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「眠りと死」〜すごい名前の日本酒〜

 徳島県にある酒蔵「三芳菊酒造」の馬宮亮一郎さんが、「眠りと死」という意味深な銘柄の日本酒を造りました。花束を抱えたまま川面に浮かぶ女性がラベルとなっています。
 これは、1851年~1852年にミレイによって描かれた絵画「オフィーリア」(ロンドンのテート・ブリテン美術館所蔵)をオマージュしたものです。
馬宮さんは、以前からこの絵画が気に入り日本酒のラベルにしたかったのですが、著作権の問題があり実現しませんでした。そんな折、友人が「オフィーリア」を写真で再現したことを知り、日本酒のラベルに使わせてもらえるよう承諾をとったのです。馬宮さんは、その絵画から受けたインスピレーション「眠りと死」を、そのままお酒の名前にしました。
 その日本酒は純米大吟醸(精米歩合50%)1回火入れで、酵母は徳島酵母、酒米は徳島県産山田錦100%です。グラスに口を近づけるだけで、フワッとした果実の香り。口にするとフルーティだけどキレの良いさわやかな後味。これはスゴイ、夢見心地で何杯も飲めそうでした。ネーミングだけでなく、味わいもすばらしいものです。
 約100年前、この作品に魅せられたのは近代日本を代表する文豪・夏目漱石でした。漱石はロンドンに留学中に神経衰弱に陥りましたが、そんな彼の心を癒してくれたのが、美術館にある名画の数々だったそうです。帰国後、「オフィーリア」がもとになって生まれたのが、漱石の初期の代表作「草枕」です。
 日本酒の1銘柄に、この様な隠れたエピソードがあることを知り、ほろ酔い気分で過去と現在を旅した気分になりました。

※オフィーリアとはウィリアム・シェイクスピアの4大悲劇のひとつ「ハムレット」のヒロインの名前です。この絵画では、彼女がデンマークの川で溺れてしまう前に、歌を口ずさんでいる姿を描いています。

三芳菊酒造へのお問い合わせは、Tel : 0883-72-0053です。
馬宮亮一郎さん自身が、「眠りと死」について語っている動画を作成しました。チャンネル登録をして頂ければ幸いです。。


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