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冷めたエッグタルトは好きですか?


2014年2月。
何はともあれこの寒々とした写真から。


疲れた。甘い。あぁひと段落。

ニューヨーク・クイーンズ地区。出逢いは、凍てつく寒さの雪の路上。

卒業と新生活の端境で、スレスレ社会の”風来坊”だった10年前の冬のこと。

さびれたモールを出てすぐ、あつあつのエッグタルトを夢中で齧った。

ニューヨークに到着したら大雪で、重たいスーツケースをひいてやっとたどり着いて、初めて口にしたものがこれだった。

・・・
中国語の手書きで「蛋撻(ダンタッ)」と乱暴に書かれた字面では気づかず、ホワホワ湯気の立つ、エプロンおばさんの手元を見て気が付いた。

あっ、エッグタルトだ。
マカオ、香港、ポルトガルもあるよね。。

しかし違いを知るに至らず、種別について調べて選ぶ元気も無い。

適当に選んだ。これは“なに風”なんだっけ。


エッグタルトは「タルト」と言っても、いわゆる硬いタルト生地ではなく、薄いパイ生地の中に焼き目のついた、カスタードクリームが入ったお菓子。
英語で魅力をあらわしたら "crunch outside, soft inside"となるだろうか。

日本で買うと、相場は200〜270円。
さびれたクイーンズ地区のモール(滞在後期にはすっかり気に入ってヘビーユーザー)では100円前後だったかもしれない。


・・・
それから3年が経ち、東京のポルトガル料理店で私は見直した。青い陶器の上に載ったそのフォルムが可愛らしい。

デザートでバニラアイスが添えられていたのは、代々木八幡に2店あるポルトガル料理の名店クリスチアノ。

そのエッグタルト専門店に「ナタデクリスチアノ」がある。
私はそこまでエッグタルトのファンでは無いので、テイクアウトに並ぶほどではないが、「れっきとしたもの」が食べたい方にお薦めである。


〈グルテンフリー〉のエッグタルトが買える店もあった。グルテンはフリーかもしれないが、表面のお砂糖は不健康なくらいじゃりじゃりしてなかなか美味しかった。
粉ものというより、卵のやさしいプロテイン配合なのだ。

”バカリャウ”というタラが沢山使われるので文字通り”鱈腹”ポルトガル料理を食べた後のデザートよりも、疲労時のスタミナ回復おやつに向きだと思う。

そして、焼き菓子なのに意外とデリケートで日持ちしない。

ちょっと口惜しいけれど、初めてでもエッグタルトの醍醐味を味わいたい人は、持ち帰って速やかに冷凍、オーブントースターで温め直してあつあつ、クリームをとろっとさせたところを皆でハフハフなんていいかもしれない。


今になって振り返ると「ニューヨークの凍てつく路上で、焼きたてアツアツ」なんていうあのタイミングは、実はすごくかけがえのないものだったんだ。


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