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Au pair ワーホリ カナダ生活214日目 「自分の価値は意外と自分では分からない」

 最近のカナダはとても寒くなってきた。今日はマイナスいっていて、さらに夜には雪が降った。毎晩、ホットココアを飲むことにはまり始めている今日この頃。

 さて、みなさんは自分の価値をはっきりと言うことはできるのだろうか。
 私は、はっきりと「自分にはこういう能力があります」と口にしようとすると、どうにももごついてしまう。
 そもそも、他人に褒めてもらうことは、自分では「できて当たり前」「やっていることが自然」な状態であることも多くて、それが特筆すべき価値なのか、わからないこともよくあったりするのだ。
 でも、国外内関係なく働くときにはきちんと「自分の価値」を正しく認識し、さらにその価値は環境やタイミングでも変わってしまうこともあるので、つどつど周囲の状況と自分自身を冷静に鑑みる必要があるのだなとつくづく思う出来事があった。
 それから、私はオペアとシッターという2つの仕事を並行して行っていくことになるのだけれど、オペアひとつだけでなく、オペアをしながら違う仕事をすることもできる一例として誰かの参考になれば嬉しく思う。



自分の価値に自信を持ってと言われる

 シッターの面接に行く前の日の夜。来週のスケジュールについて、ホストペアレンツと話をしていた。
 シッター先は日本語を話せる人を探しているということで、ラッキーな求人だった。私がシッターの時給は18CADだと伝えると、ホストファザーは本来のシッターの平均的な時給は25CADだと教えてくれた。私はレストランのときよりも時給が上がっていたので、のんびりと「嬉しいなぁ」と思っていたのだけれど、ホストファザーが少しだけ微妙な顔もちをしていたのはどうやらそこにひっかかっていたらしい。
 ホストマザーが親切に計算してくれたので、それを見てみると交通費はもらわないと結局、最低賃金を下回ってしまうということが発覚した。「交通費の件については聞いた方がいいと思う」というホストマザーの言葉には、私も頷くしかなかった。
 私はお金のことを考えるのは本当に苦手なので、ぼんやりとしているからこうして助けてくれる人がいるのは、とても恵まれていると思う。

 「あなたの子守りは良いものだし、今この街に日本語のネイティブスピーカーであなたより良いシッターはいないはずだ。だって、日本人でシッター活動をしている人がレアなんだからね」というホストファザーの言葉を聞いて、ホストマザーも「今このタイミングで日本人ネイティブというのはそれだけで一つの付加価値になるんですよ」と言った。
 ホストファザーは続けて、「だから、あなたの給料は最低ラインだと思うし、交渉する余地は十分ある。良い子守りもできるし、日本語もできるんだから、自信を持って」と言ってくれた。
 私は自分が日本人というだけで価値があるというタイミングに出会ったことがなかったので、そういうものなのかと思った。日本語のネイティブスピーカーであることが、今このカナダにいる自分の価値なんだなと。
 私はこの辺りのことを特に価値だと思っていなかった。もちろん日本語を話せるし、せっかくなら日本人であることを活かして働くことができたらなと思ってはいたけれど、この能力を価値だとは考えておらず、これをもとに時給の交渉なんてちっとも考えていなかったのだ。この力を活かして働けたらいいなという気持ちくらいしか持っていなかった。
 私にとっては当たり前の力だけれど、環境が変われば少しレアな力になったりするのかもしれない。
 「この地域に住んでいる人は、たぶんそれなりに裕福層だと思うし、お給料アップを聞いてみてもいいかもしれない」と言われたけれど、私は特にそのことについて考えていなかった。でも、交通費の支給だけは打診しようと思ってその日は眠りについた。

 次の日、シッター先の家にお邪魔して面接をした。初対面は、子どもたちのテンションがとても高くてきちんと挨拶できなかったけれど、ご両親はとてもいい人たちで、その場で仕事が決まったことをほっとしながら帰宅した。
 たくさん話をしていく中で、お給料の打診はやっぱり必要なかったなと思った。
 いい場所に住んでいるからと言って、住んでいる人たちが裕福だとは限らないからだ。彼らが出せる範囲内で出してくれたお金が、私にとって十分であればそれ以上のお金なんて必要ない。平均の時給はあくまで平均であって、私は自分に過不足のないお金が手元にあれば、それで幸せにのんびりと暮らせる。


シッターの仕事について

 新しいシッター先では、日本人のお母さんにカナダ人のお父さん、8歳の男の子と5歳の双子の女の子という環境だった。
 日本語環境を作りたいということで、学校の送迎と子どもたちに日本語で話しかけること、日本語学校の宿題を見るということが仕事になる。大体2時間半から3時間半程度で、通勤時間はバスで往復2時間。私はバスに乗っている時間が好きなので、そこまで苦ではない。今は紅葉が綺麗なので、ぼうっと色づいたメープルを見ながら、ハライチのターンやゆる言語学やゆる民族学などのラジオを聞いている。
 すでに2回出勤しているけれど、子どもたちはとてもいい子たちだった。日本語の宿題をやりたくないと言ってなかなかやらないことを悩まれていた様子だったけれど、やっぱり私が他人だからなのか、ちょっとだけ渋々ながらもやってくれたり、一緒に遊ぶときは人見知りもなくよく笑ってくれた。おそらくお母さんが「きちんとしてね」と念押ししてくれてるのかなと思っているので、私の力というよりお母さんの力に支えられてシッターの仕事ができているんだと思っている。
 こうやって外部の人間のいうことを聞いてくれる様子や人見知りなく遊んでくれる様子を見ていると、ご両親の愛情が間接的に伝わってきて幸せな気持ちになってきて、この子たちがどうか幸せに大人になって素敵な人生を歩みますようにと心底願う。

 シッターの仕事は、面白い。特に子どもが言語を覚えていく過程は興味深いので、そういったことが好きだったりする人にもおすすめできる。
 子どもやお母さんお父さんに接すると、私の中にある何かが確実に変化しているのがわかる。人の家庭に入って、お母さんやお父さんの考え方を聞くのも好きだ。特に、日本人でなぜ海外に住むことになったのかも人ぞれぞ理由があり、それを聞くことも自分の人生の糧になっている気がして、楽しい。

 海外に出てくると、英語取得目的の人の中には日本人と一切話さないという人もいるらしいけれど、個人的には勿体無いことだなと思う。海外に来た理由は人それぞれ違って、その話を聞くことはいつかの糧になるんじゃないかと思うからだ。わざわざ日本人とかたまる必要はないと思うけれど、必要以上に邪険にするのも、どうなんだろうか。
 最近、海外に移住している方が「日本で嫌われる人は海外でも嫌われる」と言っているところを見て、そりゃそうかと納得した。言語が違うだけで、結局私たちは同じ人間なのだ。
 もし日本にきた外国の人が、「わたしは日本語を取得しにきたから、日本人以外とは会話しない」と言って同国の人にとても冷たくしていたり、話しかけられても無視して会話しない姿を見たら、きっと悲しくなるし、心から仲良くなることは難しいかもしれないなと思ってしまうだろう。
 この人は自分の目的次第で友達の関係を簡単に変える人なんだなと、信用できないからだ。もしかしたら、そもそも海外でつくった関係は友達ではなく、ただネイティブと話せればいいと割りきった関係なのかもしれないけれど。
 でもせっかく面倒な人間関係を構築していくのなら、吸収できるものはどんなものでも吸収していくと自分に深みがでるんじゃないかと思う。日本人と接してみたら、思いのほか、その人自身の魅力に自分が惹かれていくかもしれないし、同郷の人にしかわからないことで助けてくれるかもしれない。
 人それぞれの人生なので、いろんな人がいると思うけれど、海外で日本人と接するたびにふと思い出して、こんなことを反芻してしまう。
 


オペアともう一つ仕事を持ってみた感想

 今の私はシッターの仕事と並行して、オペアの仕事もある。大変そうに聞こえるかもしれないけれど、存外そうでもない。
 シッターは週2で3時間〜2時間くらいで、オペアとしての仕事は週3の夕ご飯作りと週6時間の子守りと掃除機がけ、週3の犬の散歩しかない。休みがないように見えるかもしれないけれど、シッターの仕事と夜ご飯作りと散歩はかぶっているので、週3で休みみたいな週があったりする。
 食住にお金が発生しないので、アルバイトで得たささやかなお金は自分の好きなように使えることも嬉しい。
 今のところ、忙しすぎて休む暇もない!ということはなかった。

 給料が発生しなくてもいいのでゆるいオペア先を選んでおき、もう一つ仕事をしたりすると食住の心配をすることなく、案外スローライフを満喫できるのかもしれない。個人的に、カナダは物価が高いことよりも賃貸が高過ぎることが問題だと思っている。カナダの人も、食材の高さに言及する人はほとんどおらず、大体賃貸の高さについて色々言っているからだ。フルーツは日本よりも安いし、他の食材も日本より高過ぎるという値段はあまり見かけていない。
 高い賃金を払っても、ルームシェアだと1人でお風呂を使うこともできないし、共通部分が多かったりして文化の違いにため息をつくことも多いのではないかと思っている。もちろん、オペアもファミリー先によるけれど。
 ただ、オペアの場合、お風呂が共有じゃないことも多かったりするので個人の時間を大切にしやすいこともある。私は2つのファミリーとも、お風呂は家族と別だった。
 今、私がお世話になっているファミリー先は2階・1階・ベースメントという構造で私は2階に、ファミリーはベースメントで生活をしている。1階は誰もいないし、2階も私だけだった。
 この距離感がとてもちょうどよく、1人の時間をきちんと確保できているのでとてもありがたい。ほとんど一人暮らしをしていると言っても過言じゃない距離感だ。


日本人ファミリーのオペア先について

 もしオペアを考えている人の中で、海外で日本人と接することがそこまで嫌ではないのなら、日本人のオペア先を検討してみることもありだと思う。
 トラブルがあっても母国語で対応できるというのは、思っている以上に心強い。食住というベースは揺るがないようにしておくことで、メンタルを不安定にせず、外に力を向けたいと思っている人にはおすすめだ。もちろん、ファミリー先にもよるけれど。

 私は英語獲得が第一ではなく、ホリデーメインなので、このゆるっとした海外ライフが気に入っている。実家のように安心できる家から一歩出れば、そこは海外。まるでどこでもドアみたいだ。
 海外に興味のある人は、私みたいにホリデー感覚で出てくるのもいいと思う。ワーホリに出てくるほとんどの人が英語取得や出稼ぎメインに見えると思うけれど、ホリデーでもいいのだ。
 日本でどうしようもなく行き詰まっている人や、なんとなく海外に行ってみたいと思っている人や海外移住の人の生の声を聞きたい人は、ぜひそのまま飛行機に乗って日本から気軽に飛び出てほしい。英語が不安でも、なんとかなるからだ。私はちっとも話せないけれど、アートギャラリーに行ったりマルシェで買い物して少し会話してみたり、古着屋で買い物したりして自分なりに楽しんでいる。自分のペースで英語を習得していっている。

 オペアは、そういう海外生活に対して不安がある人たちにとっても、良い制度だと思う。何度も言うけれど、もちろんファミリーによっていい経験になるかどうかは大きく変わってしまうのだけれど。
 私ののんびりオペアライフが、誰かの役に立てばいいなと思う。

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