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クリームソーダ営業戦法


あなたは今、先方とここ一番の打ち合わせのため、少し落ち着いた雰囲気の喫茶店にきている。

高鳴る鼓動、入念な脳内シュミレーション。

期待と不安が入り混じった感情が錯綜する。
 
 
さあ、この超重要な局面において、あなたはどんな飲み物を注文するだろうか。
  
 
 
「ブラックコーヒー」
 
 
たいていの営業マンは、そう言うだろう。
 
多分、正解だ。

100人営業マンがいたら99人がそれを頼むであろう。
 
 
せめて、少し外しても紅茶までが限界だ。
 
 
  
  
 
しかし、ここ最近のダニエルの戦法は違う。
 
重要な打ち合わせであればあるほど、全くビジネスの場に似つかわしくないドリンクを頼む。
 
 
 
 

 
そう
 
 
 

 
 
「クリームソーダ」だ。
 
 
 
 
 
 

クリームソーダ。

しかも、いかにも漫画に出てきそうな鮮明な緑を身にまとったやつを頼む。
 
新卒の営業マンがお客さんの前で頼んでいるところを上司に見られたら、間違いなく怒られるに違いないアイテムだ。
 
 
しかし、時代はクリームソーダなのだ。

今、密かに注目されている飲み物。

それは、このエメラルドグリーンの神秘的な液体なのだ。
 
 
 
「クリームソーダ営業戦法」
 
 
 
この最強の営業術をまだ知らなかったあなた。
 
 
大丈夫、ご安心を。
 
 
今からこの画期的な方法を、あなただけに特別に紹介したいと思う。

 
この戦略は至ってシンプルだ。
 
重要な打ち合わせほど、クリームソーダを頼むと飛躍的に成約が高まる。
 
ただそれだけだ。
   
 
 
理由は2つある。
 
  
 
1つ目。

それは、この魅惑の飲み物が持つその色だ。

なぜなら、このクリームソーダのビビッドなグリーンには、どうやら人の脳に働きかける特別な効果があるらしい。

この色は、人の精神状態を安定させ、脳内エンドルフィンの働きを活性化させる。

そして、何か大きな決断をしようという気持ちになるよう、脳に作用するのだそうだ。
  
 
マサチューセッツ工科大学の最新のラットを使った実験では、このクリームソーダに使われる緑色3号を複数回見せた後のラットは、そうでないラットと比べ、直後に目の前に出されたレバーを4.7倍多く引くという結果が出たそうだ。
 
つまり、これを応用すると、先方の前でクリームソーダの緑を見せる。

すると、先方の頭には脳内エンドルフィンが流れ、大きな決断をする体制が瞬時に整う。
 
 
結果として、営業の成約率が格段に上がる。

そういうスキームだ。  
 
 
 

そして、クリームソーダ戦法にはもう1つの効果もある。

それは、このビジネスの打ち合わせというクソ真面目な局面において、突拍子もなく出てくるその「お子様ドリンク感」にある。
  
 
例えば、通常はコーヒーを注文するのが無難とされている状況で、こちら側がクリームソーダを注文したとする。
  
 
すると、先方は必ずこう思うだろう。
 
  
 

「おいおい、冗談だろ。」
  
 
「何こいつはクリームソーダなんて頼んでやがるんだ。全くナメてやがる。」
 
  
 

直後に走る戦慄と緊張感。
 
 
そして、運ばれてくるクリームソーダ。
  
 
そんな先方の厳しい目線をもろともせずに、まずは一撃を食らわしてみる。
 
  

 
「チュー。」
 
 
そう、手始めとして、音を立ててそのクリームソーダを一口飲んでみせるのだ。
 
 
ここで、先方の怒りのボルテージを意図的に最高潮に高める。ここが重要なポイントだ。
 
 
そして、次の瞬間こう言ってあげるのだ。
 
   
 
 
 

「あのー。このソーダの上に乗っかってるアイス、一緒に食べませんか?」
   
 
  
 
 
 
出たァーーーーー!
最強にして最大の決めゼリフゥーーーーー!

 
  
 

 
先方:「ハァ???」
 
  
 
 
 
最高にナメきったシチューエーションで放たれるこの一言に、先方はもはや怒りを通り越して混乱状態に突入する。
 
 
そして、立て続けにスプーンでアイスをすくい、有無を言わせず先方の口にそっと運んであげればいい。
 
  
 

スッ。
   
 
 
困惑する表情の中、口元に運ばれるアイス。
 
パクッ。
 
すると、先方から決まってこんなリアクションが返ってくるのだ。
 
  
 
 
「な、なんだ。お、おい、うまいじゃないか。」
  
 
一瞬、舌の上にひんやりと広がるアイスの冷たさ。そして、メロンの風味がそっとするアイス。

そのハーモニーに全てのボルテージが鎮静化される。
  
 
 
 
 
 
そして、先方は気づく。

 

「はっ?この光景は?」
 

「おい、どこかで見たことがあるぞ?」
 
 
 
いい大人が2人して、アイスを分け合っている。
 
なんだか懐かしい。
 
  
 
 
 
ああ。

そうか。

そうだ。
 
 
 

 
これが、子ども時代だ。
  
  
 
 
 
忘れていた。
 
  
ああ、完全に忘れていた。
 
  
俺が、馬鹿だった。
  
 
子ども時代は、こうやって友達とアイスを分け合っていたじゃないか。
 
 
仕事、本音、建前、そんなものは関係なしに。
 
 
ああ、俺は何を今まで焦っていたんだ。
 
 
富、名声、権力。
 
 
そんなものに俺は縛られていたんじゃないのか。
 
 
ああ、俺が馬鹿だった。 
 
 
大切なものはすでに目の前にあったじゃないか。
  
  
そして、先方の目に涙が浮かぶ。
  
  
震える声で口を開く。
  
 
 
 

「あ、ありがとう。。ありがとうダニエル君。俺は本当に大切な何かを忘れていたよ。。ああ、馬鹿だった。気づかせてくれて、どうもありがとう。」
   
 

  
手を取り合う2人。

ダニエルも気づくと、もらい泣きをしてしまう。
 
 
そして、優しく先方に語りかける。
 
  
 
 
「大丈夫です。これから一歩ずつ前を向いて歩いていきましょう。」
 
 
   
 
 
この後、商談がどうなったかは言うまでもない。
 
 
なぜなら、2人はクリームソーダによって、本当の「アイスブレイク」ができているのだから。
 
  
 
↑結局これが言いたかっただけ。  

 
   
 
 
と、そんな最強の必殺営業技があったらいいなあと、何年振りかにクリームソーダを飲みながらふと思いましたとさ。

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