見出し画像

短編 | あんよの湯

 紅葉彩る霜月、私は一人日光を探訪する事を思いたった。
 暖冬とはいえ、流石に山奥に分け入ると体が震え始めた。

 電車を降りると、湯気が辺りを覆っていた。こんなに寒い中、四阿に腰を掛けている人が大勢いた。

 嗚呼、足湯!
 私も試してみようかしら。
 
 熱い!思ったよりもずっと熱かった。皆何故平然としていられるのだろう?と不思議に思ったが、数分経った頃には其の熱さに慣れていた。そしてこの熱さにも心地良さを感じ始めた。気が付けば額には汗さえ滲んできた。そろそろ出ようかしら?

 私は足を拭い、靴を履き歩き始めた。

「こんにちは。もし宜しければ、粉雪も体験なさいませんか?」

 粉雪の体験?
 何を言っているのか分からなかったから、「結構です」と言った。 
 
「いま、メンバーシップに加入なさいますと、何時でも何処でも粉雪を御利用出来るのですが」

「粉雪は天気に依るモノでしょう?人工雪ですか?」

「いえ、天然モノです。我々は雪の精と提携しておりまして」



(415字)

#日光
#紅葉
#あんよの湯
#短編小説
#粉雪を
#メンバーシップ
#足湯
#温泉
#毎週ショートショートnote

この記事が参加している募集

至福の温泉

一度は行きたいあの場所

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします