頭を持ち上げるエクササイズについて③

頭を持ち上げるエクササイズについてシリーズ、3回目になります。1回目では、腹直筋を使って頭を持ち上げることをピラティスではおこなわない理由について述べました。また、頭を持ち上げることが苦手な人は腹筋の弱さが原因ではなく、身体の使い方・動きのクオリティとテクニックを身につけることで体幹が強化されることにも触れました。

前回(頭を持ち上げるエクササイズについて②)は、腹直筋と腹横筋・脊柱起立筋群と多裂筋の「蛍光灯とダウンライトの違い」についてみていきました。また、多裂筋と腹横筋がつながり合っていて、多裂筋のスイッチが入らなければ、腹横筋をつかうことができないこともお伝えしました。

「脊柱起立筋群(蛍光灯)の緊張を軽減することで、多裂筋(ダウンライト)のスイッチが入る。多裂筋から筋膜を介してつながっている腹横筋(ダウンライト)に収縮が起こる。そして頭を持ち上げる動きにつながっていく。腹直筋(蛍光灯)のスイッチが抜けているので、腹横筋によって頭は持ち上げることができる。」

質の高い呼吸動きのテクニックとクオリティがあれば、首や肩などを緊張させることなく、優雅に美しく体幹で頭の重さを処理して持ち上げることができます。

今回は質の高い呼吸についてみていきます。とはいえ、呼吸について紹介したいことは、あまりにもたくさんあります。今回は、「頭を持ち上げる」という目的に対して必要な情報に絞っていきたいと思います。

これまでみてきた多裂筋と腹横筋に加えて、呼吸というイベントの主人公である横隔膜を加えてみます。

前からもみてみます。背中側(後ろ)には多裂筋、前側から背中側にかけて腹横筋、(肺の下)内臓の上に横隔膜という位置関係になっています。

肋骨の内側に肺があり、息を吸うと呼吸は肺に入ります(腹式呼吸だったとしても!)。横隔膜は息を吸うと下に下がり、吐くと上に上がります。

息を吸うと、横隔膜は上に上がっていくような感覚がする人もいると思います。息を吸ったときに肩が上がってくる感覚が強い人が、息を吸うと横隔膜が上に上がると勘違いするケースが多いようです。

スポーツなどをテレビ観戦していて、アナウンサーが「肩で息をしている」と言うと、少しネガティブな印象(「無理をしている」「バテてしまっている」「過剰に緊張している」)だと思います。肺に空気が入ってくるためには、横隔膜が下がる必要があるのです。横隔膜が上に上がると勘違いしている人で、頭を上手に持ち上げることができる人に私はこれまで出会ったことがありません。おそらく間違った身体イメージが、首や肩を緊張させてしまうからでしょう。

息を吸って横隔膜が下がっていくと、腹圧は高まります。そして、身体がリラックスした状態であれば、坐骨が左右に広がります。坐骨がどこにあるのかイメージしにくい人も多いと思いますので、息を吸った時に「お尻の穴が広がる」イメージをしてください。

整理すると、今回は頭を持ち上げるエクササイズの持ち上げる前段階、準備の場面での呼吸「息を吸う局面」での情報をお伝えしました。

息を吸うと、横隔膜は上がるのではなく、下がる(だから、肩や首が緊張する必要は本来ない)。横隔膜が下がることで、坐骨が左右に広がる(お尻の穴が広がる)。

エクスパンショナルピラティスのエクササイズなどの誘導で、インストラクターから「息を吸うと、お尻の穴が広がります」といった案内がされることがあると思います。広げるのではなく、呼吸をすることで自然と広がっていく事実を感じることで呼吸の質(動きの質)を高めたいとインストラクターは、意図しています。頭を持ち上げたりする動きの前の動きが、呼吸とも言えるでしょう。このクオリティでその後の動きの質も決まってくるので、とても重要です。次回に続きます。

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