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海外出店のリアル - ローカライズ「しない」という戦略

日本企業が海外展開する際、現地の文化や生活習慣にあわせてローカライズすることが重要と言われる。一方、ローカライズしすぎると、日本企業としてのオリジナリティを失い、現地企業に埋もれてしまいかねない。

先日、海外進出している飲食店の事例をまとめた「海外出店のリアル」という本を読んだのだが、飲食店ごとにローカライズのバランスに関する考え方は様々であり非常に興味深かったので、まとめておこうと思う。

ローカライズの程度の事例

まず、あえてローカライズしないという戦略を取っている MoMo Paradis。米国ではロサンゼルスやサンディエゴに出店している。店をローカライズしないことで、現地の「パクリ組」とうまく差別化できているという。

「うちみたいなビジネスモデルだと、あまりローカライズしちゃうと、長いライフスタイルではビジネスが維持できないと考えています。短期的に考えればローカライズしても、それほど悪くないんですよ、価格も味も現地の人々が求めているものなのだから。でも目先の収益よりも、長い年月をかけて、世界的なブランドとして、店の文化を現地にじっくり育て上げることの方が大事だと思っています。」

また、ASEANを中心に展開している北海道酒場は、「50%オーセンティック、50%ローカライズ」という戦略を取っている。現地の「なんちゃって和食」と同化しないように、守るべきところは守りながらも、ローカライズが必要と感じた部分は柔軟に変えていったという。

「居酒屋なんだから、『そんなスタイリッシュな、高級そうな料理にしてもね…』、という感想は正直、僕たちの中にはあったし、『いえ、これが居酒屋スタイルなんです!』と日本のスタイルを押し通すこともできたんだけれど、でも『50%はローカライズなんだから』と試しに洋皿に持ってみたら、現地パートナーは『これだ!超クール!こっちの方が全然いいよ!』という反応だったんです。日本から持っていった和食器はほとんど使わなかったですね。」

ベイエリアにおけるラーメン屋のローカライズ

自分の住んでいるベイエリア(カリフォルニア)にはラーメン屋が多く存在する。大半の店舗は現地向けにローカライズしており、米国人が多く訪れていて繁盛しているが、ローカライズをほとんどしていない店舗も一部あり(例:Ramen Hajime)、客層はアジア人が多いがこちらも繁盛している。

ベイエリアは、以下の2つの理由により、米国市場の中でもローカライズしていないラーメン屋がうまくいきやすい環境であると感じている。

アジア人の割合が多い:米国におけるアジア人の割合は7%と言われているが、ベイエリアは移民が多く特殊な環境で、アジア人の割合は30%に達する。アジア人は日本の本格的なラーメンが口にあう傾向にあり、対象顧客の範囲が広い。

米国人もラーメンを食べ慣れている:上記の理由によりカリフォルニアには多くのラーメン屋が存在し、その数は300-400店舗と言われる。その結果、米国人もラーメンを食べる機会が多く、ラーメンに対する舌が肥えている。

一概に米国市場に向けたローカライズといっても、米国は土地が広く、地域によってその特性は大きく異なる。例えば米国中部で本格的なラーメン屋を出店しても上記のようにうまくいく可能性は低そう。出店する地域のことを深く理解した上でローカライズの程度を考えることが重要だと思う。

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