さらばアッレグリ
私はアッレグリが好きだ。
その理由は〔過去〕と〔現在〕にある。
アッレグリの〔過去〕
アッレグリの〔過去〕は浪漫だ。コンテの後を継ぎユベントスを優勝させた。
戦術でガチガチに縛られたチームに柔軟さを持ち込み、熟練のカルチャトーレたちがより自分たちの良さを出せるようになった。
采配も絶妙であった。負けてる状況でSBを投入し、逆転勝利してしまう…わけがわからない!アッレグリなりの理屈があり、理解できないファンにはマジックに思えた。
古典的なCFと見られていたマンジュキッチをサイドMFにコンバートし見事にハマる。実に理にかなったアイデアだが、誰も思いつかないようなものであった。
アッレグリの〔現在〕
アッレグリの〔現在〕は少し複雑だ。彼が今率いているチームは第一期(2014-19)とはまったく違うチームである。勝利のDNAはロッカールームから消えてしまったわけではないが、CR7プロジェクトとパラティチの『戦略』によりスカッドの構成がかなり歪になっていた。
それでも彼はやりくりする監督である。いまの選手たちとともに『負ける確率が低いチーム』を作り続けている。美しさはいらない、勝ち点0にならないことが最もたいせつなことだ。
ユベントスにはピッチ外であまりにも多くの問題が発生してしまった。2022/23、フロントによる不正会計疑惑に伴う勝ち点剥奪(しかもシーズンの途中だ)に揺れるチームを引っ張っていくことができたのはアッレグリ以外にはいないだろう。
近年になって、『実はアッレグリはエコロジカル・アプローチをしているのではないか?』と論じられるようになってきたのも興味深い。
ポジショナルプレーとはまったく異なるアプローチでチームを作るそのやり方は「再現性がない」「ビルドアップの形が見えない」と批判されることが多くなった。
しかし、実は戦術的な型よりも選手たち全員が共通理解し、『理にかなった判断』の積み重ねでプレーしていくというアプローチをしているようだ。
つまり、ピッチ上で見えるサッカーは「カテナチオ」や「ロングカウンター」など古くさく見えるかもしれないが、その中身は選手の主体性を重んじる新時代のサッカーをしているのではないか。
いや、わからない。
わからないのだ。本当はアッレグリがどうしているのか、どうしていこうとしているのかは。
ピッチで起こっていることを分析して、その意図を後追いしていくしかできない。
だから文末も『ようだ』とか『ではないか』となる。
その点も含めて、実に不思議な魅力を持った監督だと言える。
アッレグリの〔未来〕
個人的な意見。アッレグリには〔未来〕を託すべきではないと思う。
キエーザとヴラホヴィッチが躍動する未来
NextGenからの昇格組がチームの中心となる未来
アッレグリは今あるものを調理するには素晴らしい料理人ではあるが、新しいメニューを考えることは基本的には苦手だ。
選手には『理にかなった判断』を求めるが、それは『アッレグリが考える理にかなった判断』だ。アッレグリは古来からのカルチョ観から脱却することができない。
「提案型サッカー」の考え方とは違うところで、ズレたエコロジカル・アプローチをしてしまっているの で は な い か 。
キエーザとヴラホヴィッチが代表で輝くのは理由がある。彼らが活躍するための「仕込み」がある。アッレグリはその「仕込み」はしない。
もちろんチームの厳しい台所事情という最大の原因がある。食材がなければ料理はできない。だからありあわせの料理が得意なアッレグリなのだ。わかる。でも、それはいつまで?
ミレッティがレーンの間に入る。カンビアーゾがポジションを次々に変化させる。ウイングとして結果を残すスーレが帰ってくる。イルディズがいる。
ユベントスには輝かしい未来が見える。これほどまでにいま花開こうとしている若い才能が集まっている時期があっただろうか?
〔現在〕を重視しすぎると〔未来〕に移行できない。負けないことを最重視すると、チームビルディングのチャレンジができない。
アッレグリはおそらく勝ち続けるだろう。ギリギリで。優勝するかどうかは他のチームがいることなのでわからない。
私はアッレグリが好きだ。
これほどまでにユベントスのDNAと相性か良い監督はなかなかいない。犠牲的精神によるハードワークで勝利するのがユベントスだ。
しかし、ユベントスの〔未来〕を考えると
なにか大きなことを成し遂げそうな若者たちを見ていると
「さらばアッレグリ」と言うときが来ているのかもしれない。
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