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私の逆噴射小説大賞参加作品

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私の逆噴射小説大賞参加作のリストです。
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#ファンタジー

ハロウィンナイト・コー!ホー!

 ハロウィンは祭では無い。商戦だ。セールス・コンピューターと呼ばれる俺の仕事はこの戦いを制することである。 「…という訳で暫く忙しい」 「ふざけんな!」 木杭が撃ち込まれるが、難なく躱す。 「分かってるのか!?私たちはモンスターなんだぞ!?」 「だから?」 「絶対ハロウィンの人気者になれるだろ!」 オオカミ女の妻 シーラはイベント好きだ。今回も随分はしゃいでるようだ。 「シーラ、この機は逃せないんだ。ハロウィンは2倍の広告効果が見込まれるし、吸血鬼の僕が手掛け

エイリク大陸物語①「獅子王と甲冑の騎士」

0.王都にて  夕刻、黒馬に乗った騎士がただ一人出陣した。黒光りする甲冑は禍々しく、その下の素顔を見たものは無い。もっとも<<英雄殺し>>が王城から出ることは少ない。英雄マルスがあのように討たれてからは特に。  また一人希望の担い手となっただろう少年が死ぬ。<<英雄殺し>> の行軍を目にした者は皆、顔も知らぬその子の為に祈った。  しかし、行軍が目的地に近づいてくると人々の反応も変わった。今までならば王都から北進して海岸の都市群に向かったはず。それがどうやら<<英雄殺し

秋風の夜

 雨が打ち付け窓が揺れる。今夜は野分が私の家のあたりに来ていた。  野分は嫌いだ、休校は大歓迎だが災害は必ず誰かを傷つける。今夜は寝付け無さそうだ、そう思い寝所を出て1階の台所を目指した。  階段を下りるたび軋む音は雨音で祖母に聞こえないだろうけど、なるべく起こしてあげたくない。台所に着くと冷蔵庫を開け適当に飲み物を取り出す。  1階を放浪しているとふとチェストに目が留まる。祖母が嫁入りの際に持って来た年代物だがまだまだ現役で、防虫剤か何かの匂いと木の匂いが混ざった匂い