理髪師だった須崎節子(すざき・せつこ)さん 移民の肖像 松本浩治 月刊ピンドラーマ2024年3月号
「本当に皆さんに良くしていただきました」―。こう語るのは85歳まで理髪師として働いた須崎節子さん(92歳、熊本県出身、旧姓・蓑毛(みのも))だ。背がスラッと高くて姿勢もよく、とても92歳とは思えない若々しさが印象的だ。
10人兄妹の2番目に長女として熊本県で生まれた節子さん。父親が戦前、海外のブラジルに行くか、親せきを頼って鹿児島に引っ越すかで迷っていたが、結局は鹿児島行きを選んだという。しかし、鹿児島で空襲に遭い、戦後は家族で熊本へと戻ることになった。節子さんは15歳の時