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バルトークの2つのヴァイオリンのためのデュオから学べること

ポリフォニーの宝庫

先日、ふと思い立ってIMSLPでバルトーク作曲「2つのヴァイオリンのための44のデュオ」の楽譜を見てみました。昔、とあるヴァイオリン教室のおさらい会で耳にした記憶があり、今、バルトークでの講座を準備しているのもあって何かいいヒントになるものはないかと思って、YouTubeで聴きつつ眺めていました。
思い起こせばこの中の1曲は、長男のチェロ学習段階で十二度下に書き換えられたものが出てきたな、と懐かしさも伴う時間となりました。
そして、そのポリフォニーの美しさにうっとりする時間でもありました。
ミクロコスモスでも感じていましたが、このヴァイオリン曲集もポリフォニー入門にはうってつけです。

元々教育的目的で書かれた作品

ミクロコスモスはピアノ学習者のための作品ですが、このヴァイオリンデュオはヴァイオリン学習者のために書かれたものです。依頼者がドイツのヴァイオリンの先生だったとのこと。
その依頼内容が「伴奏付きの作品はいらない。独立した二声の作品を」「対位法的な音楽実践」というものだったのが頷ける作品集です。

そもそも旋律楽器はメロディーを弾くのが主たる楽器であるため、対位法的な書法に触れるのが遅くなりがちです。和声的な経験もなかなか大変ですが、これは伴奏を聴くことで初級段階から解決の道がありますが、対位法は二声(またはそれ以上)が同等であることもあり、まずは同じ楽器で聴いて慣れることが大切になります。
調べてみたところ、ヴィオラ、チェロバージョンの他にフルートバージョンも出ているようです(全ての楽器に編曲者あり)。

秀逸なカノンなど

同度(同じ音で始まるもの)カノンはともかくとして、初級レベルとされている段階で五度下、五度上のカノンを経験できる作品はなかなかないと思います。カノンではなくても旋律の模倣(それも同じ音とは限らない)や、同じメロディーに違った対旋律をつけることで聴こえ方が変わるという経験もできます。
ヴァイオリン(弦楽器)は五度上、五度下だと弦を変えるだけで同じ指遣いで弾けるのですが、その特性を活かしているなと感じる作品もあり、こういうところも教育目的があるのだろうと思います。
ポリフォニーとは関係ありませんが、ミクロコスモスと同様に拍子が変わる曲、変拍子の曲も並んでいて、そういった楽曲への対応力も育てるものとなっています。

なぜ旋律楽器奏者に和声感、ポリフォニー感が必要なのか?

旋律楽器奏者が、一人で好きなメロディーを弾いているだけなら和声などは知らなくてもいいかもしれません。
しかし、そのメロディーはほとんどの場合和声の支えがあってできているものです。曲を根拠のある自分の解釈で演奏するためには、その支えの理解がものをいいます。そのため、日本の音楽専門学校では和声学習が必須となっているのです。
ポリフォニーも同じです。厳格な対位法で楽曲が書ける必要はありませんが、感覚的に対位法を理解していることで、特に合奏の時に自分のパート以外を聴けるようになります。聴けることでバランスを考えながら演奏することができるようになります。
旋律楽器は合奏で演奏する機会がピアノよりも多いことから、このような能力をつけておくことは大切になります。

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