スライド1

アバター文化の過去、現在、未来

※この記事は、2019年12月14日に開催されたバーチャル学会2019の基調講演の内容を文字起こししたものです。登壇時に使用したスライド資料を含みます。バーチャル学会のホームページはこちら

自己紹介

 こんにちは!動く城のフィオと申します。
 本日はバーチャル学会2019の基調講演にお招き頂き、誠にありがとうございます。過去最高のバーチャル元年であった2019年、バーチャル学会発足!ということで、記念すべき場でこうやってお話させて頂けることを嬉しく思います。

スライド2

 改めまして、動く城のフィオです。バーチャル空間でドワーフとして生息している美少女おじさんで、現実世界には妻が一人と息子が二人おります。バーチャルマーケットという、バーチャル空間上のマーケットフェスティバルを主催しており、VR法人HIKKYのCVOも務めています。

 本日は、アバター文化の過去、現在、未来というテーマで、バーチャル空間上での生活に欠かせない「アバター」についてのお話をさせて頂きます。

アバター文化のはじまり

スライド4

 思い返せば2年前。2017年の年末頃から、バーチャルYoutuberブームと共にVRChatが急激に流行し、VR空間でアバターをまとって遊び、暮らし、生活するという新たな文化が生まれました。

スライド5

 私がバーチャル世界に転生したのは2018年2月。3DモデリングもVRもUnityも何も知らない所からアバターを作り、VRChatをはじめました。当時、アバター向けの3Dモデルというのはまだほとんど無くて、謳歌ミコちゃんやみここ等の無料配布モデルを使う、もしくは自作する、あるいはVRChatのPublicワールドに転がっている、出所の怪しいアバターを使うしか選択肢がありませんでした。
 大きな歴史の転換点は2018年6月。アークトラスちゃんというVRChatでのアバター利用を想定したモデルが販売され、「1080円ちゃん」として大きく話題になりました。ここから、自作勢がアバターを販売する、という流れが出来ていったように思います。

スライド6

 アバター利用が前提のモデルがある、ということがより多くの人に知られていけば、わざわざ規約違反のMMDモデルを使ったり、どこのゲームからぶっこ抜いてきたか分からないようなモデルを使う人は減るだろう、と思い「クリエイターの作品と、ユーザーの出会いの場」としてVケットを企画しました。

アバター文化の現在

スライド7

 以来、Vケットは「ユーザーにとっては新しいアバターやクリエイターと出会う機会」、「クリエイターにとっては作品発表の機会」として、年に2回、現在までに1,2,3と3回開催してきました。来年の4月にはVケット4が開催予定です。

スライド8

 出展者数は、Vケット1の約80サークルから、Vケット4では約1400サークルと、急拡大しています。わずか1年半ほどでこれだけの人数のクリエイターが生まれる、という点だけを見ても、バーチャル空間の可能性が見て取れるのではないかと思います。

スライド9

問題点

スライド10

 一方で、現在のアバター文化が抱える問題点も見えてきました。
 問題は無数にあるのですが、今日はその中から2つほどお話させて頂きます。

 まず、アバターや3Dモデルを販売する、というシーンにおいて「商品の情報が分散していること」が非常に大きな問題になっている、と考えています。
 例えば、自分のアバターに付ける髪飾りが欲しいとします。……どこで買おう?となるわけですが、現状、おそらくBOOTHで検索することになるでしょう。ただ、「髪飾り」と検索しても、ハンドメイドの現実の髪飾りも含めて、余計な情報がたくさん出てきてしまいます。
 アバター向けモデルの情報を得ようと思うと、「VRChatで誰かが着ているのを見て商品名を教えてもらう」もしくは「Twitterで作者がツイートしているのを見る」が中心になっていて、情報がどこかに溜まること無く、流れていってしまうのです。
 Vケットが1回開催されるごとに、3Dモデルが1000個から1500個程度この世に生まれます。アバターやアバターのアクセサリとして作られた3Dモデルは、現時点でも9000個程度あると推定しています。整理されていない9000個ものモデルの中から、自分好みのモデルを見つけるのは至難の業です。

スライド14

「売り物はあるのに、ユーザーが辿り着けない」状態になってしまっている。これが大きな問題の1つです。

 次に、「供給過多と使い道の不足」です。
 Vケットへの出展者数は、この2年で80から1400へと約18倍に増加しました。一方で、主なアバターの使用先であるVRChatの1日あたりの同時接続者数は、この2年で約8000名から約10000名と、1.3倍程度の成長に過ぎません。

スライド17

 ここで質問です!皆さん、アバターを何体持っていますでしょうか。
 100体以上持っている方もいるんじゃないかなと思います。
 VRChat以外にもアバターを使えるプラットフォームやアプリは徐々に増えてきつつありますが、アバターモデルの供給の増加速度に、使い道の増加が追いついていません。
 そもそも、アバターがたくさんあっても、それを使える自分自身は1人しかいませんし、アバターを購入してから使用できる状態にするまでにUnityを通さないといけなかったりと面倒な作業も多い為、積みゲームならぬ積みアバターが大量発生してしまったりもしています。

スライド20

「商品はたくさんあるけど、使い道が限られる」状態になっている。供給の増加に対して、人と用途の需要が追いついていない。これも大きな問題です。

問題に対する解決策(=Vケットが挑戦していくこと)

スライド21

 これまでと同じように、これからも、「バーチャル空間に生きるクリエイターさんとバーチャル市民の皆の為のものであり、誰のものでもない、皆で一緒に作り上げる、クリエイティブと出会いの機会であり続け」ます。

スライド23

 イベントの規模が大きくなってくると、目の届かない所も増えますし、お金を始めとした色々なパワーが働いてきたり、その割に未だに赤字運営で苦しんでいたり、賛否両論様々な意見も耳に入ってきます。そんな中でも、Vケットは設立当初の想いとビジョンを軸に据えて、バーチャル空間に生きる全ての人々にとって、よりワクワクする、より便利な存在を目指していきます。

 バーチャルマーケットは、これまではフェスティバルとしての機能が中心でしたが、この冬、実際に買い物ができる「ストア機能」をリリースします!

スライド25

 3Dモデルのカテゴリや用途、フルトラ対応、アイトラ対応、利用規約の種別などで検索、絞り込み、並べ替えをすることで、目的の商品に辿り着ける検索一覧機能。
 商品画面には、独自に開発した3Dビューワーを搭載します。ユーザーは、3Dモデルをくるくる回したり拡大縮小したり、アニメーションやシェイプキーを適用してみたりして、購入を検討することができます。

スライド26

 このストア機能の提供によってVケットが強く意識しているのは、アバター文化に寄り添うECサイトを作っていくということです。これにより、今あちこちに散らばってしまっている情報と商品を、ぎゅっと一箇所に集めてあげて、目的のものを探しやすくしたいと考えています。

スライド27

 商品をしっかり分類して集めることで、実は用途開発も一歩先に進みます。「3Dモデルを使いたいが、どこにもまとまっていないので使えない」企業さんやサービス、アプリが実はたくさんあるのです。Vケットが購入APIを提供することで、お預かりした商品を、外部アプリやVRプラットフォームのユーザーが購入し、使用することができるようになります。

 このストア機能、12月からクローズドβを行い、1月にβ版をリリースします。そこからVケット4に向けて、機能改善や機能拡充をしていきます。

スライド28

 実装する機能として、具体的には以下のようなものを検討しています。
 ①商品ツリー公認プログラム
 ②ワンオフ商品の非公開入札オークション
 ③商品ツリー公認テーラーメイド
 ④ワンオフアバターのオーダーメイド

スライド29

スライド30

 商品ツリー公認プログラムとは、あるアバターやブランドに対して、そのアバターの専用衣装や髪型などの子商品を登録することで、二次創作をシステム的に許諾して収益を分配する仕組みです。
 商品ツリーに登録された子商品は、親となるアバターのページからも購入できる他、将来的にはビューワー内で実際に着せ替えをして、気に入った組み合わせでまとめて購入をする、といった機能を予定しています。

スライド31

 ワンオフ商品の非公開入札オークションは、アバターの里親募集のようなイメージです。クリエイターさんが自分の自由に作ったモデルを最低金額と共にマーケットに公開します。それを見て、欲しい!と思った人が、支払いたい金額を入札します。この時、ユーザー同士は誰がいくらで入札したのかは分かりません。クリエイターさんは、期限までに入札された中から、落札者を決めて販売することができます。

スライド32

 商品ツリー公認テーラーメイド、ワンオフアバターのオーダーメイドは、クリエイターさんを指定して、自分専用の衣装やアバターそのものの制作を依頼することができる機能です。
 依頼が成立した段階で、依頼者からは全額前金でサイトが預かり、制作の途中経過はビューワーを通してやり取りし、依頼物が完成した段階でクリエイターに支払われます。制作と契約の仲介をすることで、依頼者とクリエイターは煩雑な契約や個人情報をやり取りする必要がなくなります。また、リテイク回数に制限を設けるなど、制作工数に応じた依頼料金になるようシステム化を行います。依頼者から入金されない・クリエイターからの連絡が途絶えてしまった、等の、双方のリスクも抑えることができます。

 このような形で、この先1年から2年をかけて、Vケットは、フェスティバルからストアへと進化していきます。将来的には、バーチャルマーケットのようなブース配置型の展示会を誰でも自由に開催することができるような「モール機能」も開発していきます。

スライド33

 もちろん、半年に1度のVケットは引き続き継続していきます。VRChatの他に色々な所でやってみたいな〜、ということも考えています。

 もう1つ、これはVケットと直接的な関係は無いのですが、アバターモデルや衣装、装飾品モデル向けの新しいライセンスを作っています。ライセンスの名称は「Uni-Virtuai License」通称UVライセンスです。

スライド34

 これまで、アバターとしての使用を想定した規約は前例がありませんでした。クリエイターさんが各々で頭を悩ませながら独自の利用規約を作成していて、ユーザーさんはそれを読み解く必要がありました。不正アップロードなども含め、利用規約にまつわるトラブルは後を断ちません。
 そこで、アバター文化に適した規約として、クリエイターさんとユーザーさんの双方にとって分かりやすく、使いやすいライセンスを目指し、UVライセンスを提唱することにしました。UVライセンスは、クリエイティブコモンズをリスペクトしつつ、クリエイティブコモンズでは制御し切れない部分を網羅しています。

スライド35

 また、UVライセンスは多言語展開を想定していて、クリエイターさんが自国の言語でUVライセンスの組み合わせを選択すれば、自動的に他言語でも同じ内容が表示されます。

スライド36

 現在、アドバイザーとしてアバターモデラーさんに規約案を見て頂きながら、弁護士さんの法務確認と英訳を進めている所です。UVライセンスは、1月に初版をリリースし、その後、クリエイターさんやユーザーさんの意見を取り入れたり、用途が広がるにつれて改善を加えながら、より良いライセンスを目指していきます。

理念「バーチャル空間を豊かにする」

スライド38

 これはVケットの開催理念です。豊かなバーチャル空間とは、人や、物や、情報やお金などがスムーズに流通していて、より暮らしやすい場所、もう1つの現実とも言える場所になることだと考えています。

 私がバーチャル空間でアバターをまとって生活するようになり、もうすぐ2年が経とうとしています。それ以前の私は、うつ病を患い、人前にも出られず、このまま部屋から出ずに死んでいくのかな、と思っていました。
 今も病気は完治していませんが、部屋から出ずともバーチャル空間に出社したり、フルリモートでVケットを主催したり、アバターを通じて社会との繋がりを取り戻すことができました。私は、アバター文化とバーチャル空間に救われたのだと思っています。また、アバター文化とバーチャル空間が発展していくことで救われるであろう誰かが、今もどこかにいるのだと思います。

 アバター文化を作り上げてきた多くのクリエイターさん、バーチャルな生活圏を作り出したVRChat社、アバターをまとって生きる未来を夢見て今も頑張っている、アバターやVR関連のサービス提供者さん、開発者さん。バーチャル世界に生きる人々に、心から感謝しています。そんな人々に恩を返す為、そして、もっと便利でもっとワクワクするバーチャル空間の未来の為に、Vケットは歩み続けていきます。
 まだまだ未熟な私、未熟なVケットではありますが、どうか支えて頂けませんでしょうか。皆様と一緒に、Vケットを育てていきたいです。どうかご支援のほど、よろしくお願いいたします。
 本日はご清聴ありがとうございました。

記事が参考になったら、サポートのご検討をよろしくお願いします!サポートは、より良い気づきを得られる記事を作れるよう、私自身の学びに投資します!