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「12歳の恋愛カウンセラー」第2話

★第2話「メンズエステセラピストの憂鬱」

心愛のメール
『ゆかさん。
 今までの恋愛の経験と
 なぜメンズエステのお仕事をされているか、
 もう少し詳しく経緯を教えていただけますか?』

セラピストゆか、施術をするマンションの一室で
心愛のメールを見ながら返信の文章を打っている。
ポチポチ。

●セラピストゆかのストーリーへ。
※メールの文章とともに、セラピストとして働くゆかさんの日常コマが続く。

『はい。

私はごく普通の家庭に生まれました。

お父さんとお母さんはお見合い結婚。
それでも二人はいつも仲良しで、私は大切に育てられました。

周りの女の子と同じように、学校に通って、部活をし、習い事もさせてもらいます。
お父さんとお母さんは、渡しの将来を期待して、時にはモメながらも、お金をかけて育ててくれました。

小学生の時の将来の夢は、お母さんと同じ公務員です。
我ながら、堅実な性格だと思っていました。

でも、本当は誰かのお嫁さんになるのが夢でした。
両親みたいに幸せな家庭を作りたかった。
だけどそんなことは恥ずかしくてかけるはずもなく。

中学校にあがったら好きな先輩ができて、高校生になると、同級生と付き合いました。これが初めての彼氏です。
受験勉強を頑張って、都内の大学に通わせてもらいます。

でもそこで彼氏とは遠距離となりすれ違いが増えるようになりました。
あんまりデートもいけないまま、別れました。

傷つきはしましたが、彼女には新しく好きな人ができていました。
それは、バイト先の居酒屋で働いている先輩です。

先輩は、彼女よりも偏差値の高い大学に通っていて、話が面白く、元カレよりも背が高い。
一目で素敵だなって思いました。
バイト先に行くのが楽しくなります。

ある日、バイトの終わりに先輩から飲みに誘われました。
緊張して飲みすぎてしまい、気づいたらそこは先輩の一人暮らしの部屋。

言われるがまま、セックスをしました。

その日から、バイトに行くのに変に緊張してしまうようになります。

でも、バイト先の同僚から先輩には彼女がいることを聞かされます。

先輩に振り向いてほしく、ファッションやメイクに力を入れるようになりました。
だけど、先輩は結局遊び目的だったようです。

男はそんなもんだと理解した私は、恋愛をするのが面倒になっていきました。
そこから私は、情緒不安定になり、自暴自棄になりました。

でも、先輩に振り向いて美容に力を入れた私は、今まで以上にモテるようになっていきます。
彼女がいる男を、私の方に振り向かせるのに快感を覚えるようになっていきました。

罪悪感はありません。
私も同じ思いをしたのですから。

ちょっと色目を使ったら男はすぐになびくので簡単です。

もうバイト先に用もなくなった私は、居酒屋バイトをやめて新しいバイト先を探し始めます。

そして、遊びなれている大学の友達に教えてもらったのが、メンズエステのバイトです。
いままで、お客さんに怒られながら1日必死で働いて得た8000円。
メンズエステでは、1時間ちょっとマッサージするだけですぐに1万円以上稼げます。
もう、普通にバイトするのがバカバカしくなってしまいした。

今思うとこれが恋愛観と金銭感覚が狂ってしまうきっかけでした。

私はいつのまにか、完璧なメンエス嬢になっていました。

その時大学の友達は、同い年の男と遊んでいました。
遊びに行く場所は、カラオケとか、安い居酒屋。
夜ご飯は、ファミレスなんてこともあるみたいです。

そんな話を聞くと、同世代の大学生の男に全く魅力を感じなくなってしまいました。

でも、たまに働いていると寂しくなる時がありました。
なんだか満たされないような。

それから今まではあっという間。
同世代の女の子がどういう人生を送っているのか見当もつきません。

私ももう29歳になります。
一生に一度の青春、20代。
これで終わっていいのでしょうか。

ココア先生、私はどうすればよいのでしょうか。
教えてください』

心愛、メールを読む
「うーん。
 まあまあ重症だな。
 30歳前でヤバイことに気づけたのは幸いだが……(←12歳の小学生)」

部屋の本棚から何冊か少女漫画を取り出して読み始める心愛。

●(セラピストゆかの回想続き)
マンションの一室にて、メンズエステの施術のためバスタオルをくるくると巻いているセラピストゆか。

『正月に実家に帰ると、親せきが集まっている。
みんな、普通の人たちだ。
地元の銀行で働いているおばさんや、ファミレスでパートをしながら子供を育てている従妹。

なんで私だけ、こうなっちゃったんだろう?
どこで躓いた?

なんで誰も教えてくれなったんだろう?
そっちの道はダメだよって。

なんで誰も助けてくれなかったんだろう。

結婚して、子供をつくったら、またそっちの道に戻れるかな?

子供のころは、こんな仕事してるなんて、夢にも思わなかった。
20代半ばで結婚して、子供を育ててていると思っていた。

堅実だけど、まあ幸せかなって人生を送っていると勝手に思っていた。

もう、戻り方がわからない。
どういうか顔して、好きな人と結婚して、子供をつくって、普通の親の顔をして生きていけばいいのかわからない。』

ピンポーン!マンションのインターホンが鳴る。

ゆか
「(あっお客さん!)」

タタタと玄関に駆け寄るゆか。
「こんにちは~。
 外寒かったですよね。」

部屋まで案内するゆか。
「……今日はオプションはつけられますか?
 あっありがとうございます!」

お客さんとして、心愛にきたもう一人の相談者の男、シンジの姿が描かれている。

・・・・

●心愛の部屋。
テレビでインタビューが流れている。
『キャバ嬢を辞めて不動産会社で働く女性』
テレビ画面には、スーツを着た元キャバ嬢のキラキラした女性がインタビューを受けている様子が写っている。

心愛
「昼職に転職したうち、数年後何割が続いてるのやら…」

パラパラ

心愛、険しい顔で少女漫画を読む。
「どうシミュレーションしてもこのままじゃバッドエンド
 ……世の中そんなに甘くない…か」

心愛、メールを送る。
『ありがとうございます。
 率直に言うと、ゆかさんはもう普通に働くことは難しいです。
 20代で仕事のスキルをかためる時期に夜の仕事していたあなたは
 もう20代にお昼の仕事をしていた女性に追いつくことはできません。
 プライドも育ち今更下っ端として組織で働くことは難しいでしょう。』

心愛、悪い顔をする。
『そこで提案です。
 今通ってくれているお客さんから最後に大金稼いでスッパリ辞めましょう。
 具体的にアドバイスします。』

メール送信。

心愛
「真剣に相談者のことを考えたとき、
 こっちの方がまだ現実的…」

心愛
「さて…もう一人の相談者は……。
 普通のマッサージ店の店員さんが好きになった会社員だったっけ」

心愛、さっきとは違う少女漫画を読み始める。
「恋愛では出会い方が大切。
 同じ人でも、最初に出会った場所で全く印象が変わる…」

心愛、パソコンでメールをうつ。

心愛
『シンジさん、ご相談ありがとうございます。
 
 一応聞きますが、普通のマッサージ店ですよね?
 過剰なサービスがとかがない…。
 相談内容が事実と異なる場合は、結果も違うものになりますのでご了承ください。』

相談者シンジ、ココアの返信を見て焦る
「(う……。どうしよう…。
 、本当はメンズエステだけど…恥ずかしいし。
 別にそんなに変わらないし誤魔化してもいいよな…」

送信、ポチ
『はい、普通のマッサージ店です。』

心愛
『分かりました。
 そうであればそのまま通って仲良くなるのがいいと思います。
 紳士的な態度を心がけてください。
 詳しく出会った経緯や会話を教えてもらえますか?』

●恋愛カウンセラーココア先生のサイトの口コミ

ほとんど★5評価だが、一部★1評価がついている。
『レビュー★1
信頼できる先生かもしれませんが、相談をする際は全て事実を伝える必要があります。
私は内容をごまかしたばかりに、酷い目にあいました……』

#創作大賞2023

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