短編 | あんよの湯
紅葉彩る霜月、私は一人日光を探訪する事を思いたった。
暖冬とはいえ、流石に山奥に分け入ると体が震え始めた。
電車を降りると、湯気が辺りを覆っていた。こんなに寒い中、四阿に腰を掛けている人が大勢いた。
嗚呼、足湯!
私も試してみようかしら。
熱い!思ったよりもずっと熱かった。皆何故平然としていられるのだろう?と不思議に思ったが、数分経った頃には其の熱さに慣れていた。そしてこの熱さにも心地良さを感じ始めた。気が付けば額には汗さえ滲んできた。そろそろ出ようかしら?
私は足を拭い、靴を履き歩き始めた。
「こんにちは。もし宜しければ、粉雪も体験なさいませんか?」
粉雪の体験?
何を言っているのか分からなかったから、「結構です」と言った。
「いま、メンバーシップに加入なさいますと、何時でも何処でも粉雪を御利用出来るのですが」
「粉雪は天気に依るモノでしょう?人工雪ですか?」
「いえ、天然モノです。我々は雪の精と提携しておりまして」
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします