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「マックのスマイルって結局なんなの?」〜マクドナルド元クルーが考察する〜

マクドナルドは世界的に店舗展開をしている誰もが知ってるファストフード店ですよね。私はこれまで17カ国程旅行をしてきましたが、その中でマックが無かった国はありませんでした。

そんなマックにも少しながら出展国に合わせたブランディングやマーケティング戦略を行っています。インドのマックがビーフを一切提供しない(できない)代わりにビーガンを提供するのは有名な例ですね。

日本のマックでは「スマイル」をブランディングの柱として接客サービスに力をいれてます。かつて実際にマックで働いていた私は、実際に受付で満面の笑顔で接客をする素晴らしいクルーを何人も見てきました。

客からすればスマイルについて語れと言われれば、「気持ちいい接客」といったところで話は落ちつくでしょう。
「そんな議論することか?」と思うのは至極当然だと思います。私もかつてはそうでした。

私が働いていた時は主にカウンター周りとデリバリーの勤務を始め、お客さんとのタッチゾーンに常に立っていました。そんな感じでクルーになった時に、スマイルの事を改めて考えてみると「客へのおもてなし」以外にも機能があるのではないかと思うようになりました。
今回はそんなスマイル本当の役割について感じた事を書いてみようと思います!

スマイルのオフィシャルな役割は「他社との差別化」という事です。

例えば引き合いに出すのをサイゼリヤだとしましょう。サイゼリヤは、ミラノ風ドリアを300円で提供する低価格を売りにしてイタリアンを身近なものにした功績者です。

そのため、薄利多売といったマーケティングは大まかにマックと同じ方向性をもっていると思うのですが、サイゼリヤでおもてなしの類いのイメージはすぐに浮かびますでしょうか?

この観点での要旨はサイゼリヤは接客ではなくあくまでも商品やコスパのイメージを持たれる会社だという事です。

マクドナルドが伝えたい事
商品クオリティ<接客サービス

サイゼリヤが伝えたい事
商品クオリティ>接客サービス

イメージ戦略の(プロモーションの力点)の違いがあります。

現にマクドナルド採用のHPを見てみると、ビジネスの基盤は「ピープル」としています。それだけ「人」によるサービスを重視している会社だということでしょうね。

このような理念の下で働いている側からすると、特にデリバリーで感じることが多いのですが、顧客リピーター率がかなり高いなと感じます。Uberや出前館といった競合他社からマクドナルド直営のデリバリーを選び続けるお客さんが一定数いたのは、もしかしたら引き渡しの短いやり取りの間での経験=「人によるサービス」で差別化ができていたからかもしれません。

さて、ここまでは基本的にサービスの観点から話を進めてきましたが、今度は働く側からスマイルの機能性について考えていきます。

クルーとして働き始める際に、オリエンテーション動画をタブレット等で見ることがあります。
内容をこんな感じです。

「あなたのネガティブ・ポジティブは他の人に伝染するよ!怖い顔していると、みんな嫌だよね!だから何時もポジティブに、ニコニコでいようね!」

ネガティブから
ポジティブへ

では、オリエンテーションが終わったので、早速現場に入ってみると、現場はとんでもないカオスぶりです。

画像はイメージです。

現場は昼ピーク。
お客さんが一気に傾れ込んで、レジは大行列。

中にいるクルー達はアスリートの如くキビキビと動き回り、あまりのカオスっぷりに酔いそうになります。

飲食店を経験されている方は、もしかしたらこれと似た経験を持っているかもしれませんね。

現場では、それぞれのポジション(受付と厨房とか)の間はしっかり連帯していかなければいけないものです。
ピークの時は現場全体が張り詰めた空気になります。
人は余裕がなくなる時当然ピリピリしてしまう、そういう生き物です。
そして不幸にも、誰かのミス、不手際で連帯が崩れかけた時により一層ピリピリしてしまうと特に初心者や高校生のクルーは委縮してしまうなんてことはありますよね。

(スマイルの隠れた機能その1)
張り詰めた空気感を、強制的に笑わせる事で緩和させる。

もうちょい話を広げます。全国的にに店を構え、100円から食事がで切るマクドナルドには様々な客層が来店しています。
殆どのお客さんは普通なのですが、時々、謎に不服な表情をする方や理不尽な苦情を申し立てる方がいます。
私がいた店はその傾向がやや強く、1日中働いていると、その日のうちで2〜3人くらいカスハラ系の対応がありました。


当然、そのような対応はカウンター係が行います。「なんでこんな些細な事に怒鳴られなきゃいけないんだ」「これは自分のミスじゃないのに、、、」クルーも一人間なので思う事は色々あります。しかし、気持ちの浮き沈みに任して接客をしていたら良心的な客すらも逃してしまうリスクが出てくるだけです。
サービスに敏感かつ多様な客層を抱えるマクドナルドで働くためには、何かトラブルが起こっても、平常心を保つ必要があるということです。
それならばスマイルという仮面を被り平常心を保ちましょうという事なのです。

(スマイルの隠れた機能その2)
表情の起伏を見せないための仮面

このように、スマイルの機能は、ハードワークな労働環境下と日本のおもてなし文化の迎合を両立した結果だと言えるでしょう。

個人的には、マクドナルドで働くことは自分のアルバイト経歴の中では大変な仕事の部類に入ります。

感情に左右されずに、表面だけでも笑っていようというのは、かなり悲観的な見方と思われるかもしれません。

しかしながら、沢山のお客さんを対応しながらスマイルを続けるというのは、本当に気概と気力の要る事です。
働いていた当事者としても、あの混沌としている職場で動き続けるだけでも大変なのに、スマイルもしっかりとお届けするクルーには頭が下がります。

まさに、彼らが営業の真骨頂なのです。




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