

①Uber EATSのしくみ

Uber EATSは、
①飲食店
②配達パートナー
③注文する客
④Uber EATS

の4者によって成り立っています。

(1)注文する客は、Uber EATSのアプリやWebから、ネット経由で料理を注文します。料理の代金に加えて配送料とサービス料も払います。支払いはクレジットカードやPayPayなどのオンライン決済が基本です(一部地域では現金も可)。チップを追加することもできます!
(2)注文が入ると、Uber EATSは、飲食店に料理を注文し、近くにいる配達パートナーに配達の指示を出します。配達を受諾したパートナーがお店に向かいます。(図1)

①発注a

(3)料理ができあがると、配達パートナーは料理を受け取り、例の巨大な箱に入れ、配達します。(図2)

②配達と受け取り


(4)受け取ったら客は配達パートナーとお店を評価します。これで終了です。

実際に使ってみると分かるのですが、非常に手軽に注文できますし、曜日や時間にもよりますが、比較的早く届けてくれます。スマホアプリの操作性はヒジョーに悪く、スマホを投げつけたくなってしまいますが。

お金の流れは図3のようになっています。お店側が35%の手数料を払うのがポイントですね。そのためUber EATS経由で買うものは、店舗で買うより3割ほど高いのが一般的です。

③お金の流れ

②Uber EATSのメリット

それでは、Uber EATSにはどんなメリットがあるのでしょうか。
(1)店側
店の力だけでは不可能だった配達が可能になり、客層を増やすことができます。ネットでの情報公開もUber側がやってくれます。
(2)客側
それまで配達してくれなかった店の食べ物を食べることができます。なにより在宅のまま、スマホで手軽に注文できます。
(3)配達パートナー側
配達を受けるかどうかは選べます。空いた時間を可能な範囲で提供できるのです。また特に資格などは必要なく、体一つで始められます。コロナで減少した仕事を、手軽に補えるのです。しかも支払いは週単位で、すぐにお金を手に入れることができます。
このように、Uber EATSは、現在のコロナ禍に非常にマッチしたサービスだといえます。巨大な黒い箱をしょった自転車の人が増えるのもよくわかります。

③シェアリングエコノミーとは

Uber EATSの仕組みは、シェアリングエコノミーというビジネスモデルをもとにしています。人間の空いた時間(労働力)や空いた設備(運送能力など)を、ネットを使って効率的に運用しようというものです。
たとえば、車を持っている人は、24時間すべて車を使っているわけではありません。使っていない時間は、他の人に貸したり、他の人を有料で乗せたりすることができます。ですがその空き時間を他の人が知ることはできませんでした。
シェアリングエコノミーでは、車の持ち主は車の空き時間をサービス事業者に登録します。車を使いたい人は、サービス事業者から検索します。うまくマッチした場合、車の持ち主は追加の収入を得ることができますし、利用者もタクシーやレンタカーより安価に車を使うことができます。ネットの力を使えば、余っている施設・設備(車)を、有効に活用できる(安価に使える)のです。そしてシェアリングエコノミーとは、需要と供給を引き合わせる、マッチングサービスなのです。
もともとUberは、自動車のシェアから始まりました。この他著名なシェアリングエコノミーサービスには、民泊を探すAirbnb、Timesが運営するカーシェアなどがあります。また自転車のシェアリングなど、自治体がシェアリングエコノミーに進出する例もあります(横浜市、都内11区の東京シェアリング)。
これまでの経済は、BtoC(B2Cとも。Business to Customer、会社から顧客へ)が一般的でした。ですが近年では、CtoC(C2Cとも。Consumer to Consumer、消費者から消費者へ、個人から個人へ)にシフトしています。CtoCサービスの典型的な例はメルカリです。メルカリは、売りたい個人と買いたい個人を結びつけ、10%のメルカリ税(笑)を取る、マッチングサービスなのです。Uber EATSをはじめとする個人のシェアリングエコノミーは、まさにCtoCのサービスなのです。
そしてこの変化は、ネットが普及したからこそ、そして高速で便利なネット端末「スマホ」が普及したからこそ、可能になったことでした。スマホの普及は、経済の仕組みも大きく変えているのです。

④Uber EATSとシェアリングエコノミーの問題点

このように見ていくと、シェアリングエコノミーは、それまで活用されていなかった個人の時間や空いた資産を有効に活用できる、夢のようなサービスに見えます。また環境にも優しいでしょう。余計な設備投資をする必要がないのですから。例えばマクドナルドは、バイクによる自前の配達サービスを持っていました。ですがUber EATSなどの出前サービスを使えば、自前のバイクを減らすことができますし、CO2排出量も減らせます。
また配達パートナーも、会社や組織に縛られずに、自分の裁量で自由に仕事をすることができました。そのためシェアリングエコノミーは、「意識高い系」の人に注目されました。まさに「自己責任」で仕事ができる、新自由主義(ネオリベラリズム)にぴったりな働き方です。

ですが大きな問題点もあります。まずUber EATSの問題を挙げてみましょう。
(1)個人情報の問題。料理を注文した側は、必然的に配達パートナーに住所などの情報を知られてしまいます。
(2)料理注文者と配達パートナーがトラブルになったとき、サービス提供者は責任を負いません。「Uber EATSつけ麺事件」で検索してみるとよいでしょう。
(3)配達パートナーが増えた結果、以前のように稼げなくなっている。4月ごろは、Uber EATSの配達パートナーはたまに見かける程度でした。ところが現在は、頻繁に見かけます。コロナ禍が始まった頃、Uber EATSでは、結構いい金額を稼げたとききます。ですが現在は、そうはいかなくなっているというのです。

次に、シェアリングエコノミー全体の問題を挙げてみましょう。
(1)サービス提供者は、基本的にサービスの質に責任を負いません。サービス提供者が行なっているのはマッチングサービスなので、配達パートナーがどんな仕事をするか、客側がどんな注文をするか、基本的に関知しないのです。サービスの質の悪化はサービス提供者にも悪影響を与えるため、サービスの質を維持するための仕組みはあります(Uber EATSの配達パートナーの評価、メルカリの出品者の評価など)。ですがトラブルが起こった際、サービス提供者はサポートはしますが、根本的な責任は負わないのです。
(2)配達パートナーは個人事業主という立場で、Uberから仕事を委託されている立場です。雇用関係にはありません。そのため配達途中で事故にあったとしても、Uberは配達パートナーを保護しませんでした。同様に配達途中のUber EATSの配達員にぶつけられたとしても、Uber は責任を負いませんでした。最近は配達時の事故には保険が出るようになりましたが、それまでは「配達パートナーの自己責任」だったのです。

特に問題なのは(2)です。配達パートナーは自由に仕事ができましたが、その分なにも守られない状況でした。そしてサービスを提供する側は、なんの責任も負わずに、安い価格で労働者を使うことができたのです。
グローバル化した社会では、サービスにかかる費用(ここでは配達料)は、できるだけ安い方がよいと考えられます。例えば楽天などでも、つい「送料無料」を選んでしまうのではないでしょうか。シェアリングエコノミーは、人やものの空いた時間を活用することで、安くサービスを提供することを可能にしました。それは社会の効率を良くし、環境にも優しいことでしょう。ですがもう一方で、「自分は責任を負わずに、他者の持ち物を有効活用する」システム、「人を保護せずに(コストをかけずに)、安くこき使う」システムでもあるのです。
そしてこうしたシステムは、Uber EATS以外にも広まっています。例えばAmazonは、配達を個人事業主に委託するようになっています。Amazonが遅くなった、サービスが悪くなったと感じる人も多いのではないでしょうか? それは世界全体が「サービスにかかるお金はなるべく安くしたい」と思っているためですし、なにより私たち自身がそれを望んでいるからです。
社会主義の祖・マルクスは、こうした状況を「搾取」と呼びました。資本主義の世の中では、人の労働力をなるべく安く搾り取ろうとします。シェアリングエコノミーは、確かに自由に働ける場ではありますが、強烈な「搾取」の場でもあるのです。

⑤中学受験で出そうな理由

最近の受験では、社会に起こる様々な変化を「知っている」「説明できる」ことが求められます。特に社会的に大きな影響を与える変化や、問題点を抱えている変化については、対策を考えていくことが求められるでしょう。Uber EATSの増加は、コロナの影響によって起こった、まさに「目に見える」変化です。
また、Uber EATSは、私たちの経済のあり方や働き方を可視化します。働いた経験がなく、お金を使う経験も少ない中学受験生にとって、これまで書いてきたことは、少し難しかったかもしれません(リアルに感じられないでしょうから)。ですが、中学生になり、高校生になり、大学生になると、経済の仕組みや働き方と直面しないではいられません。それを考える上でも、Uber EATSは良い例となるのです。

予想問題

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