2024/03/02:2節 vsサガン鳥栖(駅前不動産スタジアム)

「気持ちが入ってない」「熱さが伝わってこなかった」など、負けた試合で言われがちなセリフ。
現地で見た感想としては、半分は同意。
もう半分はうまくいかないんだけど何をどう頑張れば良いかわかんなかったまま時間が経っちゃった印象。各々はその時間を一生懸命過ごしており「(わかんないから)もういいや」となっている選手は自分の目にはいなかった。
それを「気持ちが入っていない」とするかどうかは受け手の自由。感情豊かな振る舞いをする選手は見ている側を安心させてくれる時もあるが、その手の選手は札幌にはあまり多くない。
気付いたこと、強く残った印象から順に書いていく。


鳥栖は札幌が嫌がることをし続けた

1.ビルドアップの阻害
DAZN試合前インタビューで鳥栖の川井監督が「50:50のボールを力づくでマイボールにできるか」と語った通り、札幌のビルドアップのスタートポジション(2CB+GK or CB+ボランチ+GK or 2CB+ボランチ+GK)に対しマンマークで対応。 札幌は試合開始当初からビルドアップのスタートに苦戦し、強い向かい風の中GK・CBからロングボールを蹴らされた

向かい風の影響が顕著に出た前半は、GK・CBから前線に蹴ったロングボールは10本で1本しか繋がらず。試合を通して札幌は前線に14本のロングボールを送り3本成功、成功率は21.4%で鳥栖より10ポイント以上低い成功率となった。(DAZNを見返してカウント。守備時のクリアなどは除いて前線へ意図したロングボールが味方に繋がったかどうかをカウント)

ビルドアップを効果的に阻害し、フィジカルでボールを収めることが苦手な札幌にロングボールを蹴らせ、50:50の状況を作り出した上でマイボールにして見せた。

2.ボール奪取の瞬間を狙う
完全に個人の感覚だが、札幌の試合では何度か起こるお決まりのシーンがあって、ボール奪取直後に相手に渡してしまうシーンがそのうちの1つ。そして何度かそれを見た後、抜け出した相手選手の背中をみんなで追いかけるシーンを見るのもお決まり。
逆に相手に完全に崩されるシーンはあまり見ない。攻撃から守備への切り替えが遅くて相手に圧倒されるシーンも同様。相手にパスカットされる訳でもない。渡してしまうとしか表現できない。
もういい加減同じ試合を見飽きたので、ヒントを探すべくFootball LABを見たら面白いデータを見つけた。

2023シーズンの札幌は、高い位置(ハイミドル)からプレッシングした場合、守備成功率はハイが48.2%、ミドルが42.7%といずれもリーグ2位の成功率を誇るが、守備が成功せずシュートを打たれてしまった場合にゴールとなる確率(被シュート成功率)はリーグでもワーストクラス(ハイは下から数えて4位の19.5%、ミドルはワーストの15.8%。ハイ・ミドルの定義はこちら) 。
これは高い位置からのプレッシングで相手は苦しんでいるが、プレスを回避されると打たれたシュートは(他チームと比べ)高確率で入るを意味している。

前置きが長くなったが、鳥栖の1点目のシーンはまさにそれだった。
始まりは、鳥栖陣地内にいる川原選手のもとに札幌の馬場選手がパスカットしたボールが突然転がってきた。労せずボールを拾った同選手はその後シンプルにマルセロヒアン選手を走らせるスルーパスを出し、即GKと1対1となった。
このシーンでも札幌の選手は得点者を後ろから追いかけている。
得点には繋がらなかったものの類似シーンもいくつかあり、鳥栖はチームとして意図して狙っていたように思う。
鳥栖の山﨑選手が試合後インタビューで語った「奪ったあと、相手の陣形が崩れているというのは試合前のスカウティングでもありました。」は川井監督のプランが浸透している証拠。奪ったあと崩れているチームに対し、整う前にシンプルに急所を突く攻撃は非常に効果的だ。

その他、鳥栖が行っていた施策があったら教えてください。

札幌にサボってる選手はいないが、弱みはバレていた

札幌も鳥栖同様、ビルドアップの阻害として2CB+1ボランチにマンマークを仕掛けている(07:52、12:14などから見て取れる)。さらにビルドアップの阻害回避のセオリーである1枚飛ばしてサイドへ逃げるパスにも目を光らせており、継続した守備戦術の浸透度を示した。

特に12:14のシーンは鳥栖GKにロングボールを蹴らせ、岡村選手がカットしたボールを浅野選手がシュートまで持ち込んでおり、昨年から継続している前からのプレッシングは継続した強みと言える。
直後のゴールキックのビルドアップ阻害も成功し、鳥栖CBにロングボールを蹴らせて馬場選手が回収。そこから押し込み続けようとした矢先に、川原選手にボールが転がり失点する。札幌の強みと弱みが連続して出たシーンとなり、鳥栖は弱みを的確に突いてきた。

23:28のシーンでは、阻害は成功し鳥栖CBに無理な縦パスを蹴らせ、馬場選手がタイトなマークからボール奪取後小林選手に繋いでいる。

54:27のシーンでは、ビルドアップの阻害が遅れ、鳥栖CBからパスを展開されてしまう。後手に回って縦パスを通されるが、岡村選手がパスカットしダイレクトで前線へ送るが相手に渡ってしまう。パスカットのため右サイドに釣り出された形の岡村選手のカバーに入っていた中村選手がセンターサークルで相手FWを倒し2枚目のイエローをもらい退場。
カードの判定は不運な印象も、一発で入れ替わられてしまった対応は成長の余地があると言える。

結果的に、前からのプレッシングは一定の成果を発揮し、成果を出す途中に出た弱みが失点と退場に繋がってしまった。

最後は気持ちの勝負なら、
最初から最後の手前までは戦略の勝負

今回一生懸命書いたビルドアップ阻害への対処ボール奪取直後のボールロストは昨シーズンからの継続課題であり、一つ目は攻撃力、二つ目は失点にそれぞれ直結している。
メンバーが大きく変わらない以上は、具体的な解決策がなければ改善の余地はない。昨シーズン大勝した相手はこの2点を札幌相手にも関わらず疎かにしてきた。

今回足りなかったのは本当に気持ちなんだろうか。
この2つの課題を特定の選手の活躍で解決したのは見たことがあるけど、昨シーズンから戦略で解決できたシーンを見ていないと思う。

セオリーとしてビルドアップ阻害に対してダイレクトプレーで対抗する手はあるが、選手間の距離が離れる上にダイレクトプレーを組み合わせるとなると難易度は大きく上がるし現有戦力で現実的に使える手とは正直思えない。

奪取直後のボールロストも、ダイレクトで奪ったボールを繋ごうとしなければ、安全に後ろに下げてしまえば、ロスト自体は回避は出来る。ただボール保持の時間を長くして相手陣地に押し込んで攻め続けたいチームにとって、それをしたくない気持ちもわかる。
相手にダメージを与える効果的なポジションを即座に取る、そこに正確なダイレクトパスが供給される。結局のところそれは連携であり、成熟には時間が必要だ。
昨シーズンから続いた課題にまだ時間が必要ならいつまでかかるんだろうか。我慢の時間はまだまだ続く。

雑感

抜け出された相手の背中に対するファールは
とにかく印象が悪い

個々のジャッジに関して特に感想はないが、テレビで見る以上に現場で見るそれは本当に印象が悪い。

「試合の終わらせ方」にチームの色が見える

可能性を否定する訳ではないし試合中に諦めた訳でもないが、あくまで確率論として、ビハインドの状況や早い時間で退場は高確率で負ける。(だからこそ、味方退場後に逆転した試合は伝説として語り継がれる)

その際「このままのスコアで試合を終わらせるか」「スコアを気にせず得点を取りに行くか」など、チームとして目指す試合の終わらせ方が見える。札幌は結果的に大差となる試合が多い。(2022シーズンvs柏レイソル(札幌ドーム)など)
個人的にはリーグ戦序盤なら0-1も0-8も変わらないと思っているので、点差についてはあまり興味なし。

金子選手以来の「ドリブルでポケット侵入できる選手」が出てきた

WBの選手に欠かせない能力の1つ(と個人的に思っている)単独での縦突破でポケットに侵入できる選手を久しぶりに見た。
切り返してのクロスも悪いとは言わないが、それは縦突破が主軸になっている場合のみ。必ず切り返す選手に相手DFは苦労しない。特に相手からすると、自分のマークとボールの同一視が楽なので、よほど精度が高いクロスでなければチャンスが生まれる確率は低い。

3割が怪我人

30人中10人が怪我しているとのこと。スタメン+ベンチ7人を除くと2人しか残らないし、ユースに選手借りないと紅白戦すら出来ない。
怪我には個々の理由があるし、疲労が原因とは思えない怪我も含まれている以上、外から原因の特定は不可能。
今後は夏に向けて強度が上がり続けるのでこれからも怪我人は出るだろう。
期限付き移籍の選手も多くない。
補強したつもりが補充もままならない状況になってしまった。

攻撃面まで手が回らなかった

もやもやした気持ちが収まらず、夜中に見逃し配信を見ながら書き溜めたメモを起こしていったが、気付いたことから順に書いたので攻撃の話が全然なかったし、とにかくすごい疲れた。その分悔しさを思い出す暇もなかったので助かった感じもある。
この試合は札幌名物の相手最終ラインに5人並ぶが見られなかったように思うが、映ってないので確認のしようがない。現地では縦に見ていたので遠近感がなく、そこら辺はまったくわからなかった。

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