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私の逆噴射小説大賞参加作品

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私の逆噴射小説大賞参加作のリストです。
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記事一覧

ハロウィンナイト・コー!ホー!

 ハロウィンは祭では無い。商戦だ。セールス・コンピューターと呼ばれる俺の仕事はこの戦いを制することである。 「…という訳で暫く忙しい」 「ふざけんな!」 木杭が撃ち込まれるが、難なく躱す。 「分かってるのか!?私たちはモンスターなんだぞ!?」 「だから?」 「絶対ハロウィンの人気者になれるだろ!」 オオカミ女の妻 シーラはイベント好きだ。今回も随分はしゃいでるようだ。 「シーラ、この機は逃せないんだ。ハロウィンは2倍の広告効果が見込まれるし、吸血鬼の僕が手掛け

エイリク大陸物語①「獅子王と甲冑の騎士」

0.王都にて  夕刻、黒馬に乗った騎士がただ一人出陣した。黒光りする甲冑は禍々しく、その下の素顔を見たものは無い。もっとも<<英雄殺し>>が王城から出ることは少ない。英雄マルスがあのように討たれてからは特に。  また一人希望の担い手となっただろう少年が死ぬ。<<英雄殺し>> の行軍を目にした者は皆、顔も知らぬその子の為に祈った。  しかし、行軍が目的地に近づいてくると人々の反応も変わった。今までならば王都から北進して海岸の都市群に向かったはず。それがどうやら<<英雄殺し

牛鬼のいつきvs夜叉の朝倉

拳! 拳!拳!拳! 乱打! 止まらない殴撃! 腕を振りかぶる度、豊満な胸が揺れる。これが暴力だと言わんばかり! 受ける朝倉はガードを続けては不利と強引に顔面を撃ちにかかる。 「グワーッ!」 ガードを解いた朝倉に拳!しかしいつきの想定よりもダメージは浅い。結果として乱打を抜けた朝倉の状況は好転する。乱打を受けてまだ腕の上がる朝倉に対して、いつきは相手の打撃を受ければ敗北を免れないだろう。覆せぬ男女差。 そうはさせぬと再び間合いを詰め殴りかかるいつき!しかし! 「

妖怪と小説家は廃屋に住む。

「妖怪は存在する」  ボロ新聞を纏う老人が据わった目で語る。 「あるだろ、子供の頃見た記憶」  川辺は物事を考えるに良い。しかし色んな人も来るものだ。宗教の勧誘はよくあるが、ホームレスに話しかけられたのは初めてだ。 「いや常識的に考えたら居ない。俺だって分かる」  老人は続ける。 「でもな、君だって思うだろ?子供の頃見たアレは幻でも妄想でもないって」  確かに。思ったよりマトモに話せる人だ。 「僕もそう思いますよ。でもね今はもう大人ですから見えませんよ」  

刑務列車「刑部号」

 2026年。五輪の失敗・政権交代・強まる他者排斥傾向・犯罪増加…混迷を極め狂った日本はとんでもない決断に出た。  【刑務列車計画】と題された狂気の政策は国会を通り実現した。即ち刑務所を解体して善良な市民に土地を提供、犯罪者は列車に詰め込まれ遠ざけられる。  結果として、この計画は成功した。マジか。そればかりか列車特需で日本経済は上向いた。馬鹿な。  『大和吉野~大和吉野~。積み込みの為2時間ほど停車します。え~作業員は引き続き募集中です。移送者・新入所者約50名います

どうせ死ぬなら本屋で死なせて

 本屋でぶつくさ言いながらページをめくっている。娯楽小説の冒頭だけ次から次へ。本屋からしたら迷惑極まりないだろうが、まぁ本の扱いもまだ丁寧だろうし、そもそもここでアホみたいに本を買い続けてるんだ、許して欲しい。店舗型の特権でしょう?  にしても書く側の目線で読むと小説は狂っている。自分の書いたものがクソに見えてくる。冒頭だけ書けったって何が出来るんだ、今読んだ長編小説の冒頭1ページなんか何の情報もないぞ。そもそも俺は読む側の人間で書く人間じゃない。でも書かないと何か心が死ぬ

秋風の夜

 雨が打ち付け窓が揺れる。今夜は野分が私の家のあたりに来ていた。  野分は嫌いだ、休校は大歓迎だが災害は必ず誰かを傷つける。今夜は寝付け無さそうだ、そう思い寝所を出て1階の台所を目指した。  階段を下りるたび軋む音は雨音で祖母に聞こえないだろうけど、なるべく起こしてあげたくない。台所に着くと冷蔵庫を開け適当に飲み物を取り出す。  1階を放浪しているとふとチェストに目が留まる。祖母が嫁入りの際に持って来た年代物だがまだまだ現役で、防虫剤か何かの匂いと木の匂いが混ざった匂い

ブリザードDT

 どんなヒーローにもオリジンがある。俺のは…クソだ。 「ダッセェことやってんじゃねぇ!」  歌舞伎町路地裏で取り囲まれるサラリーマン等ありふれた光景だが見過ごせない。 「ア”?…は?」  こちらを見た暴漢の眼が点になる。当然だ。連中より俺の方が遥かにダサい。改造サングラスにヤクザロングコート、その背中に大きく 童 貞 の文字。これが新宿の守護者ブリザードDTのコスチュームだ。 「イヤーッ!」 先制ヤクザキックで一人をぶっ飛ばす。瞬間冷気が吹き明らかに気温が下がった

千年魔京

「だからな、やっぱり京都はクソなんだよ」 鴨川河川敷の夜は無法地帯であり飲酒が許される。京極雅之は飲み会の後二次会と称しここで酒を飲むのが好きであった。 「車は方向指示器出さねぇし、バスが四条河原町を曲がるのに10分はかかる」 今夜の京極は随分機嫌が良いらしく大声で管を巻いていた。倉橋はそう言う京極が嫌いではなく、落ちていた枝を弄びながら微笑んでいた。 「宮崎駿こそが典型的オタクって感じするよなぁ…オタクに才能載せたらああも凄くなるんだなぁ」 「なぁ京極」 「

ゲッコーの夜

 地球最後の遊技場、大阪第7ビルが放つ光は月光が霞むほどだ。賭博中毒労働者、アウトロ、権力者らが階層ごとに分かれ謎めいたカネの流れを生み出す腐った塔。ネオンと喧騒は嫌いではないが、糞は糞だ。滅びてしまった方がいい。 「ヘケートもそう思わない?」 『ファック、さっさと飛んで!』  糞でもどうせここでしか生きれない。私は少し息を吸い、そのまま海上666mのビル屋上からダイブした。 『84F、標的は窓際、計画どーり!』 BANG!  高速落下からの銃撃、警護が間に合うは

正義戦隊 プロファイターズ

KABOOM! 「やばい!SEブラック何とかしてくれ!」 巨大化クモ兵士の攻撃を受けるプロファイターロボ。胸部レッドレオ内でドクターレッドが叫ぶ。 「今やってる!」 腕部ブラックゴリラ内、ブラックがプログラムを書く。 「時間を稼ぐ」 翼部ブルーイーグルから弾幕! 「ギャバー!効かぬわァ!」 糸が脚部イエロータートルを縛る。最早ここまで! 「出来たがしかし!」 「なんだ早くしろ!」 強化パッチ導入!しかしニンジャブルーが気付く! 「これは…奴無しでは!」

逆噴射小説大賞おりかえし!!

無事前半12日間毎日更新を達成しました。スキやtwitterでの呟きありがとうございます。励みです、嬉しい!! この記事では前半12作品を振り返ります。ゴリラ以外も読んでね!(お願い) 1日目 マリヤの処女母胎は真実だった。単為生殖する人間、ミュータントマリヤ!! 2000年の間に増殖したマリヤ!第二のキリスト降誕を願うカルト教団、全マリヤ連! マリヤの一人マリーとファックし子供を為してしまったモンキーは全マ連に狙われる! 目指すは非聖書の地、天竺! 2日目

十五力士漂流記

 辺流濡(ヴェルヌ)部屋の力士が無人島に漂流した。どうしてこうなった、鰤餡(ブリアン)関は数日前を振り返る。  屋形船で行われた呉尾丼(ゴードン)関の大関就任パーティ。何故か沈没。正しく定員15名の力士が集まったはず。  しかし過去を振り返る余裕はない。力士の消費カロリーは常人のそれを大きく上回る。食糧も既に尽き、険悪な雰囲気が流れていた。  直線距離数キロの探索に出たゴードン関ら3名は帰らない。既にカロリーが尽きたか?あるいは… 「もう一度探索隊を出すべきだ

東一局666本場

 東家 国士無双山 は強かった。土俵にて横綱は最強。それは雀卓においても。しかし666連勝は正気ではない。冷静ぶる西家 武装親衛隊中佐ハイドリヒも内心穏やかではあるまい。彼のハコ割れは党の歴史上からの排除を意味する。 一方北家、小説家を名乗る男に動揺はなかった。しかし彼の意味不明な手が卓を乱している。初期持ち点を見るに彼の賭けた自身の作品とやらが大作であったことは間違いないが、ただの阿呆だったか? 「立直」 横綱が立直。このまま又も勝ちを重ねるか?流石におかしい。しかし