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エロ化するコンテンツと欲望


近年のマッチングアプリの広告は、モデルの女の子がちょっと水着だったり、ベッドの上で髪を結いていたりと、多少「エロ」を想定させる傾向が非常に増えてきた。

それはなぜかというと、単純にエロという媚薬を加えると、クリックが数倍に跳ね上がるというインパクトを伴っていて、ある種のネット広告における麻薬のような形で乱発されることがとても多くなってきたように思う。
  
 
例えば、普段ならダニエルの文章は長文だから読まないけども、タイトルに「エロ」という2文字が入っていたという理由だけで「もっと見る」ボタンを押してしまった罪深いそこのあなた。

その事実は、もはやエロというコンテンツがどれだけ強烈かということを物語ってしまっている。

皆が台風の情報をSNSで投稿し合う中で、突如出現したこの「エロ」というタイトル。

それはまるで台風の目のように、あなたの全神経を引き寄せたのである。
 
 
 
あ、ごめんなさいね、うまいこと言っちゃって。  
    
    
 
では話を戻すと、エロとそうでないコンテンツと、どこまで効果の差が出るのだろうか。

例えばWeb上のバナー広告。
  
 
私ダニエルが楽天市場のプロデューサー時代、毎週数本、100万人規模のユーザーに対して、広告のメルマガを作成し配信していた事があった。

楽天の会員自体は1億ちょい。

その中でも、超アクティブなユーザー100万人のみを抽出して送っていたので、おそらく規模と質と売上でいうと、当時日本でも1、2を争うメルマガだったのではないかと思う。
 
  
そして、ある意味このメルマガはネットにおける購買心理の実験場的な場でもあった。

この見出しをつけると開封率が上がる、この時期にこの商品を乗せるとやたらクリックがされる、クリックされるだけで売れないコンテンツ、などなど、データから見て面白いほど人間の心理が浮き彫りになった。
 
 
 
そして、肝心のエロの威力に関して。
 
 
ある日、ダニエルはそのメルマガのコンテンツに、実験的にグラビア写真集の商品ラインナップを差し込んでみた。

いつもは商品を入れている一部の箇所に、楽天ブックスの取り扱い商品であるグラビアの表紙を入れてみたのである。
 
 
そして、この実験、次の日結果を見て唖然とすることになる。


なんと、配信数やセグメントもいつもと同じにも関わらず、グラビアコンテンツだけが、いつもの20〜30倍のクリックが取れていたのである。
 
 
その後、何回か同じように試してみても、結果は同じ。

エロというコンテンツが、どんなにお買い得で安い商品よりも、格段にクリックを集めてしまったのであった。
 
 
つまり、人目をはばからないネット上において、それほどエロの威力が増すという事が分かるだろう。
 
 
そして、マッチングアプリの広告をはじめ、インスタでモデルがやたら水着姿になりたがるのも、これと同じことが言えるのではないだろうか。

ある程度、ネット上の数値が見える時代にあって、エロが強力というのは、コンテンツの提供側は皆気付き始めている。
 
 
その証拠に、インスタグラマーのアカウントを覗いてみるといい。普通のパンケーキの投稿と、水着の投稿では、いいね数が数倍違っているのが目に見えて分かるだろう。

ある日ふとアップしたビーチでの水着姿ににいいねがいつもの数倍集まっていることに中毒性を覚え、いいね欲しさに水着写真をアップしまくるアカウントに変貌していくという傾向は最近特に多い。
 
  
 
そして、このコンテンツのエロ化は、単なるエロだけの話ではないと思っている。
 
 
例えば、「スマホ1つで1億稼げる」とか「飲むだけで-10kg」とか「自由な時間を手にいれる」などといったキャッチフレーズ。

これもある意味で「エロ化」と同じ構造を取っているんじゃないだろうか。

お金が欲しい、自由になりたい、痩せてモテたい。
  
 
つまり、これらの根源的な人間の欲望に対し、分かりやすくて飛びつきやすそうなフレーズやデザインを提示する。

そして、クリックや売上が短期的に上がって喜ぶ。
 
  
そこに、創造性やアイディアは皆無だ。
  
  
 
  
 
こうやってみていくと、もしかすると数値やデータ、KPIといった単なる表面上の成果だけを追ったその行き着く先は、ものすごく下品な貪りの世界に行き着くんではないかと思う。 
  
提供される商品やサービスは、人間の欲望にうまくフックするようにテストされ、AIがその提案を最適化していく。

そこは、もはやコンテンツの奴隷となったオンライン家畜養成場のようなところで、そこに人間の望ましい世界を見ることはできない。 
 
  
 
数値を用いるのはビジネスをする上で当たり前の事なんだけども、ビジョンのない短絡的な数値は、我々を獣化させていってしまうんだと思う。
  
 
   
 
 
P.S.
エロと楽天市場でこっそり売れていく商品の相関などは、実は今月発売の本の中でもうちょい詳しく書いていますけども、罪深い方は引き込まれるのであまり読まない方が良いかと思います。

 ○10月16日発売
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