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ひな祭りと老夫 2024/03/03 日記

いつも通りの日曜日。
午前中に、溜め込んだ家事を終わらせて、お昼より少し早い時間にスーパーに向かう。

駐車場で老夫とすれ違った。
「甘いものなんて食べません」と顔に書いてあるような精悍な皺を刻んだ彼は、いかにも甘そうで子どもが喜びそうな可愛らしいドーナツがたくさん入った大きなケースを、それは大事そうに両手で持っていた。
老父と、彼がその手に持っている商品との違和感というかコントラストが強くて、印象に残った。

店内のお惣菜コーナーが、ピンク色と桃の花で装飾されていて、やっと気づいた。
今日はひな祭りだ。
手巻き寿司やちらし寿司、パーティ用のオードブルが、ひな祭りらしく桃色の包装やシールで装飾されて華やかに並んでいる。

その中のスイーツコーナーで見つけた。

さっき老夫が持っていた、一口サイズの丸いドーナツがたくさん詰め込まれた大きな容器。
ストロベリーチョコソースの上に、カラフルなチョコのカラースプレーが散らされて、スイーツコーナーの中で一際可愛く見えた。
小さい女の子は釘付けで、お父さんにおねだりしていた。
一人で食べるにはとても多くて、多分5人か6人くらいで食べるのを想定されたサイズ。

もしかしてあの老夫は、これから孫に会いに行くんじゃないだろうか。
息子か娘家族から招待されて、小さな孫娘の桃の節句にと、精一杯一生懸命選んだお土産だったんじゃないだろうか。
そう思ってから、今日の快晴と気温が理由じゃない温もりが、ふわりと胸に広がった。

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