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ダメージモーション考

かなり昔になりますが、ゲームモーションについてのレクチャーをすることがありました。その時に作った資料を少々整えたものとなります。実際には口頭での説明を交えたもののため、説明不足だったりする部分がありますがご容赦ください。
表現、演出に於ける全てのケースで正しいとは言い切れませんが、考え方のひとつとしてご覧いただければと思います。
あと、元々は3Dアニメーションとしての解説だったんですが、2Dアニメーションにも通じる話だと思います。

ダメージモーションのポイント

ダメージモーションを作る際、記号的に「体をのけぞらせ」て後退する頭ダメージ、「体をくの字に折り曲げ」て後退する腹ダメージ、いう風に作ることも多いかと思います。
抑えるべきポイントとしては間違ってはいないのですが、実際には対象となるキャラクター(オブジェクト)のあるポイントに、何かしらの「物理的な力」が加わって、結果的にダメージリアクションをとっている、ということを意識しておいた方が良いと思います。これを意識する、しないでアウトプットがかなり変わってくるような感じです。以下にポイントをまとめました。

1・立ちダメージについて

ダメージリソースとなるボールが飛んできたと仮定します。

ダメージ反応は、あくまで相手の攻撃に対するリアクションであり、物理的な原因によって引き起こされる動作です。ダメージリアクションは、外的な力(攻撃側の動作)と内的な力(攻撃を堪える動作)が組み合わさったアニメーションであり、ゲームモーションの基礎的な要素が詰まったものになります。

2・攻撃がヒットした瞬間

ボールがヒットした瞬間

ボール(攻撃)がヒットした瞬間。打点を中心に、体全体が力の向きに押されます。勢いの強弱に応じて急激に押されるため、身体の末端(頭部や四肢)はその場所に「残ろう」とします。これは所謂ムチウチ表現であり、この「残る」という表現はゲームモーションの場合は結構重要で、このニュアンスが入ることで量感を演出することができます。

3・バランスを崩す

力に押されて姿勢を維持できなくなります

外的な力を与えられて、キャラクターを力の向きに押されますが、ある一定の段階まで、キャラクターはそれを堪えようとします。しかし、外的な力が優っていた場合、ついには堪えきれず、バランスを崩してしまいます。

4・踏ん張る

外的な力を堪えきれなくなり、バランスを崩しますが、ボールはキャラクターに衝突することで位置エネルギーが減少し、そのためキャラクターは踏み止まって堪えることができます。堪えられない場合は”吹き飛ぶ”に移行すると良い感じです。
上図の場合では、左足で踏ん張って体を支えます。このニュアンスが入ることで、強力な攻撃を受けるが、踏みとどまっているという演出ができます。

3Dゲームなどで、攻撃がヒットした瞬間に時間を止めないタイプのゲームでは、このポーズからアニメーション開始するものも多いです。単発のヒットだけでなく、連続技の感触などから多少構造が変わるので、ゲームの仕様や、目指したいプレイフィールによってチューニングしていくのが良いと思います。

5・元の場所に戻ろうとする

攻撃を受け切り、元の場所に戻ろうとします

ボール(攻撃)の力に耐えきった(位置エネルギーがゼロになった)とき、待機ポーズに戻ろうとします。
キャラクターが自発的に動作を行う場合は大抵、腰から動きます。この場合も、腰から、動いて体の末端は「残り」ます踏ん張っていた左足、俯いていた頭部など、腰の動きよりも遅れて動きます。このニュアンスが入ることで、攻撃の威力や、重みを感じさせることができます。

6・勢い余る

戻る力が余ってしまい、元に居た場所を超えてしまう

ゲームのモーションは多少大袈裟に動いた方がダイナミックで良い、という観点で、自分がよく使うニュアンスが「行き過ぎ」という要素です。この図では、体を持ち直そうと、腰が先に動いた結果、本来の最終目的地点を超えてしまい「行き過ぎ」てしまった表現をしています。
バネっぽく、本来の動作を誇張したものになりますが、ゲームのキャラクターは画面に対する表示サイズの問題もあり、少しオーバーリアクションにした方が画面映えし(昔はTVモニタの解像度の問題もあって、解像度以下の微細な動きは画面に反映しなかった)ます。

7・動くとこんな感じ

1~6を再生してみると上図のような動きとなります。最近のゲームは攻撃が当たった場所によって、動的、物理的にリアクションが変化するような仕組みもありますが、基本的な考え方はここで紹介した通りとなります。
ここで書かれていることが大事なのではなく、ある動きを作るとき、その動作がどういうメカニズムで成り立っているのかを考え、ゲームのモーションとしての企画要件や、カタルシスを表現することが大事ではないかと考えています。

何かしらの参考になれば幸いです。

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