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Ozone 11 使い方ガイド

音楽プロデューサー/エンジニアのPIANO FLAVAです。

マスタリング・ツールの「iZotope Ozone」は愛用者の多いプラグインですが、先日バージョンが11になり、機能面でもパワーアップしました。

僕は普段ミキシングの仕事をさせてもらっているのですが、マスタリングまで任されることも多く、Ozone 11を活用させてもらっています。

というわけで今回は、Ozone 11の基本的な使い方をまとめてみました。

ご参考になれば幸いです。

OzoneはAdvanced、Standard、Elementsの順に機能が充実しています。
以下、Ozone 11 Advancedで解説を進めます!

画面説明

①グローバルヘッダー: Stem Focus(後述)、Master Assistant(後述)、プリセット、Undo History(後述)、オプションなど。

②シグナルチェーン: 処理モジュールの内容と順序を調整します。

③モジュール・インターフェース:各モジュールの操作画面。モジュールによって異なります。

④I/Oパネル: 入力/出力のゲインとメーター、ディザー、試聴機能(後述)など。

Stem Focusについて

従来のマスタリングでは、すべてのエフェクトは2mix全体にかけていましたが、Ozone 11では、ボーカル、ドラム、ベースそれぞれにエフェクトを適用できるようになりました。

かなり画期的な機能だと思います。

Undo Historyについて

Ozoneでの操作履歴が見れる機能。任意のタイミングに戻ることができるので、異なるパラメータの聴き比べができます。

Master Assistantについて

AIが曲を解析して、マスタリングのパラメータを自動で設定してくれる機能。

使い方

  1. DAWのマスターチャンネルにOzone 11を追加します。

  2. ヘッダーのマスターアシスタントタブをクリックし、分析を開始します。

  3. DAWで曲を再生します。

  4. 曲の分析が終わると、自動でパラメータが設定されて、Master Assistantコントロールビューに切り替わります。

Master Assistantコントロールビュー

①ヘッダー:マスターアシスタントビューとモジュールビューの切り替え、ゲインマッチ、バイパス、再学習(Master Assistantのやり直し)

②ターゲット・ライブラリ:Master Assistantが作業する全体的なターゲットを変更できます。マスタリング中の曲に近い音楽ジャンルを選びましょう。

③トーン・バランス:EQセクション。青色の線は、ターゲットの(=理想の)周波数バランス。白色が現在の曲の周波数バランスです。

④ラウドネス:マキシマイザーセクション。どれだけ音圧を上げるか。

⑤ボーカル・バランス:ボーカルの音量を上げたり下げたりできます。

⑥エクストラ:Dynamics Match(Impactモジュールの効果量)、Width Match(Imagerモジュールの効果量)、Clarity Amount(Clarityモジュールの効果量)、Stabilizer Amount(Stabilizerモジュールの効果量)

ゲインマッチは、Ozoneの出力レベルを入力レベルに合わせてくれる機能です。一般的に音が大きいほど良く聴こえてしまうので、正確な聴き比べにはこの機能が必須。

Master Assistantで最大の効果を得るためには、曲の最もラウドな部分(一般的にはサビ)を8秒以上再生します。

個別モジュールについて

Master Assistantを使った後、モジュールビューに切り替えて、各モジュールのパラメータを調節したり、新しいモジュールを追加したりするのが一般的です。

Ozone 11 Advancedには全部で17個のモジュールがありますが、よく使うモジュールを厳選して解説します。

パラメータが同じでも、モジュールの順番によって最終的な音が変わってくるので、ときどき順序を変えて聴き比べるのがオススメです。

Maximizer

音圧を上げるためのマキシマイザー。とても重要なモジュールです。

使い方

Master Assistantを使ってすぐの状態では、音圧が高すぎるので、「Gain」を下げて、音が圧縮されすぎないようにしましょう。「Soft Clip」も効果が強すぎることが多いので下げます。

マキシマイザーの動作モードである「IRC (Intelligent Release Control)」をいろいろ変えてみて、聴き比べるのがいいと思います。

画面説明

①モジュール・ヘッダー:マキシマイザーを通す前と後の違いを聞ける「Delta」が便利。

②メイン・コントロール:「True Peak」をオンにすると、絶対にピークを超えることがなくなりますが、音も変化してしまうので注意。「Character」は、左に動かすとアグレッシブなサウンド、右に動かすとスムーズなサウンドになります。

③セカンダリー・コントロール:「Upward Compression」は、ピークのゲインを下げるのではなく、静かな部分のゲインを上げるタイプのコンプ。「Soft Clip」は、音のエッジを強調するクリッパー。Light、Moderate、Heavyから選択します。「Transient Emphasis」はドラムなどのトランジェントを保持したいときに。

④メーター:スペアナ、ゲイン・トレース(上側がリミッターによる減衰、下側がUpward Compressionによるブースト)、ゲインリダクションメーター(リミッターのかかり具合)

IRCは、曲に合わせて設定します。IRC4が最も新しい技術ですが、「IRC Low Latency」も意外と音が良かったりします。

Equalizer

オーソドックスなEQ。

2mixの状態にもよりますが、ローエンドをハイエンドを持ち上げて、ミッドの音が溜まっている部分を削ることが多いです。

デフォルトの「Analog」だとミニマムフェーズで動作しますが、リニアフェーズの「Digital」に変えることもできます。

Dynamics

最大4バンドのコンプ/リミッター。ミックスのダイナミクスを調整できます。

パラメータが多いので、プリセットから選ぶのもオススメです。

Clarity

Ozone11で新しく追加されたモジュール。

レゾナンスを調整し、音のマスクを取り除いてくれるというもので、抜けの悪いミックスのサウンドをクリアにすることができます。

またLUFS値が同じでも、Clarityを使うと聴感上の音圧は大きくなるようです。

「Tilt」バーを右に動かすと明るいサウンドに、左に動かすと暗いサウンドになります。

Exciter

最大4バンドのサチュレーター。オーバーサンプリング対応です。

バンドごとに以下のモードを選択できます。

Analog: トランジスタ・タイプの奇数倍音のサウンドをエミュレートし、オーディオにドライブ感のある重厚さを与えます。

Retro:ゆっくりと奇数倍音が減衰するタイプのトランジスタ特性がベース。

Tape: アナログ・テープを飽和させる際に発生する奇数倍音がベース。明るいサチュレーション・サウンドです。

Tube: ダイナミクスやトランジェント・アタックを強調する、色付けのあるサウンド。

Warm: 素早く減衰する偶数倍音のみ発生させます。

Triode: 真空管回路を半分だけモデル化し、リアルなアナログの暖かみを実したもの。

Dual Triode: 真空管を使用したフル回路をモデル化したもの。よりウォームで激しいオーバードライブ・サウンド。

Post Filter

意外と大事なのが、このポストフィルター。

エキサイターを使うと高音に嫌味が生まれることも多いですが、それを防いでくれます。

Imager

ミックスのステレオ幅を調整することができるモジュール。

各バンドごとにソロで聞けるので、聞きながら手動で調整しましょう。

Master Rebalance

ボーカル、ベース、ドラムの音量を上げたり下げたりできる、とても便利なモジュールです。

特にボーカルは、2mixによっては大きすぎたり小さすぎたりするので、これでボーカルの音量感を調整します。

一度にひとつの楽器しか音量を変えられないので、例えばボーカルとドラム両方上げたいときは、「Master Rebalance」プラグインをDAWに追加しましょう。

試聴機能について

「◯が2つ重なったアイコン」を押すと、モノラルで聴くことができます。

「↔」のアイコンは、LRの音をスワップして(右の音は左から、左の音が右から)聴けるというもの。自分の耳の癖から離れて、客観的に曲の左右のバランスをとれるので、よく使っています。

「Codec」は、mp3とAACの圧縮音声フォーマットになったときの音を予測してくれます。

「Dither」は、音が小さい箇所の歪みを少なくするために、少量のノイズを信号に加える技術です。ビット数24bitの曲を16bitで書き出す必要があるときなどに用いられますが、個人的にはあまり使わないです。


iZotope Japan 公式サイト

iZotope 公式サイト


Ozone 11 Advancedは、単品購入などのほか、サブスク「iZotope Music Production Suite Pro」でも使えます。Neutron 4やRX 10 Standardなども一緒に使えて、月額21.99ドル(約3,500円)です。


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