名前の由来、名付け親になるということ

「息子の名前は「讓(ジョウ)」です。」と紹介すると、よく名前の由来を聞かれる。私はまだこの質問にきちんと回答できた試しがない。名付け親としてこれはまずいと思いつつ、決めるまでの過程や、決まった後に何度も呼んでいて思ったこと、息子の名前の漢字を見かけるごとに追加されるイメージが渾然一体となって常に変容しているから仕方ない気持ちもある。ただ、現時点で持っている由来は明文化できそうなのでnoteにまとめてみようと思う。

由来の要素

Google先生によると由来とは「物事がそれを起源とするところ。また、物事が今までたどってきた経過。来歴。由緒。いわれ。」らしい。今回のnoteでは起源決まるまでたどってきた経過、決まってから現在までの経過の3要素でまとめようと思う。

ん?ちょっとまって!決まったあとは由来じゃなくね?ってツッコミがあるかもしれない。

でも私は決まったあとの経過を含めて息子の名前だと説明したいので、というかむしろ決まった後の変化を大切にしたいので、あえて入れます(きりっ)

起源

息子の名前に関連しているであろう潜在的な事象を起源と呼ぶこととする。私の中では名前へのこだわりパートナーとの出会いが起源に該当する。

■名前へのこだわり

自分の話だが、私は「若葉」という自分の名前をすごく気に入っている。誰でも読める名前にも関わらず、同名の人に出会わないユニークさ。大好きな姉が「綾花」で花、私には葉が入っており繋がっているという優越感。そして、両親が名前にこめた「葉が太陽の光に向かって茂るように、健やかに成長して欲しい」「(若葉マークをイメージして)初心を忘れず、謙虚で真摯であって欲しい」という願いが自分の行動指針となっているからである。

名前は、親から子への最初のプレゼントとはよく言ったもので私は両親からとびっきりのプレゼントを生涯を通して授かったことに感謝している。

次の章で紹介するが私の名前で気に入っているところ、逆にこうしたかったと思っていること。それが息子の名前探しの条件に繋がっていった。

■パートナーとの出会い

私とパートナーのワールドは、ジョジョの奇妙な冒険で繋がった仲である。

<ジョジョの奇妙な冒険>
ジョースター家とその宿敵ディオの因縁を壮大なスケールで描いている漫画

は?どんなつながり?って思うかもだけどそうなのだ。
私がジョジョの登場人物である東方定助(2次元)とのツーショットをSNSのアイコンにしていた頃、ジョジョ好きがこうじてファンサイトを自主制作していたワールドがサイトフィードバックを依頼してきたのが直接的なきっかけなのだから。パートナーとの出会い話は正直名付けに関連してないかもだが、はからずも息子の名前が「ジョウ」になった。意識はしていない、ただ、さまざまな過程を経て我が息子の名前は「ジョウ」になり、そしてジョジョの奇妙な冒険の主人公たち(ジョースター家の一族)は全員名前に「ジョー」が入っている。これは偶然なのか?運命なのか?!はたまた、無意識的な刷り込みなのかもしれない。おそらくだが音感として「ジョー」はもともと好きだったのだ。

息子の名前が決まるまでたどってきた経過

名前は一朝一夕で決まるものではない。それなりに紆余曲折を経て、最終決定を(出生届という)書面に記載したのち国に登録されやっとこさ決まるのである。この紆余曲折って部分も由来の一部であろうから書き連ねたい。

まず始まりは2021年春、子どもを授かったことだ。親になる実感は全くない状態。そして想像してほしい、いままで犬とハムスターくらいしか名付け経験のない素人がまだ性別も性格もわからぬ生命体に、一生背負うことになる名前をつける心境。Lv.1の村人が魔王に挑むような心持ちで名付けプロジェクトの幕開けである。

■アイディアは降ってこない

どこから着想を得ればいいのかわからずパニックになった私がまず手にしたのは読んだこともない儒教-孔子の教説本だった。なにか偉い人のありがたい話を読むと天啓を授かれるのでは!ってなノリで孔子、今思うとなぜ孔子。。。結果として、3ヶ月たっても一向に頭に入ってこない訓戒からは閃きを得ることはできなかった(笑)。付け焼き刃では歯が立たない、自分の中から絞りださないと良し悪しの判断がつかないって学べたのが孔子からの教えでした。

■パートナーと決めた名前探しの条件

私が孔子先生に教えを乞うている時期と並行して、ワールドとは名前の条件を出し合った。そしてお互い候補を探して、出産2ヶ月前に名前決定会議を行うことをマイルストーンとした。名前探しの条件を決める議論を重ねたが、結局のところ自分の名前で気に入っているところ、逆にこうしたかったと思っていることが基準になったなと振り返って思っている。

<名前探しの条件>
・漢字に意味のあるものがいい
・呼びやすく、間違えにくい名前であること
・海外でも通用する名前であること
・できれば漢字一文字
・できれば自然由来
・人気な名前!とかで決めたくない
・いわゆる名前のための名前はあまり好きではない(●子とか●助とか)
・当て字はしたくない
・友人など知り合いを連想する名前は避けたい

■呼び名えらび

いよいよ真剣みが帯びてくる出産2ヶ月前の8月。場所は熱田神宮。池のせせらぎが聞こえる野外ベンチにて蚊と戦いながら名前決定会議の火蓋を切った。決定会議前は名前候補すべてが正直どれも自信がなく不安だった。。本当にどうやって決めればいいの、、、と弱気になっていた。ただそういう思いも含めて、ワールドに候補を紹介すると、驚いたことにいくつか同じ名前を候補にあげていた。なんだか足並みが揃っている感覚に安心して、その後はひとつひとつの候補に抱いている印象など前進した内容を話せるようになった。

漢字と呼び方をいっぺんに決めようとしたので難易度が上がっていたが、まずは呼び方を決めてから漢字を当てはめていこうと名前の決定方針をこの場で決められたのが一番良かった。結果として、候補の呼び方を5、6個に絞ることができ、字画を調べてから再度名前会議を開催することで第一回名前決定会議は終了した。この時点ではジョウは「アオイ」「ゼン」「シン」「スイ」「ツカサ」「アヤセ」などの呼び名になる可能性もあった。

■漢字えらび

呼び方の候補が出揃ったので、次は漢字。ここで初めて知ったのだが、人の名前に使える漢字は限られていた!そして私たちの選択した呼び方だと、当て字を入れても漢字の候補は40個もなかったのでまずは絶対ありえないという字面や、メッセージ性を見いだせない漢字を削除した上で何気なしに字画の姓名診断をしてみた。ら、、、ことごとく凶。びっくりするくらい波瀾万丈な人生になりそうな予感、、、姓名診断を無視した漢字を使うか否かを検討したが、身近な人の姓名判断を見る限りちょっと当てはまっていそうで幸先よい人生のスタートを切ってもらうために参考にすることにした。そうすると候補中では「讓」の漢字だけが凶を逃れ、特殊格という良さげな結果がでた。(余談だが私もワールドも特殊格らしい。)

「ジョウ」という名前、正直呼び名はすごく気に入っていたのだが漢字は最初しっくりこなかった。譲という漢字の旧漢字で間違いやすそうだし、代表的な読み方が「讓る(ゆずる)」なので、捉え方次第なのだが誰かの脇役になりそうな字面だな。と正直思ってしまったのだ。例えば同じ「ジョウ」でも豊穣の穣はみのる/ゆたかなどの意味をもつ漢字なのでいい印象があり本当に姓名診断を重視するか悩んだ。第2回名前決定会議では、暫定的に「讓(ジョウ)」とし、他にもいい候補が出た場合や生まれてからの顔つきなど総合的に判断して名付けを最終決定しようとまとまった。

■「讓」に込めるメッセージ

改めて名前探しの条件で私たちが一番重視していたのは、その名前に込めるメッセージである。呼び名や漢字を選定する際も、漢字が持っている意味を重要視して選定を進めたが、まだ生まれる子どもへのメッセージになっていなかった。そこでどんなメッセージを込めたいか改めて意見を出し合う時間を設けた。

まずメッセージは考え方の基準や行動指針となるようなものがいいと話し合った。例えば、私たちの指輪には「Stay Hungry, Stay Foolish」と刻印されている。一般的には結婚記念日やお互いのイニシャルを入れるだろうけれど、あえてスティーブ・ジョブズの言葉を引用したのは、結婚生活やお互いの人生の分岐点で、結婚当初に立てた私たちの行動指針である彼の言葉と沿っているかを問えるように常に身につけていようと話しあった結果である。このように、生まれてくる子どもとってのひとつの軸(アイデンティティ)になるような名前をあげたいなと思った。

メッセージの方向性がみえてきたところで、改めて讓という漢字を調べてみると、どんどん新しい発見がでてきた。まず漢字の成り立ちとして悪霊の侵入を祓う呪具からきていること、それが転じて「言葉を持って邪気を祓う」という意味があることをしった。名前がお守りのような意味って最強ではないか!!と気がつき一気にこの漢字が好きになった。パズルのピースがハマったような感覚だった。また「讓」の代表的な使い方は「謙譲語」であり、謙譲語とは一歩自分が引いて、相手を立たせるということ。つまり心配りと正しい判断のできる人しか使いこなせない所作であることを知った。調べていくにつれてこの名前を彼にあげたいと心の底から思え、そこからは私たちの願いを込めたメッセージを作った。
▼メッセージ

讓(ジョウ)
<意味>
言葉をもって邪気を祓い、豊かになる。
<願い>
謙譲の精神で気配りができ、優しさと強さを兼ね備える
冷静に物事を観察し正しい判断ができ、自らの考えで道を切り開いていく

以上の流れを汲んでやっと決まった名前。あとは生まれた我が子へ名を呼びかけたとき、しっくりくるかどうかだった。

■生まれたあとのしっくり感
正直にいうと、生まれた顔つきをみても全然名前としっくりくるかとかそういうフィーリングは芽生えなかった(笑)。ただもっとこの名前で呼びたいなって思えたし、とっても余談だけど生まれた当日が、スティーブ・ジョブズの命日だったり、岸田総理がジョーバイデン大統領とジョーとフミオと呼び合う仲になったという謎のほっこりニュースが流れててたりでTVからやたら「ジョー」って発音が聞こえてくるので、なんか世の中に祝福されているのかなって勝手にこの名前に運命性を見出してた。

なので「讓(ジョウ)」という名で最終決定し出生届を気持ちよく送り出せたのである。名付けという一大プロジェクト、これにて完。考えている時間が長かったからこそ、新しい家族を迎え入れる心づもりがちょっとできた気がする。

現在までの経過

冒頭で挙げた通り、名付けたところで名前の由来を終わらせたくない。というのも現在進行形で改めていい名前だな、こういう意味合いも含んでいるなと思考が進む時があるのだ。なのでこれから気づきがあるごとにこのnoteを更新して集積していきたいと思っているし、適宜メッセージに追加していきたいと思っている。そしていつか息子に紹介できればなって思っている。

■讓の対義語

讓る(ゆずる)という意味の対義語は貰う(もらう)だと思い込んでいたけれど、友人から「専有や独占するよりいいよね」って言われてそれも対義語なのか!と気がついた。takeとgive ではない、shareという概念。資源がさらに限られていく未来を生きるにあたって、ゆずること前提に動くことは、サバイブ能力に値するのではないか!?

■謙譲の美徳について

知らなかったのだが日本には「謙譲の美徳」という精神文化があるようだ。

日本には「謙譲の美徳」という精神があり、 人を先に立てて、 自分は出しゃばらないということが美しい行為であるとされてきた。

日本の武士道の中にも、 真に優れた武士は外見上あくまで威張らず、 武勇を誇ったりしないものという精神文化が存在したと言われている。

この日本特有の“謙譲”の精神とは、 「謙譲に値する能力・資質を身につけること」 「相手を立てる行為に、 “愛情”を注ぐこと」である。

人々にも“愛情深く”接し、 決して、後ろ指をさされるような行為をしない。あらゆる人々から尊敬される。

その精神が、尊い精神で、昔からが受け継がれていたものである。

引用:『謙譲の美徳(けんじょうのびとく)恥を知る文化』

まさに、名前に込めたメッセージを表現してくれている。考えてみれば、謙譲語ってザ・日本の考え方だと思う。美しい大和魂が子どもの名前にも繋がっていると知れて嬉しかった。


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