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ノスタルジックな気分に浸れる連弾曲5選

冬の終わりが近づき、春の足音が聞こえてきそうな暖かさに心地良くなりますね。また春は出会いもあれば別れもある、わくわくするような寂しいような、故郷を想う気持ちにも少し似ていますよね。そこで、そんな気持ちに寄り添うようなノスタルジックな気分になれる連弾曲を紹介します。

1 . ドヴォルザーク「ボヘミアの森から」

ドヴォルザークといえばスラヴ舞曲、連弾で演奏したことがある人は多いのではないでしょうか。もちろんスラヴ舞曲も名作ですが今回は傑作なのにあまり知られていない連弾作品「ボヘミアの森から」をご案内します。彼は小さい頃からボヘミアの森近くに住み、故郷の自然をこよなく愛したそうです。こちらは6曲の性格的小品から成り、思わず森へ誘い込まれるような幻惑的な題名がそれぞれに付けられています。中でも今回ぴったりなのは5曲目の「森の静けさ」です。耳を澄ませて聴いてみるとモルダウ川のせせらぎが聞こえてきそうな穏やか且つどこか懐かしい香りのする一曲です。

2. ブラームス作曲「ロシアの想い出」

ブラームスは先ほど紹介したドヴォルザークの才能にいち早く気付き音楽家として支援した、というエピソードも有名です。ブラームスも同じく連弾の名曲には「ハンガリー舞曲」がありますね。そんなブラームスが若き日に作曲したとされる「ロシアの想い出」をご紹介。1852年頃に作曲したのではないかと言われておりますが、その頃ブラームスは若干19歳、ロシアを旅行したことがあったのか、はたまたロシアの風景を想い描いたのか定かではありません。こちらも6曲の小品で構成されており、ブラームスらしい力強さと、どこか遠くに想いを馳せるようなまさに「想い出」という言葉が似合う切なさとが絡み合い美しいコントラストが叶っています。

3. シューマン作曲「東洋の絵」

続いてはブラームスが尊敬してやまなかったシューマンの連弾曲から「東洋の絵」ですが、彼が38歳のときにアラビアの詩人ハリリの散文詩「マカーメン」に着想を得て作曲されたと言われています。私たちが西洋に憧れるように、西洋人も東洋に憧れを抱いていたことが窺えますね。「東洋の絵」はロマン派連弾の最高峰といっても過言ではなく、演奏会等での演奏機会に恵まれています。東洋的題材を扱っていますが、幻想的で豊かな和声が特徴です。特に4曲目はシューマン特有の詩的で感傷的な表現が巧みに踏襲され心を掴まれます。聴いてみる、演奏してみる価値のある一曲です。

4. ラヴェル作曲「亡き王女のためのパヴァーヌ」

打って変わってフランス人作曲家ラヴェルはスペインにほど近いバスク地方で育ちました。「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、そんなラヴェルがいにしえのスペイン王女に想いを馳せ作曲したものです。美しいメロディーに胸を締めつけられるようですが、王女への悲しみを歌っているのではなくスペインの昔の風習や情緒を懐古する、ノスタルジックそのものを表した曲でもあります。ピアノ独奏で演奏されることも多い曲なので連弾版は技術的にそれほど難しくありませんが、それ故に演奏者と聴衆とが想いを共有し深く味わえるとより素敵ですね。

5. 岡野貞一作曲(高橋由紀編)「故郷」

最後はボーナストラックといいましょうか。Piano Duo Rubanとしてご縁があり、作編曲家でピティナ等で幅広くご活躍の高橋由紀さんから連弾バージョンへ編曲された「故郷」の楽譜をプレゼントしていただきました。私たち日本人が最も深く親しんだ唱歌のひとつと言える「故郷」がきらめくデコレーションと表情豊かな和声が添えられノスタルジアもパワーアップしています。どんなに色々な国へ旅をしても、日本に降り立つとやはりここがふるさとなのだ、アイデンティティの一部になっているのだな、と強く感じることがあります。日本のなかでも都心部に住みなかなか自分の故郷に帰ることができない、という方も大勢いるのではないでしょうか。ぜひこの機会にふるさとを思い出しててください。


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