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Au pair ワーホリ カナダ生活204日目 「2日で仕事を辞めて晴れやかな気分に」

 つい先日、仕事が決まったことを報告したと思うけれど、早速辞めた。これには色々と経緯があるので、つらつらとしたためたいと思う。



2日目にして何度も言われる「遅い」という言葉

 先週の月曜日、料理の作り方をメモして接客英語を勉強してから2回目の出勤をした。相変わらずオーナーは、優しく迎え入れてくれる。
 服を着替え、早速ウーバーイーツでドリンクのオーダーが入ったので、作れるかどうかを聞かれた。メモがあるのでそれを見ながら作ろうとしたら、盛大に溜め息をつかれる。「メモを見ながらじゃ遅いよ。覚えて」と言われ、そのまま作業を奪われた。
 ーー え? 私、2日目だけど。
 そう思わずにはいられなかった。
 トライアルのときは3時間しかなく、3日も間隔が空いた上にメモなしで作れというのは、個人的に無茶振りだとしか思えなかった。しかもドリンクは4種類ほどあり、どれもシロップや中身が違い、ましてや類似しているドリンクもある。シロップの差が1杯か2杯くらいの微妙なことも、私にとっては覚えづらかった。4種類なんて簡単でしょうと思うかもしれないけれど、私が覚えなくてはいけないことはこれだけではないし、1回も自分でつくったことがない。1回見せてもらっただけだった。
 そんな中でメモを見ずにつくろうとしたら、やっぱり間違えた。オーナーは盛大に呆れて溜め息をつく。
 私からすれば、「ほら見たことか」という気持ちでいっぱいだったので、正直、オーナーを見下すように睨んでいたと思う。理不尽な目にあったときは、目上だろうが立場が上だろうがお構いなしに感情が出てしまう性格だった。
 私は仕事でもなんでもそうだけれど、「早く覚えることができないお前が悪い」という精神を基盤にした教え方は心底嫌いだ。教えている人が下手くそな場合もあるし、そもそも日数が足りていない場合もある。そして大体は教え方が下手だし、短期な人こそ相手を悪者にした教え方をするので、本当に気分が悪い。
 しかもこのとき、私が以前教えてもらっていたドリンクの名前と作り方が一致していなかった。多分、前回オーナーが言い間違いをしていて、私はその通りに作ろうとしたのだと思う。
 この後も何回も「遅い」「早く」と言われ続けた。
 この店では、オーダーが入ったらすぐにオーダー名を叫ばなくてはならない。その1、2分のもたつきが命取りになると考えているからだ。
 私はオーダーをとる機械を初めてさわるので、オーダーを叫んだ後にせっせと入力していると、「いいから早く叫んで!」と怒られたので、「もう言いました!」と強めに言い返す。オーナーが横槍で口うるさく言ってくることもあって、手順を覚えようとしているのに混乱することも嫌だった。
 また、キッチンの作業をこちらで担うこともあったのだが、教えてもらっていない作業だったので、オーダーを通したのに全然お客さんに品物がいかなかったりすることもあった。たとえばカレーなどはもうルーとご飯を盛り付けるだけなので、キッチンでつくるのではなく、ウェイトレス側でつくって出すなど。教えてもらっていなかったらできない作業なのにも関わらず、オーナーは私のせいにしていたと思う。小さく首を左右に振りながら呆れていたからだ。
 他にも、ウーバーイーツのオーダーの受け取り方も何度聞いても同じところで説明がぐしゃっとなって分からなくなるので、「こいつアホだな」という溜め息をつかれた。みんなからしても、私が理解できていないように感じるかもしれない。
 オーナーは、自分が教えたいところだけを私に伝えたい。私はその部分はわかったけれど、他の疑問を解決したくて質問をしたい。でもオーナーはずっとその自分が教えたいところだけを伝えてくるのだ。だから、平行線だった。
 唯一私に悪いところがあるとすれば、英語が拙いというところだ。でも、それを許容したのはそちらなのだから、そもそもこのトラブルは想定済みでなくてはおかしい。
 さらに言えば、この英語の拙さでももう1人の女性スタッフとはコミュニケーションがとれていたのだ。質問をしても理解してくれたし、私は彼女の指示を聞いて動いていた。

 そして最後に、ゆで卵の殻を向いていたのだが、「あなた遅いよ」と言われ、この日は終わった。
 帰ろうとすると、賄い食べていきなとオーナーに言わた。キッチンはせまいのでリュックを置きに戻ろうとすると、「賄い、自分で準備して」と言われてイラっとする。そんなことはわかってる。
 色々教えてくれた女性スタッフにお礼を言って、最後賄いのカレーをタッパーにつめて帰ろうとすると、その女性が「この辺りのも持っていっていいんだよ」と煮卵をくれたり、他にも入れたりしてくれた。
 お疲れ様でしたとその女性に言うと、今日1日ずっと淡々としていた彼女が最後ににっこりと笑ってくれて、それだけがこの日の救いになった。
 人はいいけれど、私の能力ではここで働くことは難しそうだなと感じた。


シッターの仕事が入ってくる

 帰路についたバスの中で、iPhoneをチェックするとホストマザーから連絡がきていた。
 「シッターさんを募集している人がいるみたいなのですが、興味がありますか?」といった内容で、私はすぐさま「はい! 興味あります!」と返事をうった。正直、このレストランで働き続ける気持ちは一ミリもなかった。
 なんてタイミングが良いのだろうかと、自分の運に感謝する。
 言うのを忘れていたが、このレストラン、そもそもオンタリオ州規定の最低賃金である16.55CADを下回っていた。1人でできるようになるまでは14CAD、1人でできるようになれば15CADになるということらしい。尋常じゃない忙しさの上に、そもそも研修期間もまともに教えてもらう環境ではなかったこと(私から見たらそう思えた)を鑑みても、ここで働くことは自分の心を悪くすることになるだろうと思った。
 そして、辞めることを決意する小さな出来事がこの日の夜に起きることになる。


毎日夜に皿洗いに来てくれと言われる

 この日の夜、お風呂も済ませてベッドの中にもぐりこんでいるとメールが届いた。オーナーからだった。
 「次の出勤から夜に変更できないか。皿洗いと締め作業をしてほしい。週5で来てほしい」ということだった。2日目にして、ポジションが変更されることになる。
 よく言えば私を有効活用しようと模索してくれた結果だろうけれど、なんだか複雑な気持ちだった。さらに言えば、当初私から提示した「週3」ということもすっかり忘れ去られている始末。
 確かに、皿洗いしてお金をもらえるなら楽だなと思ったけれど、皿洗いをし続けて何になるんだろうと少しの空虚感を抱いた。職業に貴賎はないけれど、少なくとも私にとっては意味がないように感じられた。みんないい人たちだったけれどもう少し冷静になって、「お金を得るだけでいい」という考えでここにいないことを改めて思い直す。
 シッターの仕事が決まるかどうかは分からなかったけれど、それを理由に辞めることを伝えた。夜はシッターの仕事があるから難しいので、辞めますと伝えると、すんなりと話がついた。
 本当は辞める前に、「週2日でもくることはできないよね?」と聞かれていたけれど、そこにしがみつくことはやめた。週2ならお小遣い稼ぎでいいかもなと思ったけれど、シッターの仕事が決まったら今のオペア先の仕事、皿洗いの仕事、シッターの仕事と3つのかけもちになるので、お金のことでせかせかしたくない私はレストランの仕事を手放すことにした。
 こういうとき、次の仕事が決まるか分からずにキープすることが裏目にでることがあるので、嫌なものはあっさりと手放すことが吉だと思っている。保身に走って嫌だと思っていることを手放せないと、後々、自分の首を絞めることも多いからだ。
 明日、面接に行くので子どもたちとの相性が良いことを祈るけれど。まあ、ダメでも住むところも食うところもあるので、なんとかなるからまたのんびり仕事を探そうと思っている。

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