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逆噴射小説大賞に傾向や対策はあるのか?

 お望月さんが運営されている逆噴射小説大賞参加者が主に参加するdiscordのサーバー「BARメヒコ」では日夜パルプ小説に関するアレコレとかパルプ小説に関係ないアレコレが語られているのですが、先日このような書き込みがありました。

傾向と対策、賞レースでは結構重要なんですよね
そのへんはバッティくんが詳しいです

某親方さん

ほんやくチーム、「傾向と対策」をされるのはイヤ。って言ってましたね。逆噴射カラーが出ている作品は、逆に苦手なんじゃないかなーー。

某🍅さん

なんとなく逆噴射における「基本の型」ってバッティさんの「魔法使いの弟子」だよな……と感じています。

某山伏さん

 なんか俺が傾向と対策というじゃあくな手段で第2回の時に大賞とったみたいじゃん!!ちょっと!!


 でも上の拙作は実際に第1回の入賞作を参考にしたり、自身の失敗とかを含めて色々考えて要素を並べ、それを「魔法使いの弟子」というタイトルでもって纏めた作品なんですよね。という訳でこの時何を考えて書いたのか、逆噴射小説大賞というレギュで何を大事にするべきか(このレギュでなくても小説を書くには大事な要素かもしれません)ってことをdiscordで喋ったりしたので、ここに纏めて記載しておきますね。あまり創作論的なことを語るのは好きではないので、今回きりです。

 
 というか第3回のときにライナーノーツで色々書いてるんですけどね。この年も去年も成功した経験と失敗した経験があるから……まぁその辺の反省も含めて今回です。


1 キャラクターを立てよう

 これは自身の体験が元。第1回で24作投稿し二次選考に唯一通った作品がキャラクター先行で作ったものだったためキャラクターが大事なのかなと。400字や800字しかないからと言って、キャラクターの描写を捨ててガジェットやら設定やら文章で進めては良くない。何とかキャラを立てるべき。ってことです。

 discordにこれを書いたら結構リアクションが多かったんですけど、別に荒木先生みたいに履歴書書けって話でも、キャラにとにかく捻りを入れたら良いって話でもなく。荒木先生の弟子でも小池一夫先生の弟子でもある「ぬらりひょんの孫」の椎橋寛先生が出典忘れたんで正確な表記じゃないんですけど「キャラクターたちがカッコいい!可愛い!と思って貰えるように描いてます」って仰っていて。結局そのキャラクター単品で読者の心動かせるか・好きになってもらえるかってのが問題なんじゃないかと思います。シンプルで見たことあるキャラでも好きになってもらうことは可能だしね!まぁ絵がない小説では難しいかもですが。

 俺はプロだから顔には出さないが、思わずのけぞってしまうほどの金額だった。

 実際に第1回逆噴射小説大賞のこの作品を読んでみたらこういう1文があって、これだけで主人公の魅力が伝わってきてカワイイじゃないですか。そういうのがキャラ立てってことなんじゃないかと思います。


 
キャラ立てについては俺もよく分かってないので、これを読みたいな~って思っています。メイドインアビスのつくしあきひと先生やケモ夫人の藤想先生がオススメしていたので。


1-1 キャラには強いアセットがある

 ジョン久作さんのババア作品を見て発見。ババアが強いとそれだけでキャラが立ってしまう。800字という短いレギュレーションの中で物語も進めて、キャラも表現して……となるとリソースが厳しい。となると分かり易い特徴・ティピカルなキャラクター像を利用するのが必要なんですね。

 魔法使いの弟子はババアを採用、第3回の二次選考通過作では地雷系、第4回の二次選考通過作は子供を使っています。

 ただこれは今ある社会観念を利用するという話なので、そのことが持つ暴力性というか現実にある属性に典型像を押し付けるのは大丈夫かな?という問は自分にし続ける必要があります。ババアだってエイジズムとか……考えたら色々あるし……気を付けて一定の自覚を持った上でやるべきだと思います。

1-2 飯を食わせる

かなりの不満点は、ごはんをまともに食べるシーンがない。奴隷生活の後に大好物のシチューを捨てる元奴隷。プレイヤーの意思が反映されてない部分だと思うけど残してふて寝。 ルドマンの宴じゃーメシを食えー!の声が消えないうちに退出してる本奴隷。 人間に興味がない奴がつくったのか。

お望月さんによるドラゴンクエストユアストーリー感想ツイート

 このツイートを見てハッとしたのと、第2回の直前に見たJOKERでアーサーが凄く美味しそうに煙草を吸うもんだから、飯とかタバコとか生活感のある描写、その人物が生きてるな!ってなる描写を入れるよういしてます。これがあるだけでキャラクターがマリオネットから血の通った人間になる気がする。正直800字の中で入れれるもんでもないと思うのでまぁ努力目標ですかね。

2、好きなカルチャーを引用しよう

 第1回におけるにゃん平さんの優勝作品の魅力は作者によるラップというカルチャーへの造形が深いものだったことも影響していると思います。

 400字や800字という短い文章で深みを出すには何らかの文化を背景に引用し、その世界を感じさせるのが良い。そしてこれは絶対自分が好きなやつとか詳しいやつじゃないといけない。そのアティテュードはREALさに直結するから。ほんやくチームの方々がお仕事ものを褒めてるのはそういうことですよね。世界の奥行がREALに広がっていく。拙作「魔法使いの弟子」では自分が好きなロンドンやら魔法という要素を引っ張っていました。

 直接魔法使いババアの引用元になっているのは「銀河ヒッチハイク・ガイド」でお馴染み、ダグラス・アダムスの「ダークジェントリー全体論的探偵事務所」のダークジェントリーから。これはマジで面白いから読め。試験問題の対策問題作ったら実際の試験そのものと全く同じになって退学になるし、ヤケになって滅茶苦茶な占いをしたらそれも全問正解してしまう全体論的な探偵です。

 あとこれは言うとなんですが、ほんチ好みのカルチャーだと余計評価される気はする。ほんチもラップとかロンドン好きだし……選ぶのが逆噴射先生入れて3人の賞ですから仕方ないことですけど、じゃあ選評者の趣味に合わせよう!!ってのは絶対違うし、そういうイベントではないので自分の好きに書きましょう。全然知らない分野だから面白い!ってのもあると思いますから。

3 語らなくても伝わる

 第2回の直前にジョン・ウィックを観て「コンチネンタルって一切説明されないけど、こんな映画見るやつは描写だけで分かるし説明しなくていいんだ……coolだしテンポがよい……」となりました。そして俺もコンチネンタルみたいなの出したいなぁ〜とか思ってたら、結局第二回では主人公が殺し屋になった。あまりにジョン・ウィックになると困るので主人公はB級殺し屋にしたり。

 800字で見せつけなきゃいけないから長編のテンポで描写している隙はなくて、短編小説のように読者のイメージを借りて描写する。それがパルプってことなんだと思います。

 当時から小説を書いてたので高校生のとき京大の国語の過去問を解いてて出会った文章に魅せられて、即日この本を図書室で借りたんですがその内容が脳裏にある考え方です。短編小説作家はイメージの狩人なのだと。短い言葉でイメージを伝える必要があって、長編小説のように主題以外の寄り道をしている暇は無い……とか何とか。高校の時の日記にこれを受けて創作論語りしてるページ見っけたけどそれは貼りません……恥ずかしいので……

4 物語がどこに向かう何の物語なのかを示す

 こないだログラインの話が話題になっていましたが、パルプは冒頭800字もあったらこの物語はどこに向かって進むのか指針を見せないといけない。これは第1回のにゃん平さんの作品を見ると分かりやすくて、作中で大きな謎が示される。その謎が読者の関心をひきつつ、物語をドライブさせる原動力かつ道標になっている。謎を中心に物語が起きて、謎の解決がおそらく物語の終着点になる。魔法使いの弟子ではこれを参考に「なぜ主人公が殺されなければならないのか」という謎を提示しながらそれが作品全体でのテーマになるようにしています。

 この謎をきっちり提示して自分の中でオチも決めておくと、自然と映画1本分だったり小説1冊分の話になるんじゃないかな。出オチの短編になったり、続きモノの長編小説の1話という逆噴射小説大賞向きではない作品にもならないと思います。

5 人が死んだほうがいい

 これは第2回の時のは意識していなかったのですが、第3回で上手くいかなかったことで気付いた反省です。小説の中に動きがないと良くない。ついつい部屋の中で喋って終わってしまう。800字もあったら人が死んだり、車が爆発したりしないといけないようです。コナンの映画は毎年爆発シーンがあって偉いとにゃん平さんが言っていました。殺すか爆発させるか、派手な動きを入れましょう。


おわりに

 改めて書くと、全部大したことではありませんね。しかしここで言ったようなことは、過去の入賞作とか2次選考に通ってる作品全てに共通することではありません。さらに言えば選考通ってなくても、読者に面白い!って絶賛されてる作品もいっぱいあります。結局賞とかあんまり気にせずに面白いものを書けば良いんですよ!

 
 それが出来たら苦労せんわい!!!!!って訳で私はもう今から王座奪還を目指して今年の逆噴射小説大賞に出す小説のアイデアをメモ帳に箇条書きしています。結局時間かけて頭使わないと面白いのは出来ないですから。その執筆作業の最後の仕上げの時なんかに上記の内容とか思い出してエディットしてもらえて、その結果あなたの作品がより面白いものになったりなんかしたら幸いです。


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