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ドット絵の作画について(はじめに)

2020年の夏頃、Twitterを始めて最初のフォロワーさんが海外の人で、ドット絵を描いてる人でした。やりとりを通じて「どうやってドット絵を描いているか」という話になったので、改めて自分がドット絵をどのように描くのか、ということを書き残してみようと思いました。

今まで偉大な先輩たちから聞き齧ったことを、自分なりに解釈したものになってしまいますけども、そこはそれ。ドット絵による2Dゲームが一度衰退し、時代がひと回りしてビジュアル表現のいちジャンルとして独自の立ち位置を確立した今、これまであまり体系的に言語化されてこなかった、ドット絵のテクニックについてまとめてみるのは大袈裟ですが、ある部分では文化的な意味もあるのかなと。

その一方で、ドット絵のゲームを作りたいんだけどなかなかうまく描けない、といったインディゲーム開発者に向けた、入門書的な側面を持ったドキュメントを目指しました。これらの文書が開発の一助となれば幸いですし、裾野が広がることでさらにドット絵文化が発展?するのではないか、という期待もあります。

と、ドット絵の歴史、みたいなことを実例(画像)を交えて書いてしまうと著作権とかで色々ややこしいことになりそうなので割愛するとして、1990年代中期から2000年の初期にかけて、ドット絵の技法として一種の完成形に到達した、アニメ調のドット絵スタイルを軸にして、ドット絵の基本的なテクニックやその効果について書いていけたらと思います。

アニメ調のドット絵スタイルで描かれたもの

さて、当時は2D格闘ゲームが全盛で、ビジュアル的にも各社が鎬を削っていた戦国時代でした。特に、格闘ゲームの特徴である「アニメーションパターンの豊富さ」に、従来の重厚な”厚塗り”では対応し難い状況になり、アニメ調の、濃淡がハッキリとした立体感のある画調へと移行していったと記憶しています。
作業効率という面も無視は出来ませんが、アニメーションパターンが豊富なのであれば、着色をある程度簡素にしても画面映えはする、という目算があったようで、例えばディズニー作品のような、キャラクターを詳細まで描かない分、アニメーションの滑らかさで存在感を出す、また、オブジェクトを簡素にする分、背景をより緻密に、絵的に凝った構図、色調で表現することによって、ゲームの主役であるキャラクターをより際立たせる、という効果を狙っていたと聞いたことがあります。

また、緻密な”厚塗り”で無い分、作画面でも、よりアニメーションに注力でき、また画調のルールを決めやすいので、品質の統一感が得られやすい、という面がありました。しかし、そういった制作上のメリットもさることながら、単純にキャラクターに魅力があった、ビジュアルに力があった、ということはとても大事だと思います。だからこそ、2022年となった現在でも世界中で愛されるドット絵スタイルのひとつとなっているのではないか、と考えられます。

なお、厚塗りドット絵の完成形のひとつであり、精細なディティールと質感表現、滑らかなアニメーションで、あれだけの物量を作り切った”メタルスラッグ”シリーズの偉業は、今後もゲームビジュアル史に残っていくことでしょうし、今なお、世界中で愛されている現役タイトルでもあります。ドット絵のスタイルは多種多様で、目指す方向性はひとつではない、ということは補足させていただきます。

こんなの厚塗りしてたら死んじゃう!でもメタスラはサラっとやっちゃってたりします。

結局あのドット絵スタイルが好きなので、今も飽きずに描き続けているわけですし、あの頃の雰囲気が感じられるドット絵アクションゲームをいつか作ってみたいと思っています。自分がカバーしている技術範囲はごく一部なので、この活動を通じて、多種多様な画調によるドット絵技術についてのあれこれを知ることができたら…という淡い期待もあったりして…。

というわけで次回からは、その作画について自分なりのやり方をまとめていこうと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


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