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WEBTOONを書籍化するということ②

11/20にクリエイターの皆さま向けの説明会を開催させていただきました。
その際に、書籍化に関してはいくつかご質問を頂きましたが、時間の都合などで、簡単な説明になってしまったので、改めて書きたいな、と。
「連載作品の書籍化」を打ち出すWEBTOONレーベルはまずないでしょう。
理由は2つ。

①WEBTOONを版面コミックスにしても売れないから
②紙本の出版機能を持たないところが多いから

まあこんなところだと思います。
わざわざ紙本にする理由がビジネス上なければ、当然その機能を創るメリットもない。どこか既存の出版社が、紙本のみの条件で代理出版してくれれば助かります…、みたいな感じかなと。
ここでいったん、手前味噌ですが、僕の知見を記させていただきます。
僕は、2016年から今まで、KADOKAWAで韓国WEBTOONの日本での書籍化をメインプロデュースしてきました。

まだ日本でWEBTOONがそこまで騒がれていない頃からです。
『皇帝の一人娘』を皮切りに、『俺だけレベルアップな件』、『ある日、お姫様になってしまった件について』、『捨てられた皇妃』、『外科医エリーゼ』、『彼女が公爵邸に行った理由』などなど。これまでに50タイトル以上は出版しています。

トータルの部数で言うと600万部以上は確実に出していると思います。(ちゃんと端数は数えてないのですが)
上に挙げさせていただいたタイトルは、どの作品も売れました。
公称できる範囲で言うと、『俺だけレベルアップな件』は累計で100万部を超えていますし(しかも紙本のみ)、『ある日、お姫様になってしまった件について』に関しては、それを凌ぐ部数を売り上げています。
その他のタイトルも、日本で十分に「ヒットした」と言える数字です。

そして、確かに2023年現在、WEBTOONの書籍化のアベレージは2021年ごろを皮切りに下がっています。
その理由は、作品数が増えすぎてピーキングしたことや、出版市場の中での紙シェアの衰退、など、大きな背景でいろいろなことが作用していますが、WEBTOONはWEBTOONで浸透したことが大きいでしょう。
要は、「WEBTOONとコミックスのフォーマットの違い」が明確にユーザーに理解されたこと。

もっと言うと、スマホとアナログの差。
これはどちらが言い悪いではなく、別物なのだということです。
当然、これからはますますWEBTOONがシェアを伸ばしていくでしょう。
では、今後、WEBTOONの書籍化に勝ち目はあるのか。
これに関しては、説明会でも少し言及させて頂きましたが、あると思います。

WEBTOONとコミックスの相関関係を分けると以下になります。

①WEBTOONもヒット、コミックスもヒット
②WEBTOONはヒット、コミックスは売れない
③WEBTOONも売れない、コミックスも売れない
④WEBTOONは売れない、コミックスは売れる→(見たことないです。)

当然、目指すのはwin-winとなる①です。
これは、「マンガ」としてのクオリティがフォーマットに左右されることなく高い場合のみ起こりえます。
多くのタイトルは、想定する画面や読み方が異なるので、あまり両立しません。

その、フォーマットの違いからくるクオリティのギャップを具体的にはどう埋めるのか。
これに関しては、韓国の経験が1つヒントをくれました。
日本で売れている韓国WEBTOONコミックスは、全てではありませんが「韓国でもコミックス出版されている」のです。
それが何を意味するのか。

最初から「版面化を想定したWEBTOON制作をしている」ということです。
例えば、縦読みのコマからははみ出す部分も版面化を想定して書き込んだり広げたりしています。

見えないですが、clipデータではコマ以外の描写が存在します。
これだけで、視線誘導が縦だけではなく、天地左右にアレンジして版面化することが可能です。
他にもいくつかアジャストさせる秘訣がありますが、そこは企業秘密ということで。

ので、Pikaloのタイトルを書籍化する立場の僕の答えとしては、
「版面化を想定したWEBTOONを制作し、クオリティ担保することは可能、ただし手間暇がかかるよ」
です。

このレーベルでは、せっかく3社がけっこうな人数を出して集まっているので、それを実践していこうと思います。
そして、書籍化するもう一つの大きな理由が「クリエイター支援」です。
作家さんはもちろん、編集者やプロデューサーも、紙本という形になる達成感やモチベーションを、作品制作に昇華して、より面白いものが生み出されることを望みます。

結局、本質的には、WEBTOONとはいえ、IPのクオリティを高めることそのものが、共存手段になるのかなと。
紙本が嗜好品になっていくからこそ、これまで以上にお値段に恥じないものにしなければならないと強く思います。


瀬川@KADOKAWA
マンガ編集歴22年。
コミックジーン、ジーンピクシブ、ジーンLINE、韓国WEBTOON書籍化事業、などをいろいろと。
今はwebtoonはもちろん、海外コミックの開発とかライツインとか、日本のマンガを世界に広げたり、逆に世界のマンガを日本で広めたりするプロデュースをメインにしています。

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